夏期講座はどれにする?
それから一学期は大きな問題もなく過ごせた。
もうすぐ期末考査だが、まぁ心配することはないだろう。
少し驚いたのが、アンジュとノアが社交のパートナーになったことくらいか。
「ノア君と私、案外似たもの同士だと思って!」
「どのへんが?」
「リシリア様の幸せを願っているあたりですかね!」
そうあっけらかんと言うものだから面食らってしまった。
「アンジュさん! それは秘密にしてよ〜」
「どうしてですか。良いことはどんどん言ったらいいんですよ」
「そうだけどさ、何ていうか、恥ずかしいよ」
照れているノアを見て、アンジュはくすくす笑った。
「リシリア様、困ったことや悩み事があれば何でも言ってくださいね!」
「心強いわね、ありがとう」
「はい!」
「当面の心配事は、アンジュの期末考査かしら」
「も〜!! ちゃんと頑張ってますよ〜!!」
二人との関係も良好だった。
期末考査が終わればいよいよ夏休みが待っている。
と言っても家に帰れるわけではない。
でも夏季休暇の1ヶ月間、夏期講座が色々あって、興味のあるものを選べることになっていた。
「アンジュは何をするの?」
「乗馬です!」
「う、馬?!」
アンジュの積極性には最近驚かされてばかりだ。
「馬に乗れると行動範囲が広がりますからね」
「馬車ではだめなの?」
「遅いじゃないですか」
まぁ、確かに。
「それに家に馬はいますが、馬車までありません」
「そう」
アンジュは庶民出身ですからね。
馬車を所有していなくても仕方ありません。
「リシリア様は何をするのですか?」
「うーん、決めかねてるのよね」
せっかくだから趣味に振り切って「宝石の目利き」なんて講座も面白そう。
大粒の宝石を沢山見られる機会なんて、そうないですからね。
実用面なら「ハイレベル外国情勢」か。
講師は秘匿されているけれど、国の中でも外交に通じたかなりの大物が招聘されているらしい。
万一の国外追放に備えて、知識を貯めておくのも捨てがたい。
もちろん率直に興味もある。
「ノアは何にするの?」
「僕は紅茶」
まったり系のお遊び講座ですね。
それも休みらしくていいかもしれません。
「あ、アルバート王子殿下!」
「皆で集まって何をしている?」
「夏期講座の話です」
アンジュは臆することなくアルバートに声を掛ける。
「アンジュ殿は何を?」
「私は乗馬です」
「はは! 貴女らしいな!」
「リシリアは何を?」
「まだ悩んでいるところです」
うーん、そろそろ決めないといけないのですが。
「アルバートは何を?」
「夏期講座は受けない。私は執務だ」
「執務? 城に戻られるのですか?」
「いや。ここで出来る決裁やら、国内情勢のチェックやら、改善案の指示やら、毎日書類とにらめっこだ」
「大変ですね」
「それが王族の仕事だ」
アルバートはさも当然という顔で言った。
そんな風に言われると、何だか対抗心が芽生えてくる。
やっぱり「ハイレベル外国情勢」にしようかな。
夏期講座初日、私はそれが全ての間違いだったと知る。




