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悪役令嬢はパラ萌えされる  作者: ハルノ_haruno
1年生
69/160

夜会(ギュリオ)

「ん? 面白いことをやっているな」


 会場に戻ると、左奥のテーブルで腕相撲大会が始まっていた。


「行くか」

「いえ、私はここで」


 私はぺこっと頭を下げた。


「そうか。あぁ、言い忘れていたが」

「?」

「俺はちゃんとお前に惚れているぞ」

「っ!」

「思い付きだけで求婚したわけではない。好きだ」

「ひ、人に聞かれますよ」

「女にはこういう言葉をきちんと伝えろと誰かが言っていたからな。ではまた」


 ランカ先輩の大きな背中は腕相撲大会のテーブルに消えた。


 周りを見渡すと、さっきより人が増えたようだ。

 トランプをしたり、ただ語らったり、ダンスをしたり、皆それなりに居場所を見つけて楽しんでいる。


 私はゆっくりと会場を歩く。

 どこか落ち着けるところはないだろうか。


 ノアのことも、ランカ先輩のことも、正直頭がいっぱいいっぱいだ。

 誰かと何かをするよりも、静かに座っていたい。


 特に照明が落とされた空間まで歩く。

 この辺は他より幾分静かだった。

 

 背の高い半円形のソファーの裏側を覗くと、隅の方に男性が1人、静かに座っていた。

 ストライプのジャケットと、揃いのかぼちゃパンツが妙に似合う人だった。


「お隣、よろしいですか?」


 私は声を掛けた。

 男はぴくりと肩を動かすと、静かに首を縦に振った。

 そしてテーブルからグラスを取ると黄金色の液体を一口飲んだ。


 私がソファーに座ると、シスターのような衣装を着た女性がすっと飲み物を置いていく。

 これもお酒だろうか。

 聞く間もなく女性は背もたれの陰に消えた。


「ここは静かですね。向こうは少し賑やかで、落ち着かなくて」


 私から声を掛けて座った手前、少し話を振ってみた。


「俺は、ちょっと飲みすぎて、うるさいところ頭痛くて」


 カボチャパンツの男は頭を抱えた。

 天然パーマの髪が指の間でくしゃっとなる。


「飲みすぎですか?」

「室内音楽専攻の先輩に挨拶に行って、そこで飲まされて」


 天然パーマ、室内音楽専攻。

 嫌な予感が頭をよぎる。


「今日失恋して、ただでさえ落ち込んでるのに、最悪」


 酒焼けして少し声が違うので誰だかわかりませんでしたが、貴方ギュリオですね。


「あの、誰か人を呼びますね」


 医療班でも呼んでお任せしましょう。


「いや、ここにいて」

「でも、身体が辛いでしょう?」

「むしろ心の方かな。話、聞いてくれない?」


 気まずい。超気まずい。

 ですがここで席をたつことは出来ません。

 幸い私だと気づいていないようですし。


「わ、私でよければ」

「うん……」


 ギュリオは俯いたまま寂し気に笑った。







「好きだったんだ。好きだったんだよ~」


 ギュリオはそれから3杯おかわりして、同じことしか言わなくなった。


「きっともっと素敵な人が現れますよ」


 そもそも私の何がそんなにいいのやら。


「いや、もう現れない。彼女は僕の価値観も、人生も変えたんだよ。そんな女性他にいないよ」


 大袈裟な。


 ギュリオに言わせると、私がいたおかげで自分の音楽を皆に認められた。

 そして自分で自分がしてきた「音楽」に、初めて誇りを持つことが出来た。


 みたいなことらしい。

 何回も同じことを言うので少々辟易しています。


「たまたまタイミングが重なっただけで、遅かれ早かれ貴方の実力は認められたかと」

「そうかもしれないよ、でも結局このタイミングだった。それってもう運命だろ」

「言いたいことはわからなくもないですが」


 芸術家だからだろうか。

 そういう直感とかを大事にするのかもしれない。


「彼女は身分も高いし、何ならもっと高い、手の届かないところに行くから、絶対に叶わないってわかってたけどさ」

「……」

「だからって、あんなにカッコつけて別れることなかった」


 ギュリオ、そんなことを思っていたのですか。

 とても爽やかできれいに終わったと思っていたのですが。


「殿下の前で、キスのひとつやふたつでもしとくんだった」

「!? そ、それはどうかと」

「別にいいだろ、それくらい」

「だ、駄目でしょう」


 ギュリオはふらつく足で立ち上がると据わった目で私を見下ろす。


「だめ?」

「えぇっ!?」

「ねぇ。音楽家の俺が。好きな女の声を聴き分けられないとでも思ってた?」

「なっ」


 気付いてた!?


「好き、だったんだよ」


 ぼすっ。

 ギュリオは私の隣に倒れ込むと、そのままスース―と寝息を立ててしまった。


いつもお読みいただきありがとうございます★

たくさんのブクマ、嬉しいです!


夜会編続いております。

需要があるかわからないのですが、ここで「読者様大感謝企画」開催します!


→終了しました!(5/12)


また次回開催の際はよろしくお願いいたします★

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