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悪役令嬢はパラ萌えされる  作者: ハルノ_haruno
1年生
30/160

入部条件

「トレーニーとは一体」

「あぁ悪い。リシリアとアンジュだったな」


 よかったです。きちんと名前を覚えてらしたようですね。


「あ、あの! さっきもらったチラシを見て来ました!」


 アンジュは胸の前で手をぎゅっと結んで言った。

 積極的で可愛いですね。


 というか、最近はアンジュのすることが何もかも可愛らしく見えてしまいます。

 親バカってこんな気持ちなのかしら。


「よく来た。歓迎する」


 私はぐるりとトラックを見渡す。


 長距離に短距離、トラックの中心では棒高跳び。

 皆午後の日差しの中真剣な眼差しをしている。


「リシリアは何に興味が?」


 私の視線に気付いたランカ先輩が言う。


「いえ、あの」


 どこからどう見ても女子部員がいませんね。


「あぁ、投てきなら夕方からだ。円盤投げと砲丸投げがある。危険だから時間を分けているが、またあとで来るか?」


 そうではなく。


「ランカ先輩は、私たちをマネージャーとしてスカウトなさったんですか?」

「まさか。選手としてだ」

「令嬢は走ったり跳んだり投げたりは普通しないかと思いまして。現に女性が見当たりません」

「ここに二人いるだろう」


 いえ、まだ入るとも何とも言っておりませんが。


「ランカ先輩はなぜ私たちを?」

「リシリアは相当身体を鍛えているだろう」

「そんなことは……」


 ありますけど。


「ふくらはぎを見ればわかる。走り込みに坂道ダッシュあたりか」


 惜しい、階段ダッシュです。


「女性の身体をそうまじまじ見るものではありませんわ」

「まじまじ? 俺は2秒あればわかるぞ」

「そうですか」

「生かさなくてどうする」


 どうすると言われましても、これは国外追放時に生かそうと思っているだけですから。


「アンジュはなぜスカウトを?」

「昨夜走り込みをしているのを見かけた」

「え!?」


 私は思わずアンジュを見る。

 だが当の本人はトラックで走る選手に目を奪われ、こちらの話などまるで聞いていない。


「夜にユニフォームのような格好で走っていたぞ」


 あのトレ着はランニングにショートパンツですもんね。

 確かに陸上のユニフォームに見えなくもありません。


 っていうか!

 夜にそんな格好で走ってるのですか、アンジュ!


「フォームはまだまだだが、決してぶれない強い瞳をしていた。育て甲斐がある」


 育て甲斐があるのには同感です。


「あ、あの!!」


 突然アンジュが大きな声を出した。


「私も、練習すればあんなに早く走れるようになるのですか!?」


 特別なプレゼントを見た時のような、希望がいっぱい詰まった目をしていた。


「なるぞ」

「ア、アンジュ? あなた、まさか」

「私、やってみたいです!」

「で、ですが令嬢がこのようなこと」

「? いつもリシリア様とやっているではありませんか」

「ほう、いつも、か。是非トレーニングメニューを聞きたいところだが」


 色々とマズい。


「令嬢たるもの公の場で走るなど、はしたないのです」

「でも私庶民ですし、令嬢というほどのものでは」


 あなたは次期王妃になるのですよ!

 言えないけど!


「リシリアは何を気にしている。やりたいことをやるのに男も女も身分もないだろう」

「ありますわ」

「それは窮屈だな」

「何とでも仰ってください」

「走ればその窮屈さからも逃れられるぞ」

「そんなわけないでしょう」


 好奇の目に晒されるだけだ。

 ただでさえアンジュは注目を浴びているというのに。


「陸上部は正式に学園から許可を受けた部だ。女子が入部してはいけないという規定もない」

「ですが」

「ならばアンジュを止めるか?」


 止められそうもなかった。

 アンジュは日差しの中で走る自分をもう想像してしまっている。

 止めればそれは渇求となり、いずれ後悔になるだろう。


「止めません」


 アンジュの顔がパッと明るくなる。


「ただし入部に当たって条件があります。日焼け対策は万全に。こまめな水分補給も欠かせませんし、活動後は速やかな肌の保湿とマッサージが必要です。私がアンジュの専属マネージャーになります」

「リ、リシリア様が?」

「面白い」


 アンジュは頑張り屋さんなので、一度熱中すると周りが見えなくなりますからね。

 近くで見守らなければなりません。


 それに長袖のトレ着も新しく作りましょう。

 日よけになって、なおかつ涼しいものを。


「あ、あの。でも、私、リシリア様と他にもすることがあるのです。毎日でなくとも構いませんか?」

「俺も自分の練習があるしな。週2でどうだ」

「はい! 是非お願いします!」


 ランカ先輩が差し出した手を、アンジュは両手で掴んだ。







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