表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢はパラ萌えされる  作者: ハルノ_haruno
1年生
27/160

プリズムティアラ

 思いがけず突然の休みになった午後。

 かと言ってまだ日は高い。


 早く寝るのは大前提ですが、こんな時間に眠ってしまったら夜に目が冴えてしまいそう。


 そこで私はのんびり外を散策することにした。


「人に会ったら気疲れしてしまいそうだし、やっぱりあそこかな」


 私は礼拝堂へと足を向けた。






 案の定、礼拝堂の周りには誰もいなかった。

 

 桜の花びらはすっかり落ち、枝には瑞々しい若葉が茂っていた。

 そこだけ時が止まったように静かで、時折風が吹くと木々の揺れる爽やかな音がするだけだった。


 私はアンティーク調の銅のドアノブをそっと下げてみた。


「開いてる」


 ぐっと力を入れて扉を押すと、風が礼拝堂の中に吹き抜けた。


 礼拝堂に入ると、左右に真っ白なベンチが等間隔で並んでいた。

 結婚式場の宣伝なんかで見るチャペルそのものって感じ。


 ベンチの通路側には花を挿す筒が置いてあり、その全てに生き生きとした花が飾られていた。

 礼拝堂を満たす花の香りを胸いっぱいに吸い込む。

 その甘美な香りにうっとりとしてしまう。


 そして正面の台座に鎮座するそれに思わず目を奪われる。


「プリズムティアラ……」


 ガラスケースの中に納められたプリズムティアラ。

 丸い天窓から一筋の光が差していた。それはまるでプリズムティアラだけを照らすためだけに開いているようだった。


「きれい」


 そんな陳腐な言葉しか出ない程にプリズムティアラは美しかった。


 光を乱反射して、まるでティアラ自身が光を放っているような感覚。


「ふっ。案外リシリアも乙女なのだな」

「えっ?」


 振り向くと、真っ白な花を両手いっぱいに抱えたアルバートがいた。

 背後の春の柔らかな光も、たくさんの真っ白な花でさえも、この麗しい王子の飾りのように見えた。

 

「何を見とれている」

「えっ、あの、すみません」


 思わず頬の温度が上がる。


「花か」

「い、いえ。アルバートが、とても美しく見えて」

「おかしなことを言うものだ」


 アルバートは不思議そうな顔をした。


「失礼いたしました。もう出ますから」

「そう慌てなくてもよい。座っていろ」

「いえ、でも……はい」


 私は一番近くにあった、先頭の白いベンチに座った。


 アルバートは手に持っていた白い花を、扉に近いの筒から一束ずつ入れ替えていく。

 花の前に跪くその姿はまさに麗人と言った感じだった。


「花たちがとても生き生きしていると思ったのですが、毎日替えてらっしゃるのですか?」

「あぁ。母からの言いつけだ」


 母……って!

 現国王妃様ではありませんか!


 うぅ、おいそれとコメント出来ません。


「ここには思い入れがあるらしくてな」

「プリズムティアラ、ですか」

「知っているのか」


 そりゃあもちろん、このゲームのタイトルでもありますから。




 かつてこの学園で一組の男女が出会って恋に落ちた。

 男はこの国の王太子、娘は身分が低かった。

 

 到底結ばれるはずのない二人だと思われたが、互いの一途な思いが実り、婚姻の約束として渡されたのがプリズムティアラだった。


「このプリズムティアラの前で将来を誓い合った二人は、幸せになると」

「父と母もその伝説にあやかったらしい」

「そ、そうなのですか!?」

「まぁ母は元々公爵家の者だったから、結婚は既定路線とも言えなくはないが」

「す、素敵です! 本当に想い合える方と一緒になれたなんて」

「息子としては両親の馴れ初めなど恥ずかしくて聞きたくもないが」


 そう言いながらアルバートは私が据わっているベンチの前で跪いた。

 ごつごつとした手からは想像も出来ぬほど、とても丁寧な手つきで最後の筒の花を生け替えた。


 心臓がうるさい。

 トットットットッ。まるで早鐘のよう。


 こんなに至近距離で、吐息まで聞こえそうな静けさの中で、私たちは二人きりだ。


「この一輪はリシリアに」


 アルバートはそう言うと、一輪だけ残した白い花を私の髪に差した。


「っ!」


 心臓がドクンと鳴る。


「嫌いか?」


 覗き込むようにしてアルバートは私を見つめる。


「えっと、あの」

「花のことだ」

「わ、わかっています」


 この距離で「好き」だなんて、たとえ花のことでも言えない。


「隣に座っても?」

「もう座っているではありませんか」

「ははっ、そうだな」


 アルバートは私の側に座るとじっとプリズムティアラを見つめた。


「リシリアも好いた男と一緒になりたいのだったな」

「は、はい」


 そう言えばそんなこと言いましたね。


「私には何が足りない」


 !?


「アルバート王子殿下に足りないものなど」

「だが私の妻になるのは嫌なのだろう」


 アルバートが嫌なんじゃない。

 好きになったって、貴方はいずれアンジュのもとに行く。

 そして私は国外追放され、大好きな二人を見ることすら永遠に叶わなくなる。 


 今はそれがたまらなく辛いのだ


「もっと相応しい女性が現れますわ」

「私はリシリアに相応しい男になりたい」


 そう言ってアルバートは私の髪に触れた。


「きれいだ」


 私の胸の高鳴りはやむことがなかった。

 


やっとプリズムティアラが出てきました!

お待たせしました!


いかにも乙女ゲーにありそうな感じでロマンティックです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ