飛び込む朗報
「リシリア様~!!」
微妙な空気の中、アルバートの部屋に飛び込んできたのは泥だらけのアンジュだった。
「アンジュ!? 何事!?」
ここは殿下の部屋ですよ?
「リシリア様のお部屋に行ったら、こっちにいるって聞いて!」
一同の視線がアンジュに注がれる。
「どうしたの? 急用?」
「私、上級に上がりましたっ! さっきの試験で、騎士団の上級クラスに上がりましたぁ~!」
顔を涙で濡らしながらアンジュは叫んだ。
「わぁ! おめでとう!」
「ありがとうございます~!!」
「よくやったな。これで4月から正式にリシリアの護衛だ」
「あれ? 殿下もいたんですか?」
「……私の部屋だ」
アルバートには悪いですが、今はそちらを気遣っている場合ではありません。
私は泥だらけのアンジュに抱き着く。アンジュは心底嬉しそうだった。
場所を私の部屋に変え、アンジュを風呂に入らせた。
その間にシーラに昼食を用意してもらい、お祝いのランチ会をする。
お風呂から上がったアンジュに適当なドレスを着せ、昼間だけど二人で乾杯をした。
ゴールドのシャンパンがしゅわしゅわと音を立てる。
「すごいわ、本当に上級に上がっちゃうなんて」
「ランカ先輩に言われた体術を鍛えたおかげです。あの人無茶苦茶だけど、こういうところは的確なんですよねぇ」
「そう言えば、ランカ先輩のお父様も来てたの? 今日は試験だったのよね?」
そう言うとアンジュのテンションはガクッと下がった。
「会いました。喋りました」
「どんな方? 今でも現役でご立派な武官だと聞いているけれど」
「ランカ先輩のテンションをやや抑えめにして、かつ有無を言わさないところがバージョンアップした感じです」
「えぇ……」
思わず引いてしまいました。ごめんなさい。
「試験終了後に、皆の前で『お嫁殿』と呼ばれました」
「嫁……」
「で、視察に来ていた他の方々に紹介されました。『うちの嫁をよろしく頼む』と」
間違いではないんでしょうけど、心中察しますよ。
「まぁでも、おめでたいことよね? 進級も、結婚も」
「そうなんです。文句を言えないあたりがこう、何というか」
「わかるわ」
「正直引きました」
「うん、私も」
その後私たちは顔を見合わせて笑った。
2学期は楽しい雰囲気の中終わり、今年も年末に雪が降った。
この学園で過ごすのもあとわずかだと考えると少し寂しい気もする。
それぞれの進路が具体的に決まっていって、もう目は卒業後の風景を見ている。
年が明けたらあっという間に卒業だ。