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悪役令嬢はパラ萌えされる  作者: ハルノ_haruno
1年生
51/160

side アルバート

アルバート視点です。あの時彼はこんなことを考えていたようです。

 学園祭などつまらん。

 それも毎年同じ脚本を演じるなど、何の意味があるのだろうか。


 こんなことをしている時間があるのならリシリアと話したい。

 この前の庭園で少し変化があった。

 あのリシリアが口付けを拒まなかったのだ。


 これは「夢」だからと逃げ道を用意してやったが、リシリアに私を想う気持ちがあると確かにわかった。

 進歩だ。


「リシリアさんを推薦します」 


 リシリアの名前が聞こえて我に返る。

 どうやら学園祭の実行委員に選ばれたようだ。


 全く、また不要な仕事を引き受けて。






「殿下。いかがですか?」


 リシリアは私の目を見て王子役の打診をした。


「私が? なぜ」


 本物の王子が王子役をするなど滑稽以外にない。


「本物の王子がいる前で、王子役を演じろというのは酷な面もありますので」


 本物の王子に王子を演じろという方が酷だと思うが。

 だがここで断れば実行委員のリシリアが困る。


 だだでさえ生真面目なリシリアに負担をかけるわけにはいかない。

 私も男だ。


「皆が良いなら構わぬが」


 本当は嫌だがリシリアのためならばやろう。

 そして満場一致で私は王子役を拝命した。


「次にお相手役ですが」


 リシリアの声は毅然としていて耳障りがいい。

 その声には自信が滲み、同時に責任感を負っていて、誰でも頼もしく感じるだろう。


 クラスの皆だってそうだ。

 ついさっき決まったばかりの実行委員に、学園祭の全てを委ねている。


 そんなカリスマ的な魅力がリシリアにはある。

 王妃となるのに申し分ない程に。


 そして私はそんなリシリアに敬意を持っているし、二人きりの時に見せる余裕のない可愛い表情も愛おしいと思う。


「全員分のくじを作って、殿下に引いてもらうのはどうでしょう」


 リシリアの顔をじっと見つめていると、何やら相手役の決め方にひと悶着あったらしい。


 相手役か。

 悲恋の相手役。ならばリシリアには似合わない。


 例え芝居だとしても、リシリアと悲恋を演じるなど絶対にごめんだ。


「では殿下。前に来て引いていただけますか」

「あぁわかった」


 絶対にリシリアだけは引くまい。


 壺に手を入れると、何枚もの金属の感触があった。

 冷たく硬い感触に、柄にもなく緊張する。

 神がいるならば、どうかリシリアを引かせないでくれ。


「相手役は、アンジュだ」


 安堵とはこういう感情を言うのだろう。

 手の平の汗がそれを物語っていた。






 リシリアの「解散」の言葉に、皆ばらばらと席を立つ。

 私は生徒の間を先に抜けると、彼らが必ず通るサロンで待った。


「少し時間をくれ」


 通り過ぎようとする生徒を一人ずつ止める。


 リシリア、アンジュ、ギュリオ以外がそこに揃った。


「皆、時間を割いてもらってすまない」


 私は初めに皆に頭を下げた。

 慌てる生徒、驚く生徒、跪く生徒、色々だった。


「呼び止めたのは他でもない。私はこの学園祭を成功させたいと思っている」


 おそらく学園祭を「くだらない」と思った者は私だけではないだろう。

 だがリシリアが実行委員に立った以上、失敗させるわけにはいかない。


「リシリアだが、あれは誤解されやすいがいつも一生懸命だ。どうか力になって欲しい」


 生徒の間でどよめきが起こる。

 でもそんなこと気にしていられない。

 気にするなら初めからこんなことなどしていない。


「リシリアは生真面目で突っ走るタイプだ。だがその自覚がない」


 自分の体調などお構いなしに、アンジュに個人レッスンをつけるところ。

 アンジュが庶民棟でいじめを受けているのを目の当たりにして飛び出そうとしたところ。

 母上の無茶な夏期講習にも、くたくたになって取り組んでいたところ。


 自分の立場や体など二の次で、いつも何かのために必死になっている。

 そんなリシリアが心配でもあり、たまらなく愛おしくもある。

 

「一人で背負いこむ癖があるが、どうか皆で支えてやって欲しい」


「もちろんです、アルバート王子殿下」


 膝をついてそう言ったのは、リシリアの幼馴染カンサム公だった。 


「よろしく頼む」


「殿下? 頼まれなくても当然でございましょう? 私たちはクラスメイトなのですから」


 そう言ったのは、よくリシリアの斜め後ろにいるセレナ嬢だった。

 美しい微笑みを浮かべながら淑女の礼をする。


「そうだな。すまない」

「王子殿下が臣下に簡単に謝ってはなりませんわ」

「あぁ承知した」


 セレナ嬢は食えないやつだ。

 微笑みを崩さず私の側に来たかと思うと、扇で口元を隠しながら小さな声で言った。


「リシリアのこととなると、余裕がありませんのね」

「なっ!」

「ふふ、よろしくてよ。楽しいのは私の好むところですわ」


 恐ろしい女だ。

 私とリシリアを面白がって見ているなど、セレナ嬢くらいではなかろうか。


「ではこれで本当に解散だ。時間をとらせた、感謝する」







 本当はリシリアの顔が見たいが、行けば迷惑になるだろう。

 私が出来ることは、早々に台詞を覚えることくらいか。


 リシリアが思わず見惚れてしまうくらいの王子を演じて見せようじゃないか。

 そう胸に誓い、部屋へと戻った。



GW中はまったり更新になります。すみません!

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