ピッツェリア「前線のまかない」
「アンジュにお膳立てされるとはな」
「嬉しそうですね」
「あぁ。最近はリシリアともゆっくり話すこともなかったろう」
「忙しかったですからね」
私たちは景色の良いテラス席に座った。
落ち葉のカーペットが目に鮮やかで、乾いた葉の匂いが清々しい。
紅葉色のテーブルクロスが敷かれたテーブルには、どんぐりで出来たツリーのようなオブジェが飾られている。
これを将来騎士団になる人たちが作ったのかと思うと何だか可愛い。
「お待たせしました。牡蠣とマッシュルームのアヒージョ仕立てのピザ、こちらはサツマイモと蜂蜜のピザです」
ランカ先輩はピザがのった丸い大皿を両手に抱えて帰ってきた。
「わぁ! 美味しそうですね」
牡蠣とマッシュルームがオイルでつやつやに輝いています!
ガーリックの香りも食欲をそそりますね!
サツマイモの方も、とろっとした黄金が眩しいです。
「見事だな、いただこう」
「どうぞごゆっくり」
まずはアヒージョ仕立てのピザを一口。
とろりとしたチーズに塩味のある牡蠣のアヒージョの相性が抜群!
オリーブオイルも風味豊かで鼻に抜ける湯気まで美味しい。
「お、美味しい……」
「あぁ、うまいな」
アルバートはぺろりと親指を舐めた。
こんなカジュアルな食事さえもセクシーに食べるとは。
少しドキドキしてしまいます。
「サツマイモの方も、スイーツって感じで良いですね」
サツマイモと蜂蜜を合わせたピューレを塗った生地に、ごろごろとした角切りの蜜芋!
女子ですから、推し確定です。
「蜂蜜がついたぞ」
アルバートは細長い指で私の口元を拭った。
「うん、甘いな」
こ、この人は!!
私たちは炭酸水を飲みながら、ピザに舌鼓を打つ。
「年が明けたら私たちも専攻を決めないといけませんね」
「リシリアはそうだな。私は決まっている」
「そうなんですか? お聞きしても?」
「執政だ」
そうでした。
この人、次期国王陛下なんでした。
私はナイフとフォークを置き、両手を膝の上に重ねた。
「そういうことを聞くと、やはりアルバートは王子なのだと改めて気づかされますね」
「私は一度も自分が王子だと忘れたことはないぞ?」
「そうでないと困ります」
「だからリシリアへの誓いも、全て本気だ」
この流れでそういう事を言いますか。
「畏れ多いですわ」
私の方こそ割と本気で畏れ多いと思っている。
「この国の王子として言っている。一生リシリアと添い遂げたいと。それはどういう意味かわかるな?」
「えぇっと……はい」
それは私がこの国の王妃になるということだ。
私は制服のスカートをぎゅっと握る。
アルバートのことは好きだけど、それはそれ。
王妃になるだなんて、そんな覚悟は持ち合わせていない。
「なら良い。重いことだからな、返事はいずれ聞かせてもらおう」
「ご配慮感謝いたします」
「今は想いが通じたというだけで十分だ」
そう言うとアルバートは私の指に手を伸ばす。
テーブルクロスの下で二人の指が絡まり合う。
「少し風が出てきたな。寒くはないか?」
「平気です」
指先から伝わるアルバートの体温に呼応するように、私の体温は上がった。




