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悪役令嬢はパラ萌えされる  作者: ハルノ_haruno
1年生
46/160

変化

 夏休みが明けた。

 廊下を歩く庶民棟の女子たちは、何だか皆垢抜けた感じがする。


 私が教室に入るとアンジュがにこりと笑った。

 私も微笑みを返す。


 ゆるいお団子ヘアに黄色のバンダナをアレンジしたアンジュは大勢の友人に囲まれていた。

 あれこれ話し掛けられ、とてもこちらに来る余裕はなさそうだった。


 私は「そのままで」と目配せをして席につく。


「おはようリシリア」

「ノア、おはよう。夏期講座はどうだった?」

「いやぁ、紅茶の世界は奥深かったよ。ハマっちゃって、本を20冊取り寄せた」


 おぉ、それはどっぷりですね。

 紅茶にも学ぶことがたくさんあるのでしょう。


「リシリアは? どうだった?」

「大変だったけど、すごく勉強になったわ」

「そっか! 何か知性が顔に滲み出てるもんね」


 そうでしょうか。

 あまり自覚はありませんが、学力パラ重視のノアには何か感じるところがあるのかもしれませんね。


 言われてみれば、アンジュは随分スポーティーで活発な印象になりました。

 体力パラ強化の影響でしょうか。


「おはようございます。殿下」


 ノアがアルバートに気付き挨拶をする。


「アルバート、おはようございます」

「あぁ、おはよう」


 アルバートも何だかいつもより凛々しいような気がします。

 恋の色眼鏡かもしれませんが。


「アンジュは来ているか?」


 アンジュ?


「えぇ、あそこに」


 私は輪の中心に視線をやる。


「あぁ、いるな。アンジュ!」

「は?! はい!」


 ん?

 アンジュ?


 いつから呼び捨てに?


「先日約束したものだ。受け取れ!」


 アルバートは赤い包みをアンジュに向かって投げた。

 それは弧を描いてアンジュの手の中にすっぽり収まった。


 同時に「キャー!」という黄色い歓声が女子たちから上がる。


「殿下、ありがとうございまーす!」


 アンジュは嬉しそうに手を振った。







「何をあげたのですか?」

「気になるか?」


 アルバートは私の隣に座った。


「いえ、別に」


 何だろう、もやもやする。

 というか、どうしてそんなに距離が縮まってるのですか。


「乗馬用の手袋だ。ボロボロのものを使っていたからな」

「て、手袋を投げつけたのですか?!」


 手袋を投げつけるということは、すなわち決闘の申し込みを意味する。


「だから包みで見えぬようにしておいた」

「えぇっ。そういう問題ですか?」

「リシリアを賭けて闘っても良いがな」

「っ!」


 アルバートはいたずらっ子のように笑った。


「そういえば母上から手紙が来ていたぞ」

「ザラ様から?」

「リシリアのことも書いてあったが、聞きたいか?」


 うーん、聞きたいような聞きたくないような。


「遠慮しておきます」

「何としても妃に迎えるようにとのご命令だ」

「聞かなかったことに」

「命令などなくてもそうするがな」


 うぅ、アルバートの笑顔が眩しい。王子スマイルは反則ですよ。


 アンジュとの仲はきっと杞憂。

 そう言い聞かせながらほっとする自分がいる。


 私はアルバートとどうなりたいんだろう。

 頑張ってみてもいいんだろうか。

 自分の恋を叶えることを望んでいいんだろうか。


「リシリア、先生が来たよ」


 ノアの声にはっと我に返る。

 私は教科書を開いた。

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