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悪役令嬢はパラ萌えされる  作者: ハルノ_haruno
1年生
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夜会の準備

 一度アルバートと別れて私室に戻った私は湯を浴びていた。

 この後は3年生主催の仮面舞踏会。


 この「主催」の意味するところがすごくて、お支度から3年生が携わるのだという。

 私は16時に呼ばれているので急いで汗を流した。


「失礼いたします。1年のリシリアと申します」


 指定されていた控室の前で声を掛ける。

 確か中から大ホールへと繋がる構造だ。


「はぁい、開けまぁす」


 中から出てきたのは銀色のボブヘアーをした優しい印象の先輩だった。


「よろしくお願いいたします」

「こちらこそ。リシリア様を担当する、マルモと申します」


 おっとりとした語り口調に穏やかな笑顔。

 何だかとても落ち着きます。


 アンジュやセレナといたら得られない、絶対的な安心感とでも言いますか。


「じゃあまずドレスから選びましょうか」


 中に入ると衣装掛けにはずらっと派手な衣装が並んでいた。

 光り物がゴテゴテについたもの、真っ赤な原色のドレス、羽がついたヴォリューミーなもの。


「どれも華やかですね」


 その派手さに若干引き気味だが、「華やか」という言葉に留めておいた。


「夜会ですし、仮面舞踏会ですからね。会場も薄暗いので、これくらいでもちょうどいいのですよ」


 にっこり笑いながら手にとったドレスに、私は目が飛び出そうになった。


「あ、あの。それを、着るのですか?」

「えぇ。リシリア様はスタイルが良くていらっしゃるから」

「いえ、でも」

「それに透明感のあるお肌。見せないと、ね?」


 マルモ様。

 ね? ではありません。


「あまりに大胆と申しますか」


 色は黒とは言え、胸元が引き裂かれたようにざっくり開いています!

 そして太腿まで伸びる深いスリット!


 縫製ミスですか!?

 ちゃんと縫い合わせてくださいよ!


「リシリア様はとても真面目で淑女という言葉がしっくりくると思うのですが」

「は、はぁ」


 一応公爵令嬢やってますからね。


「その殻を破ってみたくはありませんこと?」

「いえ、特には」

「一夜限りの秘密の冒険ですもの。とびっきりセクシーに仕上げてみせますわ」


 ぐいっ。

 マルモ様は私の両肩に手を置いて、暗幕で仕切った狭い空間へと私を押し込む。


「ひっ」


 私は小さな悲鳴を上げることしか出来なかった。






「あの、これは一体何でしょうか」


 ざっくり開いた胸元に、何だかキラキラしたものを塗られていく。


「パールパウダーですわ。ドレスが地味ですからね」

「じ、地味でしょうか?」

「だって全身黒じゃない」


 でも肌の露出半端ないじゃない。


「これだけキラキラしていたら、目がいかないでしょうか」

「あらいいじゃない。お椀型のきれいなバストですもの。見せましょう」

「いやらしくはありませんか?」

「キレイよ? 柔らかくて吸い付きそうなお肌も素敵」


 さっき思った「安心感」は早急に取り下げます。

 マルモ先輩、大人しそうな顔してこわいですよ。


「真っ赤なルージュも引きましょうね」


 赤!

 血の沼から採取したような下品な赤!


「私はどこに向かっているのでしょう」


 思わず声に出てしまいます。


「そうね、夜の女王といったところかしら」

「夜の女王……」


 柄じゃないです。


「あ、そうだ。私、8つ離れた兄がいるのだけれど」

「はぁ」


 いやもう世間話を聞ける心の余裕は残されていないのですが。


「ここの寮長なんだけど」

「フランシス先生ですか!?」

「そう」


 あぁ、確かに見た目の雰囲気は似てますね。

 第一印象が物腰柔らかそうなところなんかは特に。


「存じませんでした」

「それはいいのだけれど。リシリア様、お気を付けになってね?」

「? なぜですか?」


 影は薄いけれど劇の案出しなんかにも参加してくれて、生徒思いの良い先生という印象だ。


「あの人、表面はいいんだけど裏が死ぬほど性格歪んでるから」

「えぇ!?」


 いや、でも少し説得力ありますね。

 このほんわかしたマルモ先輩が、露出度MAXのドレスを選ぶとは思いませんでしたから。

 二面性という意味では兄も妹も似ているのでしょうか。


「今日のリシリア様を見たら、何かするような気がして」

「まさか、先生ですし」

「兄は胸に黄色のバラを差しているから、近付いてきたら避けてね?」

「心得ておきます」


 念のため。


 というか、こういう際どい服装をやめにするという選択肢はなかったのでしょうか。


「はい、できた。とってもセクシーで素敵よ?」


 ルージュに合わせた真っ赤な仮面をつける。

 仮面の周りは黒曜石で縁取られいた。


 夜の女王。

 まさにそんな感じだった。


「ありがとうございます」


 あちこちがスース―して、真っ直ぐ立つのが恥ずかしいくらいだ。


「今夜のことは全て秘密。起こることは明日には全て忘れること、それが仮面舞踏会よ」

「恐ろしい夜会ですね」

「ふふ、大人への第一歩ってところかしら」

「大人ってこわい」

「さぁ、胸を張って」


 この服で胸を張るとか。

 私のバストを覆っているのはもはや「たすき」と言っても過言ではありません。


「大丈夫よ。ほら、いってらっしゃい」


 ほぼ布のない背中をつーっと撫でられ思わず背筋が伸びた。


「い、いってきます」


 私は仮面舞踏会が開かれる大ホールへのカーテンをくぐった。

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