昼の部
「アンジュ、このあと暇?」
「何か昼食を買ったら夜まで一旦部屋に戻ろうかと」
「なら一緒にどう? ランカ先輩のピッツェリアに行ってみようと思って」
「あ! いいですね! 是非!」
アンジュは舞台用のメイクを落とし、真珠のような素肌になっていた。
十分すっぴんでも可愛いです。
「ランチの相談か? 私も同行したいな」
「王子殿下! 行きましょ! ピザですよ、ピザ!」
「リシリア、良いか?」
「えぇ」
私たちはさっと支度を済ますと良い匂いの立ち込める校舎へと向かった。
2年生は専門教科のクラスごとに分かれて飲食店をしていた。
「ブックカフェby図書館学」
「天文学科のお月見団子」
「水路建築科が送る、本気の流しそうめん」
「聖占術師の焼いたフォーチュンクッキー」
「さんかくおにぎり〜農民の意地」
どれも楽しくて美味しそうだ。
「ランカ先輩は何の専攻なんでしょう」
「上級騎士ですよ。リシリア様、ご存知なかったのですか?」
「全然」
というか、アンジュは何で知っているのでしょう。
部活の時にでも聞いたのでしょうか。
「ランカ? あぁ、父上が近衛騎士団だったな」
アルバートは思い出したように言った。
近衛騎士団は生え抜きの実力者揃い。
「お顔見知りですか?」
「あぁ、もう良い年齢だがいまだに現役だ。そうか、その子息か」
「いつぞやダンスレッスンで喧嘩を売ってらっしゃいましたね」
「そんなこともあったな」
アルバートは苦笑した。
「私、針のむしろでしたよ」
「あの時は今ほど余裕がなかったのだ。リシリアを取られると思ってな」
もう、仕方のない人ですね。
でも憎めません。
「今は違うんですかぁ?」
アンジュはにやにやしながら言った。
「あぁ、違うぞ」
「わっ! 殿下ったら言いますね! リシリア様、何かあったんですか?」
「秘密です」
「か、顔が赤い!」
「気のせいよ」
「えー! 聞かせてくださいよー!」
私たちはわいわいとピッツェリアに向かった。
「あぁ、来たな」
「ランカ先輩! 殿下も一緒ですよ!」
アンジュはぴょこぴょこ跳ねながらランカ先輩の元へ駆け寄った。
随分テンションが高いですが、今日は良しとしましょう。
「おわっ! 殿下だ!」
「王室御用達掲げようぜ」
「待て、おもてなしが先だ」
教室内はどやどやと色めき立つ。
「騒がしくてすまんな、テラス席もあるぞ」
「あ、私はお持ち帰りで! テラス席にはこちらの2名様を!」
アンジュはそう言うと、私とアルバートをぐいぐいとランカ先輩の前に押し出した。
「ア、アンジュ?」
「もとから昼食は買って帰るつもりでしたから! デート楽しんでくださいねぇ!」
「殿下、リシリア。ご案内します。どうぞ」
ギャルソンに身を包んだランカ先輩は恭しく頭を下げた。




