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悪役令嬢はパラ萌えされる  作者: ハルノ_haruno
1年生
21/160

リシリアの誓い

 午前中に2コマ、午後に1コマの講義を終えると今日もアンジュの個人レッスンが始まる。

 今日は男女別の講義ばかりだったおかげで、アルバートにもノアにも会わずに済んだ。


「リシリア様、アンジュです」

「どうぞ」


 アンジュには今日から一人で来るように言っておいた。

 とりあえず迷わずに来られてほっと胸を撫でおろす。


「リ、リシリア様。その服は何ですか?」

「自分で作りましたの」


 お手製のトレ着です。

 前世でいうタンクトップとショートパンツ。


 柔らかい布を裁断して縫い合わせただけの簡単なものですが、ドレスでトレーニングするのは大変ですからね。

 実家でトレーニングする時はこれを着ていました。


「貴族の女性は服まで作れるのですか?」

「まさか。普通はそんなことしませんよ」


 それは下女の仕事。

 貴族の女性はレース編みや刺繍を嗜むのです。

 そういえば今日の授業がそうでした。


「でもとても動きやすそうですね。私も欲しいなぁ」

「ありますよ。いりますか?」

「い、いいんですか!?」


 私はクローゼットの奥に閉まっていたトレ着を何着か取り出す。


「このあたりはまだ袖を通していないので差し上げますわ」

「うわぁ、ありがとうございます!」

「早速着てみますか? 今日は少しお洋服が汚れてしまうかなと思うので」

「はい! 着てみたいです!」


 アンジュは人懐っこい笑顔で頷いた。


 しっかり顔を上げて笑えば可愛いのだ。

 何たってヒロイン、磨けばまだまだ光る。


 あの眩しいアルバートと並んでも遜色のないほどに。


「あの、これは何を?」

「トリートメントです」


 私はアンジュのパサパサの髪に、こってりとしたトリートメントオイルをたらす。


「ひゃっ、あったかい」

「温めておきましたから」


 私はアンジュの髪を優しく櫛で梳いていく。

 一体どんな生活をしたらこれ程までに髪が傷むというのでしょう。


「アンジュの実家は何を?」

「うちですか? 海辺のそばで、アクセサリーを作っています」


 海か。

 潮風にやられたのなら納得のバシバシ具合。


「アクセサリーですか。何だかとてもアンジュっぽい」


 夢見る乙女の実家にはぴったりです。


「真珠や珊瑚のものが貴族様には人気です」

「いつか見てみたいですわ」


 そう言うとアンジュの頬はぽっと赤くなった。


「あの、リシリア様は――」

「私? 私の実家ですか?」

「い、いえ。何でもないです」

「?」






 一時間後。

 細くて柔らかい髪には艶が戻り、動くたびにさらさらと揺れた。


「す、素晴らしいですわ。アンジュ」


 このポテンシャル、さすがヒロイン。

 思わず指を差しこみたくなる、さらさら黒髪ストレートになりました。

 天使の輪まで出来ていますよ。


「わぁ! これが私ですかっ? すっごい、つるつる!」

「ね、滑らかでしょう」


 拍手を送りたい気分です。


 これで明日からはみんなの視線を独り占めですね。

 お顔はもともと整った目鼻立ちですし、童顔なところも可愛らしいので、すっぴんでも勝負できるでしょう。


 あ、そうだ。


 あともう一つ。

 オーバーサイズの制服を何とかしてしまいましょう。


「アンジュ、制服を少し仕立て直したいのですが」

「え? 制服ですか?」

「少し大きいでしょう?」

「も、もらいもので」


 アンジュは恥ずかしそうに言った。


「身幅を詰めて、スカートも長すぎて野暮ったいのでもう少し短くしましょう」

「そんなことまで出来るのですか?」

「繕い物は慣れてますわ」


 国外追放された時に困らないよう、衣食住のうち衣と食についてはかなり鍛えた。

 裁縫も料理も心得がある。


「そんなことリシリア様に頼んでいいのでしょうか」

「もちろんです。アンジュを輝かせることが楽しいのですよ」


 これは本心だった。


 最初は冴えないヒロインを何とかせねばという使命感だったが、この愛くるしさだもの。

 アンジュを美しく育て上げること自体が楽しみになってきたと言っても過言ではない。


「そんな、私にはリシリア様が眩しすぎて――」


 うっわー、可愛い。

 林檎みたいに頬を赤くしちゃって、目もうるうるで!

 そんでもって恥ずかしくて言葉を切ってしまういじらしさよ。


 私は思わずアンジュの手を取る。


「必ずお姫様にして差し上げますからね?」

「ふぇっ!?」


 私はアンジュに誓いを立てた心持ちだった。

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