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悪役令嬢はパラ萌えされる  作者: ハルノ_haruno
番外編
158/160

番外編(if storyランカ先輩ルート~出会いと初デート編)

完結後の評価、たくさんありがとうございます!感謝!

こちらリクエストのあった番外編(ランカ先輩if)です。


【注意】

こちらは"if story"ですので本編とはお相手が異なります。

本編の雰囲気、アルバートとのカップリングがお好きな方はブラバをお勧めします。


「もしリシリアがランカ先輩ルートに進んだら……?」

どうなるでしょうか!

「陸上部」


 悪くない響きです。

 公爵家で走ろうものなら使用人たちが気絶しそうなものですが、勧誘のチラシをもらったのだから正々堂々と走ってもいいですよね?


 私はグラウンドにいるランカ先輩のもとへ向かった。


「来たか」

「あの、女子部員はどちらに?」


 見渡す限り日に焼けた男しかいない。


「ここに1名いるだろう」

「え?」

「歓迎する」


 ランカ先輩はにやりと笑った。





 翌日からランカ先輩は、私の講義が終わるのを教室の外で待っているようになった。


「あ、あの先輩また来てる」

「リシリア様のお知り合いみたいだけど」

「あれって騎士団の訓練服よね」

「恋人同士なのかしら?」


 あらぬ噂が立っていますよ。


 私は白い訓練服を着たランカ先輩を見上げた。

 まだ春になったばかりだというのに日に焼けた肌。ワイルドな黒い短髪。服の上からでもわかる筋肉質な身体。


「ランカ先輩、毎日待つのはやめてください」

「逃げるだろう」

「……」


 正直逃げたい。

 しかし入部早々辞めるだなんて、公爵家の名折れです。




「あと2周だ、ペースを落とすな」

「はっ、はぁっ! きついっ」

「話す余裕があるなら大丈夫だ」


 長距離を選択した私に、ランカ先輩は並走して声を掛けてくる。

 気力だけで足を前に出し、なんとかグラウンド20周を走り終えた。


 公爵令嬢だなんてことも忘れてその場に座り込むと、ランカ先輩が私の手首を握った。


「なっ、なんですかっ」


 華奢な手首がごつごつした大きな手の平に包まれる。


「静かにしろ。脈を取っている」


 ランカ先輩はどこに忍ばせていたのか懐中時計を取り出してその秒針をじっと見つめた。息こそ上がってはいないようだが、首筋にはうっすらと汗が浮かんでいた。

 男らしい手に握られた手首は徐々に熱を持ち、体中に血液を送り出す心臓がより一層活動を加速させる。


「ん?」


 ランカ先輩は不思議そうに顔を上げた。

 その切れ長の目が私を捉える。心臓がドクンと強く打つ。


「脈拍が上がった」

「!」

「気のせいか? もう一度――」

「じ、自分で出来ますから!」


 このままだと、どんどん脈が速くなりそうだった。






 陸上部の活動にも慣れてきたころ、ランカ先輩にデートに誘われた。

 のだと思っていたのだけれど……。


「あの、今日は一体どこへ?」


 デートに弓矢を携行するなんて聞いたことありませんよ。


「動物性たんぱく質の確保だ」


 え?

 それって狩りのことですか? 狩猟ってことですか?


「シェフに言えばいいのでは?」

「肥育されたものは脂質が多い。それに調理にも油を使う」

「確かにそうですが」


 一昨日寮で出されたステーキは、肉質は柔らかくジューシーで、脂身さえ甘くて美味しかった。


「それに比べて野生動物は脂質が少ない上、焼いて食べればさらに油が落ちてヘルシーだ」


 私は思わず頭を抱えた。


「それ、私必要でしたか?」

「一人ではデートと言わんだろう」


 あ、一応デートという認識なんですね。


「初デートに野生動物狩りなんて、普通の女の子は引くと思いますよ」

「でもリシリアはついてきているだろう?」

「まぁ」


 ランカ先輩の逞しい腕が弓を引くところは少し見てみたい気もする。


「リシリアに嫌われなければそれでいい。普通の女などに興味はない」


 ずるいなぁ。

 女っ気なんてこれっぽっちもないくせに、天然でそういうこと言えちゃうんだから。


 そんなことを思って森の中を歩いていると、突然ランカ先輩が矢をつがえた。

 そして木々の間目掛けて思い切り弓を引いた。


 一瞬の出来事だった。

 どさりと音がして、その先には一頭の鹿が倒れていた。


 すごい、とは思わなかった。

 これはさすがに、ちょっと引く。


 ランカ先輩は息絶えた鹿に近付くと、静かにしゃがんで手を合わせた。


「あ……」


 私も思わず駆け寄って、隣に座って手を合わせる。


「引いたか?」


 顔を上げたランカ先輩が表情を変えずに聞いた。


「鹿が倒れたのを見た瞬間は引きました」

「そうか」

「でも目を逸らしちゃいけないなと、ランカ先輩を見て思いました」

「ふっ、そうか」


 ランカ先輩は頬を緩めて言った。





「ジビエ、美味しい……」

「だろう」


 パチパチと燃える火の前で、私とランカ先輩はジビエに舌鼓を打っていた。

 ロマンティックなレストランも素敵だけど、将来国外追放されるかもしれないなら、こういう食事も覚えておくべきかもしれない。


「ほら、もっと食え」


 嬉しそうな顔をしたランカ先輩が、焼けた肉を私の口元に差し出した。


「じ、自分で食べられますからっ」

「俺がこうしたい」

「はしたないです」

「今さら貞淑ぶってどうする」


 いたずらな少年のような瞳に思わず口を開けてしまう。

 大人で強くて傍若無人な人だと思っていたけど、こんな顔もするのか。


「おいひいれす」

「リシリアはいい女だな」

「?」


 鹿肉を頬張っている姿を「いい女」と言われるのは若干心外なのですが。


「リシリア、悪い」

「何ですか」


 よく噛んだ鹿肉を飲み下す。


「たぎってきた」

「はい!?」

「肉を食べて、火があって、それだけで男の闘争心は燃えるものだ」

「何と闘争する気ですか」

「とりあえず己の理性と戦っているところだ」


 ランカ先輩の大きな手が私の腰に回る。


「ちょっ! それ戦えてますっ!?」

「これでも戦ってるつもりだ」


 熱い吐息が耳にかかる。心臓が跳ねる。


「いいか?」


 ランカ先輩の唇が近付く。黒い瞳が私を射抜く。


「だ、だめ! だめです!」

「なら、いつか仕留める」

「っ!」


 これを素で言っているところが本当にたちが悪い。

 私の心臓は20周走ったときよりもずっと速く打った。

Q「もしリシリアがランカ先輩ルートに進んだら……?」

A「誰が相手でもランカ先輩はブレなかった」

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