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悪役令嬢はパラ萌えされる  作者: ハルノ_haruno
1年生
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役者班

 視聴覚室へ向かっている途中、一階の渡り廊下でランカ先輩に呼び止められた。


 夏を過ぎて、すっかり日焼けしたランカ先輩。

 男らしさが増しています。


「リシリア、少しいいか」

「ごきげんよう、ランカ先輩」

「放課後なのだが、しばらく学園祭準備で手が離せない。部活は当面無しだとアンジュに伝えてくれ」


 こちらもこちらで忙しい。その方がありがたい。


「承知いたしました。2年生は何を?」

「2年は飲食店と決まっていてな。今年はピッツェリアをする」

「まぁ、ピザですか」

「あぁ。今は石窯作りに忙しくてな」

「石窯……」


 ひどく本格的ですね。

 お顔が少し汚れているのは屋外での作業のせいですか。


「では頼んだ。戻る」

「はい、先輩も頑張ってください」

「あぁ。当日は是非食べに来てくれて」

「もちろんですわ」


 ランカ先輩を見送ったところで終業の鐘が響いた。

 秋の澄んだ空気が心地良い音に震える。


 私は視聴覚室へと急いだ。









 視聴覚室のドアを開けるとちょうど稽古の最中だった。


 アルバートがアンジュの手を取り見つめ合うシーン。

 チクリと胸が痛む。


 二人の歌が混ざり合う。

 柔らかで悲しげな声が切ないハーモニーを醸し出していた。


「来るのが遅くなりました。もう暗譜が済んでいるのですね、歌も素敵でした」


 歌が終わったところで私は声を掛けた。


「リシリア。心配せずとも役者班は順調だ」

「そのようですね、アルバート」

「毎日来る必要はない」

「そうですか」


 私はいらないと言われているみたいで何だか寂しい。


「リシリア様! 私たちもう上がりなんです!」


 クラスメイトの一人がそう言った。


「?! あ、そうそう! そうなんです」

「!! お、お疲れ様です!」


 何だか皆、挙動不審ですが。


「お疲れ様。明日は新譜が1つ上がるから、またお持ちしますね」


 あれ?

 でも役者班は毎日自主練してるってアンジュが……。


「リシリア様、それでは!」

「そう言えば殿下、台詞の解釈で悩まれてるところありましたよね?」

「監督! じゃなかった。リシリア様! 殿下を頼みまーす!」

「ほら。アンも行くわよ!」

「え? え? どうして?」

「それはあとで!!」


 クラスメートは蜘蛛の子を散らすようにバタバタと出ていった。

 広い視聴覚室には私とアルバートが取り残された。


「あいつら……」


 アルバートは舞台の端に腰掛けた。


「ええっと、台詞の解釈でしたっけ。相談に乗りましょうか?」


 視聴覚教室は階段教室になっている。

 私は階段を下りてアルバートのそばに行く。


「たいしたことではない。やつらのただの口実だ」

「口実……何のです」

「私たちを2人きりにするためだろう」


 ん?


「なぜそのようなことを」

「心当たりがないとでも?」


 アルバートは私の腕を掴んだ。


「ありません。そんなことよりアルバート」

「そんなこととは何だ」

「貴方、私のことを、何かクラスメートに吹き込みませんでした?」

「何のことだ」

「よくわかりませんが、殿下の言う通りの方だとか、殿下の仰っていた通りだとか、そんな言葉を耳にしましたので」

「ならば褒め言葉と受け取っておけ」

「それからセレナにも。殿下にお礼をせよと言われました。何をしたのですか」

「セレナ嬢め」


 アルバートは苦笑した。


「私は少しばかり、皆の士気を煽っただけだ」

「アルバートが? てっきり学園祭などつまらないと思っているのかと」

「そうだな。そう思っていたが、やる気が出た」


 アルバートの口元がにやりと動いた。


「相手役がアンジュですものね。やる気も出るというものです」


 あぁ、皮肉を言ってしまいました。


「なぜアンジュが出てくる」

「先程のおふたり、とてもお似合いでした。まるで本当の恋人同士のようで」


 手を取り合って見つめ合う2人の姿がチリチリと焼き付きている。


「リシリアは何でも出来る割に、自分のことには鈍感なのだな」

「はい?」


 喧嘩売られてます?


「リシリアに成功をプレゼントしたい。そのために私は努力する」

「私?!」


 アルバートはむっとして、握っていた私の腕をぐっと引き寄せた。


「間抜けな顔をして。お前以外に誰がいる」

「いえ、だって」

「お前はとことん私の気持ちを信じないな」

「そ、それは。その。はい」

「肯定するな」

「すみません」


 私たちは無言のまま見つめ合った。


「どうだ、私たちも恋人同士のようではないか?」

「いえ、全く」

「そこは肯定していいところだ」

「全否定でお願いします」


 アルバートはがっくり肩を落とした。


「リシリアは夜しか素直になれないのか」

「っ! 誤解を招くような言い方やめてください」

「どこが誤解だ」

「せ、台詞の! 台詞の解釈の話をしましょう!」

「ふぅん?」


 アルバートは立ち上がると私の手を口元に持っていき、柔らかな唇を押し当てた。


「好きだ」


 は?!

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