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悪役令嬢はパラ萌えされる  作者: ハルノ_haruno
1年生
15/160

斜め後ろの立ち絵の人

 私がアンジュ様を鍛えれば鍛えるほど、きっと良くない噂が広まるのだろう。

 あぁ、悪役令嬢補正って恐ろしい。


 そんなことを考えながら、私は次の講義室に向かっていた。


「くすくす。ごきげんよう、リシリア。随分とひどい顔ね」

「セレナ、あなたはいつも美しくてよ」

「ふふ、存じていてよ?」


 セレナはリシリアの友人で、リシリアがヒロインをいじめる時には必ず斜め後ろにいる人物。


 とにかくものすごい美貌の持ち主で、いつも笑みを絶やさない。

 ふわふわとした金髪は腰のあたりまで伸ばしていて、リアルフランス人形って感じ。

 

 これだけの美人がいつも後ろで笑っている立ち絵ってインパクトがあったから、それなりに記憶に残っている。


「セレナ、支度は自分で?」


 セレナは公爵令嬢で生粋のお嬢様。だけど他の令嬢のようにボロっとした感じがない。


 お化粧もばっちりで睫毛はくるんと上向きに上がっているし、制服の白いミニドレスだってきちんと着こなしている。髪だって自分で梳くのは大変だろうに。


「ふふ、まさか。自分で身支度するなんて、令嬢のすることじゃないわ」


 セレナは手を口に当て、おかしそうに笑った。


「ではどうやって?」

「もちろんやらせたわよ?」

「誰に」

「名を何と言ったかしら? 昨日適当に見繕っておいたの。少しお金も渡したわ」


 使用人不可の学校だがら、現地調達したということか。

 確かに掃除や給仕、洗濯や庭師など、あちこちに学園が用意した使用人がいる。


「すごいわね」

「全然。自分の仕事があったとかで、結局支度が終わったのはさっきよ。一時間目に出損ねちゃった」


 そう言いながら、全く悪気のない顔をする。

 この笑顔が恐ろしいんですよね、この人は。


「どうりで。さっきダンスホールで見かけなかったわけだわ」

「そうなの。もったいないことをしたわ」

「?」

「ふふ、話題になっていてよ? アルバート殿下とダンスを披露した後、二人で逢引き。かと思えば戻ってきて、庶民相手に修羅場ですって?」

「あぁ、もう最悪ですわ」

「あら、とっても面白くってよ」


 面白くないから!


「全部誤解なのです」

「ふぅん? てっきり殿下と婚約する気になったのかと」

「まさか」


 追放フラグを自分で立てに行くほど馬鹿ではありませんよ。


「でも次は見学させてね?」

「見世物ではありません。それにセレナがいたら、事がもっとややこしくなりそうです」


 悪役令嬢とその取り巻き、なんて風に見られたら終わりだ。


「ふふ、じゃあ遠くから見守っておくわ」


 何そのストーカー宣言。


「セレナは恋のひとつやふたつ、しておけば? ことごとく縁談を断っているそうじゃない」

「そうね。リシリア以上に楽しい人がいるといいのだけれど」


 セレナはにっこり笑ったまま首を傾げた。

 うん、この人恋愛するつもりなんて欠片もありませんね。


 そんな話をしていたら、講義室についた。


 講義室は天井が高く、大きなシャンデリアが下がっていた。

 テーブルは一人に一つ、大きなものが与えられ、それが広い空間に余裕をもって並べられている。


 これだけ広いなら、アルバートとアンジュ様とは十分な距離が取れそうです。

 今日は朝から目立ちすぎましたから、放課後まで少し大人しくしておいた方がいいかもしれません。


 二人の姿はまだ見えないけれど、私は一番後ろの窓側に座った。


「あら、リシリアはこんなに隅でいいの?」

「いいの」

「じゃあまたね」


 そう言うと、セレナは迷うことなく最前列中央の一つ隣の席に座った。


 最前列中央は一応アルバートのために空けているのだろう。

 あぁ見えてやはりセレナは公爵令嬢で、それなりの配慮は出来るのだ。


 それからパラパラと席が埋まり始める。

 だけどなぜだろう。


 私の周りだけ避けられているような気がする。


「やぁ、リシリア。さっきのダンス、とても素敵だったよ」

「ノア、ありがとう。でもそのことは忘れて」


 幼馴染のノアがやってきて、私の隣に座ってくれた。

 ほっと胸を撫でおろす。


 ほぼ席が埋まった頃、廊下をパタパタと走る音が聞こえた。


「はぁ、はぁ。教室、ここであってますよね?」


 彼女の独り言に誰も返事をしない。

 そしてアンジュ様はきょろきょろと空席を探し、不幸なことに私の前の席に座った。


 いやいや!

 私がこんなに端に座った意味!


 そして重役出勤のごとく、最後に現れるアルバート。


「ふむ」


 アルバートはたった一つ残された最前列中央の席を見て言った。


「おい、そこのお前。名を何と言った」

「カンサム=ノアです、アルバート殿下」

「ノア、私と席を替われ」

「え、ですが。あの席は」

「よい。ノアは勤勉そうだからな。あの席でよく学ぶといい」


 アルバート、微笑みが黒いですよ。


「そのようなお言葉、恐れ多いです」

「勤勉な男は良い。その頭脳で国のために働いてくれ。カンサム家の名前、覚えておこう」

「は、はい! ありがとうございます!」


 あぁ、ノアが。

 行ってしまいました。


 私の右隣にはアルバート、前にはアンジュ様。

 

 どうしてこうなった!!




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