表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢はパラ萌えされる  作者: ハルノ_haruno
1年生
18/160

対峙

 私とノアはむず痒い雰囲気の中サンドイッチを食べた。


 たまに視線がぶつかると、ノアはふにゃっとした顔で笑った。

 そのたびに私の中の罪悪感は増した。


 やっぱりノアの提案を受け入れるわけにはいかない。

 ノアの心を利用することはもちろんのこと、公爵令嬢リシリアとしてアルバート王子殿下に嘘をつくわけにはいかない。

 これでもこの国の筆頭公爵家として、王族への忠義はあるのだ。

 偽るだなんてとんでもない。




 食事を終えて次の講義室へ向かう途中、私はノアに言った。


「ノア、さっきのことだけど」

「うん?」

「ごめんなさい、やっぱりあの話――」


「全く仲が良いものだな」


 後ろを振り返るとアルバートがいた。

 その斜め後ろくらいにセレナもいた。


「幼馴染ですから」


 私は冷静な声で言った。


「アルバート王子殿下。僕たちは幼馴染でしたが、先程リシリアに想いを伝えました」

「ほう。なぜそれを私に?」


 ノア!? どうしたのですか!?


「僕たち、交際することになったのです」

「な、ノア、何を」


 なってません!

 恋人のフリだって、今まさにお断りするところでしたよ!


「リシリアが貴殿を好きだと?」


 アルバートは高圧的な声で言った。


「リシリアの想いを僕が言うわけには参りませんが、交際をするということはそういうことだとお察しください」

「そうか。だが私はあいにく察するのが苦手でな」


 アルバートの鋭い視線は私へと向けられた。


「リシリアの口から聞かねば信用出来ぬ」


 どうすればいい。背筋に冷汗が流れる。


 王族に嘘をつくなど出来ない。

 けれどここでノアに恥をかかせることなど、私に出来るだろうか。


 転生したけれど、確かにリシリアとしての記憶もある。

 公爵家同士、孤独な毎日を互いを支えに生きてきた。

 幼い頃からの辛い妃教育だって、ノアという友人がいたから頑張れたようなもの。


「あ、あの。私は」


 喉の奥がカラカラになって、言葉が引っかかるような感覚を覚える。


「殿下、リシリアを困らせないでいただきたい」


 ノアはアルバートの視線を遮るように私の前に立った。


「リシリア、どうなのだ」

「僕への愛の言葉など、殿下にお聞かせすることではありません。お引きください」


 二人の間にはただならぬ空気があった。

 私は何も言えずにいた。


「リシリア、よく聞け」


 私はノアの肩越しにアルバートを見る。


「私がリシリアを妻に娶るなど造作もない。リシリアを妻にと言えば、お前はもとより父親も断れぬ」


 それはそうだろう。

 アルバートは一国の王子なのだから。


「だがなぜそうしないかわかるか。そうすればお前は我が妻となるが、その心は永遠に手に入らない。私はそれを良しとしない」


 だから婚約を断った時も、特にお咎めも説得もなかったのか。


「私はリシリアの嘘偽りのない心で、私の元に来ることを望む。妻となる女性に心を偽らせるなど、私には出来ぬのでな」


 それを聞いてノアは私の方に振り返った。

 やるせないような、泣き出しそうな、そんな顔をしていた。


「行こう、リシリア」


 そう言った唇は震えていた。

 私はノアに手を引かれるまま講義室へ入った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ