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悪役令嬢はパラ萌えされる  作者: ハルノ_haruno
1年生
58/160

想いの果て

 私はゆっくりと唇を離す。

 熱い息が重なり合う。


 恥ずかしさと愛おしさがドロドロに溶けて、思考がまるで追いつかない。


「あの、アルバート。私は」


 何と言えばいいのだろう。

 頭の中がぐずぐずだ。


「リシリア、すまない」


 アルバートはそう言うと、すっと後ろに下がり私に背向けた。


「え?」


 予想外の反応に不安が押し寄せる。

 どうして謝るの? なぜ離れるの? 拒絶するような背中の意味は?


「悪いが少しこのままで」

「あっあの! 気を害したのなら謝ります。ですが私は、いい加減な気持ちでこのようなことをしたわけではございません!」


 その背中に必死に訴える。

 声はみるみる涙声へと変わる。


「わかっている。だからだ」


 だから何?

 怖い。涙が溢れる。


 私の精一杯の想いをアルバートはどうしたいのか。


「お願い。こっちを向いて」


 祈るように言った。


 それに応えるように振り返ったアルバートは、ひどく切なげな顔をしていた。


「リシリアからの気持ちを受け取った今、どうすればお前を壊さずに愛せるのか、思いつかないのだ」

「え……?」

「大切にしたいのに、嬉しすぎて」

「っ!!」


 アルバートはその腕を広げると、苦しい程に私を強く抱きしめた。


「すまない、優しく出来そうもない」

「あの、苦しい――んぅっ!」


 アルバートは私の唇を強引に塞ぐ。

 これまでの渇きを潤すように、ひどく激しく求めた。


「好きだリシリア。愛している」


 息も出来ない程の強い力に思わず足の力が抜ける。


「私で、いいの?」


 やっとの思いで口にする。


「リシリアが私の側にいたいと願う限り、一生お前だけだと誓おう」

「でも、私は素直じゃないし、可愛げもなくて――」

「それがリシリアだ。私が愛した女だ」


 一切の濁りのない、強い目だった。








「で、明日は正真正銘のデートなわけだが」

「はい」


 私が招き入れてしまったとは言え、この人はいつまでこの部屋にいるつもりでしょう。

 冷静さを取り戻した今となっては色々と頭が痛いです。


「何か希望はあるか?」

「えぇっと。さっきクラスメイトに熱だと言ってしまいましたので」

「あぁ、そうだったな」

「人目につくようなことは出来ないかと」


 アルバートのあからさまにがっかりした顔。

 申し訳ありませんね。


「どこへ行ったとしても学園内ではないか」

「えぇ。ですからどこへも行けませんね」

「駄目だ」

「またの機会に」


 私は水差しの水をグラスに注ぐ。

 それをアルバートの座るローソファーへと運ぶ。


「リシリアはそれで良いのか。想いが通じ合って初めてのデートだぞ」

「日曜日は来週もやってきますよ」

「うーむ」


 というか、もう少し時間を置かないとまともにデートなんて出来そうもない。


 アルバートは私からグラスを受け取ると一気に水を飲み干した。


「そろそろ出られますか? 廊下に人がいないか確認してまいります」

「名案だリシリア」

「何がでしょう」

「ここで過ごせばいい」

「は?」

「今夜はここにいて、明日はそのまま部屋でデートを楽しむ」

「貴方正気ですか」

「正気も正気だ。姫のキスで魔法は解けたはずだからな」


 いや、誰がどう見てもご乱心ですよ。

 私は思わずため息をつく。


「私は姫ではなかったようです」

「何を言う。私の最愛の人」


 空のグラスを受け取ろうとする私の手を握り、そのまま手の甲に口付けた。 


「雰囲気で流そうとしても駄目です。王子殿下自らが学園の風紀を乱すようなことをしてはなりません」

「正論を言う」

「当たり前です。だてに公爵令嬢やってませんよ」


 王族に仕える身とはいえ、王族が道を外しそうになった時は身を挺して進言をする。

 それが臣下としての役目だ。


「わかった。今日のところは引こう」

「ご理解いただけて何よりです」

「じきに消灯の時間だ。闇に紛れて帰る」

「はい」


 ほっと胸を撫でおろす。


「それまでもう少し、リシリアを愛でても?」

「!?」


 アルバートは私の腰を攫うように抱き寄せると膝の上に乗せた。


「な、何を!」

「静かにしろ。廊下に響くぞ?」

「あぁ、もう……。本当に少しだけですからね?」

「素直で何よりだ」


 アルバートは嬉しそうに笑うと頬に軽くキスをした。


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