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悪役令嬢はパラ萌えされる  作者: ハルノ_haruno
1年生
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講師の正体

 私は夏期講習のため、貴族棟内にある貴賓室を訪れていた。


「失礼いたします。リシリアです」

「あら、いらっしゃい」

「!?」


 カウチに浅く腰掛けた女性はティーカップを片手ににっこり笑った。


「講師のザラよ。よろしくね」

「国王妃殿下!?」


 そこに鎮座していたのはアルバートのご生母であり、現国王妃殿下。

 ザラ様だった。


 私は慌てて深く頭を下げる。


「やだ、そんなに畏まらないで? そうだ、リアちゃんと呼んでもいいかしら?」

「は、はい」


 断れるはずもない。

 私は頭を下げたまま答えた。


「リアちゃん頭を上げて? さぁこちらへ掛けて」

「失礼いたします」


 私は言われるままザラ様の向かいに座った。


 まさか講師がザラ様だったなんて。


 そりゃ秘匿にされるのも納得です。

 警備上の問題や家の権力争いなど、色々ありますからね。


 というか、本当に外交のスペシャリストじゃないですか。 


「貴女の優秀さは学園長から聞いています」

「とんでもございません」

「語学にも通じていて、近隣諸国の言葉は全て話せるとか」

「日常会話程度でございます。ザラ様には遠く及びません」


 ザラ様は「国王陛下の頭脳」と評される程の知識の持ち主。

 特に外交をする際は、相手の国の言葉を流暢に使いこなすことでも知られている。


「あら、そうなの? 謙遜ならいいのよ?」

「謙遜ではございません。独学で日常会話を習得しただけですので」

「それは困ったわねぇ」


 ザラ様は数秒考えるような仕草をして、またこちらを見た。


「では授業は全て、その国の言葉で行いましょう」


 え?

 なんでそうなる?


「ザラ様。私は海外情勢を学ぶ上での専門的な用語などはちっとも――」

「では学べばよい」


 ザラ様はにっこり笑って扇子をパチンと鳴らした。


 私の背中に冷汗が流れる。

 日常会話が出来ることと、政治や経済をその国の言葉で語ることは全くの別物。

 それをせよと?


「言葉にはその国特有の意味や背景があります。現地の言葉で学ぶことはとても有意義なことよ」


 有無を言わさぬ威厳のある笑顔。

 もとい、ものすごい圧。


 公爵令嬢が王妃様に逆らえるはずもありません。


「ご指導よろしくお願いいたします」

「えぇ、こちらこそ」


 こうして私は一日六時間、王妃様とのプライベートレッスンをすることになった。








 王妃様の仰ることを理解するにはかなりの予習が必要だった。

 専門用語の暗記が一番時間がかかったが、公式な場で使う固い文法に慣れるのにも苦労した。


 一週間程してようやくストレスなく講義が聞けるようになった。

 と思ったら、次の週からはまた別の国の講義に移るため、また初めから語学の勉強をし直す。


 私はくたくたの頭で部屋に戻り、そこからまた予習と復習をする。


 夜遅くにようやくベッドに転がり、夜ごと自分の選択ミスを恨むのだった。


「思い出した。夏期講習って異常な程パラメーターが伸びる代わりに、スタミナごりごりに削られるやつだ」


 今さら気付いてももう遅いんだけど。


 そのうち知恵熱でも出るんじゃないかと思いながら、その日も眠りについた。







 夏休みも終わりに差し掛かった頃、ザラ様が感心したように言った。


「リアちゃんって本当に勤勉ねぇ」

「お褒めに預かり光栄です」


 公爵令嬢として、王妃様の前で失態を晒すわけにはいきません。

 日々必死の思いでやってますよ!


「ご褒美に午後はアフタヌーンティーを楽しむのはどうかしら。お勉強はお休み」

「よ、よいのですか?」


 嬉しい。

 嬉しすぎます。


 政治経済と語学の情報の渦から脱出出来るのですか。


「えぇ。午前の講義はこれで終わりにして、お着替えをしましょうね」


 ザラ様のその一声で、控えていたメイドたちが私を取り囲む。


「着替え、ですか」

「その者たちに任せておけば良い。ではまたあとで」


 ザラ様は美しい笑みを浮かべながら退出した。


「リシリア様、どうぞこちらへ」

「あ、あの。制服や手持ちのドレスではいけないのですか」

「ザラ様より礼装をと承っております」


 な、なぜ。


 私は用意されていたペールオレンジのロングドレスに身を包む。

 髪は正装用のきちんとしたアップにされ、高そうなティアラを被せられる。

 サッシュまで肩にかけられ、これは一体何事なのだろうかと血の気が引いてくる。


「アフタヌーンティーなのですよね?」

「さようでございます」

「ザラ様以外にも誰か?」

「はい。そろそろお着きになる頃かと」

「ど、どなたが?」

「私たちの口からは恐れ多くて申せません」


 王妃付きの侍女が口に出せないって何事ですか。

 私こそ場違いですよね、もう帰りたいです。


「ご準備が整いました。ご案内いたします」


 行きたくない。

 すっごく行きたくない。


 けれど慣れとは恐ろしいもので、私は公爵令嬢らしく姿勢を正して優雅に歩く。

 心の中は修羅場ですが、顔面は余裕のある微笑みに満ちています。

 悲しい性ですね。


「あらリアちゃん。とっても素敵だわ」

「お待たせいたしました」

「こちら、隣国ゾルフールの王妃、ソフィア様」


 眩暈がしそうです。

 隣国の王妃ってどういうことですか。


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