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悪役令嬢はパラ萌えされる  作者: ハルノ_haruno
1年生
52/160

士気

「あの、リシリア様。少しよろしいでしょうか」

「ええっと。ラッタさんとナナさんでしたね。どうされました?」

「お、覚えてくださってたのですか!? 光栄です」


 役割分担が決まった日に全員の顔と名前を必死で覚えましたよ。

 普段交流のない庶民の子息、令嬢を覚えるのには苦労しましたが。


「あの、実は私とナナは、小さい頃から同じピアノの先生に師事していて」

「まぁ、ピアノを?」

「はい。リシリア様やギュリオ様には遠く及びませんが、演奏でお役に立てればと」


 ラッタとナナは消え入りそうな声で言った。


「嬉しいわ! ラッタは衣装班で、ナナはメイク担当でしたよね」

「は、はい! 係まで覚えてくださってたなんて。本当に殿下の言う通りの方なのですね」


 ん? 殿下?


「当日は着付けやメイク直しもありますね。それに支障が出ない形で導線を組みましょう。ギュリオ、どうですか?」

「ちょうどピアノの譜面、書いてた。これどう? 弾ける?」


 ギュリオは書いたばかりの譜面をラッタとナナに見せる。

 ラッタとナナは、目を楽譜に走らせ、指をとんとんと動かした。


「はい、1週間もあれば必ず仕上げます」

「二人は連弾とかは?」

「やったことあります」

「わかった。じゃあここに音を足す。明日完成したものを渡すから、練習は明日から」

「はい」


 ギュリオはそう言うと、羽ペンを手に音符を書き足して行く。

 二人は手を合わせてきゃあきゃあ喜んだ。


「3日で仕上げられますか? 歌の練習にもついて欲しいのですが」

「は、はい! リシリア様のために頑張ります!」







「セレナ様、この小道具なのですが、監督にチェックをお願いした方がいいでしょうか」

「そうね。衣装との兼ね合いもあるし。あ、来たわよ」


 私が小道具班を覗きに行くと、その視線が一気に集まった。


「ごきげんよう。進捗はいかがですか」

「リシリア様、小道具の花束なのですが、色味はどうしましょう」


 花屋の娘のフローラが図案を持って駆け寄ってくる。


「ええっと、これは夕日のシーンで使うものですよね」

「あ! そうです! 私ったら、説明もなくすみません」

「いいえ、大丈夫よ。夕日のシーンだから、赤やオレンジは避けた方がいいわね。ここの衣装は白だからそれも避けて」

「リシリア様、全てのシーンの照明や衣装を把握してらっしゃるのですか?」

「? そうですけど」

「す、すごい……。殿下の仰っていたのはこういう……」


 んん?

 さっきから「殿下」というワードが登場しますが何なのでしょうね。


「紫なんかどうかしら。場面的に重い雰囲気だし、合うのでは」

「紫ですね、それをメインにアレンジメントの試作品を作ってみます! 完成したら見ていただけますか?」

「えぇ、もちろん。楽しみにしています」

「はいっ! リシリア様にご満足いただけるものを作りますね!」

「あ、ありがとう」


 どの班に行っても熱量がすごい。

 みんなそんなに学園祭を楽しみにしていたんだなぁ。


「リシリア、お疲れさま」

「セレナ、順調そうね」

「それはもう。貴女、殿下にお礼をした方がよくってよ?」

「アルバートに? どうして?」

「それは自分で聞くことね、監督?」


 監督?


「そう言えばフローラがそんなことを言ってたわね。監督って誰なの?」

「あら、自覚がないの。貴女みんなに監督って呼ばれてるわよ」


 !?


「どういうこと!?」

「ちなみにギュリオは曲を書くから『大先生』らしいわよ」


 ちょっと!

 影で変な呼び名つけないでくださいよ!


「訂正、出来ない?」


 恐る恐る聞いてみる。


「もう遅いわよ。それで士気も高まってるんだし」

「そう……」


 ですよね。

 何かどっと疲れた気が。


「あと10分もないけど今日はもう終わり? 部屋にお茶でも用意させるわよ」

「いえ、役者班を見に行くわ。アンジュから聞いたんだけど、毎日居残り練習してるみたいで」

「そう。あまり無理しないでね」

「驚いた。セレナから労いの言葉をもらうなんて」

「ふふ、私も感化されたかしら」

「誰に?」

「面白いから内緒よ」


 セレナはふわふわの髪を揺らすとフローラの元に戻った。



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