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悪役令嬢はパラ萌えされる  作者: ハルノ_haruno
1年生
24/160

レアスチル(ノア)回収

 私は心を落ち着けて医務室の扉に手を掛ける。


「リシリアです。ノア、いますか?」

「リ、リシリア!?」

「!!!」


 半裸。


 半裸ではないですか。


 眼鏡の優等生キャラにしては、軽く筋の入った美しい腹筋。

 そして下へと視線をやると、白のスラックスは前ボタンが開けられ、へそ下数センチまで見えている。


「ご、ごめん。着替え中で」

「ごめんなさい!」


 私は慌てて扉を閉めた。





 とんでもない既視感。

 これはまさか。


「ノアのレアスチルではありませんか」


 血の気がさっと引いてゆく。


 ノア攻略の必須パラメータ×1.2倍を有し、なおかつノアの好感度が85%を超えたときにのみ見られる激レアスチル。

 通称「半裸ノア」、腐女子のお姉様方の間では別名「肌色スチル」とも。


「お待たせ」


 気まずそうな顔をしたノアが扉を開ける。


「急に入ってごめんなさい。まさか着替え中だとは」

「はは、大丈夫だよ。僕こそごめんね。カーテンを引いておくべきだった」


 ノアは医務室に入れてくれた。

 先生は不在のようだった。


 もっとも、不在だからこそノアは、カーテンも引かずに着替えていたわけだけど。


「あの、落馬したって聞いて」


 私はベッドのそばの一人掛けソファに腰掛ける。


「恥ずかしいな。リシリアには知られたくなかった」

「私のせい?」

「違うよ。そんな顔しないで」


 ノアは眼鏡の奥で優しく微笑むと、ベッドに腰を下ろした。


「僕の意地だったんだ。昨日の午後に遠乗りの訓練があってね」

「アルバートに聞いた」

「そっか。殿下が先頭を走ってたんだけどさ、あの人の背中を追い越したくなった」


 その目は先程と違い、じっと一点を見つめていた。


「無茶だってわかってたんだ。けど負けたくなかった」


 林道には大きな石や枯れ枝も多く、決して簡単な道ではなかったらしい。

 そこに勢いよく馬を走らせ、落馬した。

 幸いふかふかの腐葉土や落ち葉がクッションになって、大事にはならなかったそうだ。


 念のため一晩医務室で様子を見たが、午後からの授業には出てよいと先生が判断したらしい。


「ノア、もう無理はしないで。カンサム公爵も驚くわ」

「父上が聞いたら気絶しそうだね」


 ノアは鼻をこすりながら笑った。


「笑い事じゃないわ」

「でも殿下は僕の嘘を信じると言った。落ちた甲斐があったよ」


 その言葉にドクンと胸が鳴った。


「ノア、私――」

「わかってる。リシリアにとっては本意じゃないよね。勝手なことをしたよ」

「どうして殿下に嘘なんてついたの」

「僕のエゴだ。でも謝らないよ」


 瞳の中には揺るがない光があった。

 私は思わず頭を抱える。


「僕たちは昔から仲の良い幼馴染だったじゃないか。友人からでも僕を見てくれないか?」

「ずるいわ」


 ノアはずるい。

 幼馴染から友人として見ろと言われて、断れる人間がどこにいるだろうか。


「それはイエスと受け取っても?」

「私たちはずっと友達だったじゃない」


 でもノアはそれ以上を望もうとしている。


「じゃあ今まで通りでいいってことだよね」


 ノアは立ち上がると私の頬に優しく触れた。


 ノアは優しい。

 けれど、互いの主張が食い違った時、一度も口で勝てたことがない。


「幼馴染で、友人よ」


 白旗を上げるしかない。


「うん」


 ノアの手は子どもの頃とは違って、私の顔を頬をすっぽり覆ってしまった。

 その熱がチリチリと私の胸を焼き、ひどくひりつかせた。

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