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悪役令嬢はパラ萌えされる  作者: ハルノ_haruno
1年生
22/160

学園デビュー

 パタパタパタ。


 講義室で一時間目の授業を待っていると、廊下を走る音が聞こえた。

 走ってはいけないと言ったけれど、遅刻するわけにはいきませんもんね。


 ガチャ。

 目立たぬよう後ろから入ればいいものを、講義室の前の扉からうっかり登場するアンジュ。


「えっ、どなた?」

「あんなに可愛らしい方いらしたかしら」


 ざわつく教室。

 これぞまさに高校デビュー。ならぬ、学園デビュー。


「あなたご存じ?」

「いいえ、社交界ではお見かけしたことはないような」


 そりゃそうでしょう。

 アンジュは庶民ですから社交界になんて出てきません。


 アンジュはしばらくきょろきょろした後、満面の笑みで私を見つける。


「リシリア様のご友人のようよ」

「やはりリシリア様ともなるとご友人も別格だわ。セレナ様もお美しいけれど、また違った初々しさがございますわね」


 貴族棟の生徒たちはアンジュだと全く気付いていないようだ。


 それもそのはず、昨日ぴかぴかに仕上げた黒髪ストレートはきれいにハーフアップに纏められ、どこからみても可憐なご令嬢。

 そして昨日お直しした、制服である白のミニドレス。

 これがアンジュの小柄な体型にぴったりで、無垢な可愛さを一層引き立てた。


「ごきげんよう、リシリア様」


 余裕が出たのでしょうか。口調まで柔らかくなった気も。


「ごきげんよう、アンジュ」


 私が言うと貴族たちを中心にどよめきが起こった。


「え? え? 私また何かやってしまいましたか?」


 アンジュは怯える小動物のように肩をすぼめた。


「アンジュの可憐さにみんな驚いたのよ。先生がいらっしゃるから座りなさい」

「は、はい! 失礼します!」


 そう言うとアンジュは当然のように私の左隣に座った。

 懐いてくる感じもちょっと可愛いじゃないですか。


「髪、素敵に出来ましたね」


 私は生徒たちの視線など無視してアンジュに話しかける。


「リシリア様にいただいた紙を見ながら頑張りました! 時間が掛かってしまいましたが」


 そう。

 昨日の個人レッスンの最後に、簡単なヘアアレンジのやり方を書いた紙を渡したのだ。


 ハーフアップ、かたおさげ、ポニーテール、シニヨン。


 何を選ぶか楽しみにしていましたが、ハーフアップは清楚な感じがプラスされて良いですね。

 さらさらの髪も存分に生かされていますよ!


「明日はもう少し早く起きて、廊下を走らずに済むようにね」

「は、はい。すみません」


 何だか私、生活指導の先生のようですね。


 さて、生活指導ついでに気になることがもう一点。

 あの真面目なノアの姿が見えません。


「やつなら来んぞ」

「おはようございます、アルバート。誰のことを仰っているのですか」


 アルバートは空いていた私の右隣に座る。


 アンジュやアルバートがギリギリに教室にやってくるのは想定の範囲内。

 だがノアがこんなにギリギリになってもいないなんて。


「探しているのはカンサム公だろう」

「ノアですか? 確かにいないようですね」


 探しているなんて思われたら、ますます事態がややこしくなりそうです。

 気にはなりますが、素知らぬふりで通しましょう。


「やつなら昨日から医務室に泊まっている」

「医務室? なぜです」


 ノアに何かあったのだろうか。


 アルバートは何も返事をせず、無情にも始業の鐘が鳴り響いた。



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