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悪役令嬢はパラ萌えされる  作者: ハルノ_haruno
1年生
4/160

アルバート王子との対面

 アルバート王子。「プリズムティアラの約束」のメイン攻略キャラ。

 あぁ、やっぱりとてもかっこいいです。


「なぜ断った」

「殿下にはもっと相応しい女性がいらっしゃいますわ」

「心当たりはないが」


 そりゃそうでしょう。ヒロインとはこの学園で初めて出会うのですから。


「きっと愛し合える素敵な女性が見つかりますわ」

「愛か。リシリアには好い人が?」

「そんなものおりませんわ」


 この6年間やることは山程あった。恋などにうつつを抜かしている場合ではなかった。


 アルバート王子は口元に手を当て軽く咳払いをすると、また真っ直ぐに私を見つめた。


「少なくとも私はリシリアを気に入っている」


 は?


「殿下、今何と?」

「リシリアに会えるのを楽しみにしていた。ひと月に一度、文を交換していただろう」

「え、えぇ」


 確かに義務として書かされておりました。

 しかし転生してからは色っぽいことや可愛げのあることは一切書かず、小難しい歴史書の感想やら、我が国ではあまり知られていない植物の効能やら、外国語で書かれた物語の要約やら、女性らしからぬ内容で塩対応していたはずですが。


「リシリアからの手紙はいつも知性に満ち、新しい発見があった。こうして語らう時を楽しみにしていた」


 まさかの逆効果ー!


「お、お手紙でしたら他にもたくさん届くのでは?」


 婚約者候補は私だけではない。数々のご令嬢がアルバート王子と文を交わしてきたはず。


「どれも似たような内容でとても読む気になれない」

「さ、さようですか」

「『桜が美しい季節になりました、一緒に眺めたいです』なんて手紙より『桜の樹の下には死体が埋まっている』と書いて寄越す方がよっぽど興味をそそられるだろう?」


 いや、引くよ。

 公爵令嬢からの手紙に「死体」なんてショッキングな単語書かれてたら普通引きますよ!

 一度価値観見直されてはいかがですか!


「お気に召していただけて光栄ですわ」


 ひくひくと笑顔が引きつる。


「どんな女性に育っているのか興味があったのだ。しかしこれほどまでに美しいとは」


 春の柔らかな日差しの中、アルバートは目を細めた。


「私は婚約を辞退した身、そのようなお言葉身に余りますわ」

「あぁ、それが理解出来ぬのだ。リシリアは妃教育を受けていたはず。なぜ断る」


 あなたと婚約したら国外追放エンドが待っているからですよ!

 とは言えない。


「恋い焦がれる相手と結婚するのが何よりの幸せかと思い直しまして」


 遠回しではあるが、少なくともアルバート王子には気がないと伝わるだろうか。


「そうか」


 アルバート王子は頷いた。

 うん、わかってもらえたようです。


「では私がリシリアの恋い焦がれる相手になればよいのだな」

「なっ?!」

「そうすれば婚約を断る理由もなくなるだろう」


 アルバート王子はさも当然のように言った。


「い、いえいえいえ! そうではなく!」


 貴方の恋い焦がれる相手はヒロインなんですってば!


「どうせ3年はここから出られないのだ。3年もあればリシリアを手に入れることも出来るだろう」

「どこからその自信が湧いてくるのですか」

「今まで手に入らなかったものなどないからな」


 あぁ!

 この人、究極のお坊ちゃまでした!


「お、お戯れを。そ、そういえば殿下、新入生代表の挨拶があるのでは? 先生もきっとお待ちですわ」


 早くどこかへ行ってほしい。


「よく知っているな」


 そりゃ何度もプレイしましたからね。


「殿下以外に代表となれる者などおりませんわ」


 私は社交辞令の笑みを浮かべる。

 アルバート王子は私の背後にある校舎に向かって歩き出す。そしてすれ違いざまに私の手を取ると、おもむろに唇に持っていった。


「3年間も学生生活を送るなどくだらんと思っていたが、楽しくなりそうだ」


 アルバート王子は私の手の甲に軽くキスをする。私は身体中の血が沸騰したんじゃないかと思うほどの紅潮を感じた。


「ではまた話そう」


 アルバート王子はそう言うと、固まった私を置き去りにして校舎へと入って行った。



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