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悪役令嬢はパラ萌えされる  作者: ハルノ_haruno
1年生
3/160

その婚約、危険につき

 私がリシリアに転生してから6年の月日が流れた。


 筋トレと階段ダッシュの成果で、運動部の男子くらいの体力はついた。

 その副産物として、引き締まった身体も手に入った。


「リシリアは本当に美しく育ったな」

「ありがとうございます、お父様」


 珍しく家に帰った父と夕食をとっていた。

 私は来週から王立学校へ入学する。全寮制の王立学校は、一度入学すると三年間出られない。

 入学前に顔でも見ておこうと思ったのだろう。


「それに博学で、語学にも長けているとか」

「あら、どなたに聞いたのですか?」

「ん、いやまぁ、風のうわさでな」


 使用人たちはそわそわとし始める。私の行動は逐一報告されていたのだろう。


 現に私は国外追放に向けて、隣接する5カ国の地理や気候、生息する動植物をそれぞれ片っ端から覚えていった。

 語学は日常会話レベルだが、それでも5カ国語を一通りマスターした。


「お前の評判は王宮にも届いているよ」

「お父様の耳にも?」


 嫌な予感がする。

 父は筆頭公爵家として、王宮内でも高位の官職についている。


「リシリア、お前ももう16になる。喜びなさい、アルバート王子と正式に婚約を結ぶ時が来たのだ」


 来た。

 私は生まれながらにしてアルバート王子の婚約者候補として育てられた。

 でも正式に婚約を結んでしまったら、悲惨な運命から本当に逃げられなくなる。


「ご冗談を」

「お前もわかっていたであろう。公爵令嬢として、次期国王陛下に仕えるのが使命であると」

「嫌です」

「何?」

「お父様、そのお話、謹んでお断り申し上げます!」


 私はしっかりとした口調で言った。


「そ、そんなこと出来るわけがないだろう」

「お父様! 可愛い娘がどうなってもいいのですか?!」

「可愛い娘だからこそ、これ以上ない縁談を持ってきたのだ」

「私に言わせれば、これ以上ない不幸ですわ」


 国外追放の未来に黙って突き進むほどバカではありません。


「何が不満なのだ」

「嫌なものは嫌なのです。お断りしてください」

「父の仕事がどうなっても良いのか?」

「娘の人生がどうなっても良いのですか?」


 話は平行線だった。


 三日後、父が持ち帰った返事は「保留」だった。

 完全には断ることが出来なかった。しかし今すぐ婚約せずに済んだ。上出来だ。


 私はそれから意気揚々と学園生活の準備をした。

 大好きだった乙女ゲーム、「プリズムティアラの約束」の本編。3年間の学園生活が始まる。








 入学式当日。

 門をくぐると突然強い風が吹いた。春風が巻き上げた花が視界を奪う。


「私との婚約を断ったそうだな」


 低い声が不意に響く。


 あぁ、スチルで見たな、この光景。

 舞い上がる花びらと、春の日差しの中に立つ金髪の王子。


「アルバート殿下」

「久しいな、リシリア」


 その凛々しい顔つきは、オープニングで見たそれそのものだった。


ブクマありがとうございます!嬉しいです!

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