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悪役令嬢はパラ萌えされる  作者: ハルノ_haruno
1年生
75/160

アンジュとの夜

「お風呂にお湯ためますね。バスルーム入っていいですか?」

「お風呂……」


 下品なメイクも落としたいし、髪も洗いたい。

 何より掴まれた腕が汚れたような気がしてたまらない。


 けれどさっきの恐怖がまだ薄れなくて、狭い空間に一人でいるのは耐えられそうにない。


「アンジュ、まだここにいてくれる? ドア開けたまま入りたい。一人は不安で」


 アンジュはそれを聞くと何かを閃いたように言った。


「じゃあ! 一緒に入っちゃいましょうよ!」

「い、一緒に?」

「はい! 庶民棟は大浴場なので、いつもみんな一緒ですよ!」


 一緒に、お風呂。

 何か恥ずかしい気もするけど、女同士だし。


「うん。一緒に入る」

「あはは、素直なリシリア様可愛い! じゃあ用意してきますね」


 アンジュは勝手知ったる私の部屋を行ったり来たりしながら準備する。


「タオル借りまーす」

「着替えはこれでいいですかー?」

「あ、お湯の温度は熱め? ぬるめ?」


 私の世話をせっせとやくアンジュ。

 不思議な感じがします。


「アンジュも適当に着替え使ってね」

「あぁそっか。じゃあトレ着借りますね」


 アンジュは自分の分の着替えも用意する。


「準備出来ました! リシリア様、髪洗いましょうか?」

「ふふっ、それくらい自分で出来るわよ」

「前にトリートメントしてもらったじゃないですか、お礼に!」

「そこまで甘やかさなくて大丈夫よ」


 私はアンジュに微笑みかける。

 するとアンジュはほっとしたような笑みを見せた。







「あったかぁ~い」

「二人で入るとさすがに狭いわね」

「えぇ~いいじゃないですかぁ~」


 アンジュはふにゃりとした顔でバスタブに浸かっている。


 熱めのお湯は本当に心地良くて、自分の身体が結構冷えてたんだなと自覚させる。


「リシリア様のお肌、柔らかくて吸い付く~」

「ちょっと、こそばい」

「本当にきめ細かいですね。どうしたらそうなるんですか」

「極力日に当たらず、刺激を与えず、保湿をする」

「うわっ、お嬢様の過ごし方だ」


 まぁ否定はしません。


「庶民棟はどんな感じ?」

「わいわいしてて楽しいですよ。ごはんもお風呂もみんな一緒ですし」

「へぇ。そうなの」

「部屋は四人部屋で、話も尽きないです」

「どんな話を?」

「最近は学園祭のことが多かったですね。皆で歌詞の解釈とか話し合ったり。あとは……」


 アンジュはぶくぶくと口を湯に沈めた。


「アンジュ?」


 恥ずかしそうに私の目を見たアンジュは、くるりと背中を向けてしまった。


「私、庶民棟ではリシリア様の真似事をしているんです」

「私の?」

「可愛い髪型を教えてあげたり、勉強会を開いたり、身体のメンテナンスしてあげたり」


 そうだったのか。

 夏休み明けに庶民棟の子たちが一気に垢抜けたと思ったけど、そんなことが。


 アンジュが慕われているのも、そのあたりに理由があったのですね。


「嬉しいわ」

「ほ、ほんとうですか?」


 バシャッとお湯を跳ね上げながらアンジュがこっちを向いた。

 頬がピンクに染まっている。

 お団子にまとめた濡れ髪と、顔に張り付いた後れ毛が可愛い。


「嬉しくないって言うと思ってたの?」

「いえ。リシリア様は私の憧れなので、恐れ多いなって」

「そう? アンジュの方こそ私にないものをたくさん持っていて、羨ましいなって思うけど」

「ええええぇぇえ!?」


 アンジュの絶叫がバスルームに反響する。


「え? 何?」

「そそそそ、そんな、急に何を言い出すんですか!」

「アンジュこそ何よ。大きな声を出して」

「わ、私なんてっ。そんな、全然っ! あの! 出ます!」


 ざばっと立ち上がったアンジュは、身体中サーモンピンクに染まっていた。

 私もゆっくりと浴槽から上がり、しっとりとした肌にタオルを押し当てる。


「こら、アンジュ。そんなにこすってはいけません」

「あ、あわあわ、あぁ」


 あわあわ言う人、初めて見ました。


 私は柔らかいガーゼのナイトドレスに身を包む。

 アンジュはトレ着を身に着けて頭から湯気を出していた。


「アンジュ」

「は、はい!」

「アンジュの素直さや明るさは、全部私にはないものだわ」

「た、単純なだけですよぉ」


 アンジュは手を前に突き出してふるふると振った。


「アンジュのそういう真っ直ぐなところ、憧れるし可愛いと思う」

「そ、そんな。リシリア様、いつもみたいにスパルタでいいんですよ」

「本心よ」

「キャー!!」


 アンジュは奇声を発しながら上を向いた。


 私はチェストに座って髪を梳く。

 アンジュは予想外の行動をするので見ていて飽きません。


「私も何だかアンジュの素直がうつったみたいね」


 何気なくそう言うと、アンジュはへろへろとカウチに倒れ込んだ。


「可愛すぎますよ、リシリア様」

「可愛いのはアンジュでしょう」

「王子殿下も大変ですね」

「アルバート?」

「こんなに可愛い人を好きになるだなんて、気が気じゃないだろうなと思って」


 そうかしら。


「そんな感じはしないけど」


 むしろ気持ちを乱されているのはいつも私のような。

 今日の夜会でだってそうだ。


 カーテン裏でのキスを思い出すと途端に顔が熱くなる。


「私なら、早く皆に自分のものって公表したいです。心配過ぎて」

「公表……」


 婚約は保留にしてもらっている。

 けれどそれも良くないんだろうな。


「まぁ、貴族だとそうもいかないんでしょうけど」

「少し、考えていることはあるわ」

「何ですか!? 女子トークですかっ!? 聞きますよっ!」


 私の進路について。

 今日ひとつ、心の中で確かなものがあった。


「ごめんね。先にアルバートに伝えたいの」

「そりゃそうですね! それがいいです!」


 アンジュは力いっぱい頷いた。

 人のことなのに、真剣な顔をしちゃって。


「アンジュ、泊まっていかない?」

「いいんですか?」

「話が尽きないでしょう?」

「! そうですね! そうしましょう!」

「私もアンジュと相部屋がよかったなぁ」

「またそういうことをさりげなく言う~」

「?」


 アンジュと過ごす夜はとても楽しくて、でもやっぱり二人とも疲れていて、広いベッドに入るとどちらともなく眠ってしまった。

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