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悪役令嬢はパラ萌えされる  作者: ハルノ_haruno
3年生
144/160

乗馬デート

「どこか行きたいところはあるか?」

「アルバート、私、馬に乗りたいです」

「馬? 馬車ではなくて、馬か?」

「はい。乗せてくださいますか?」

「構わないが」


 王族所有の馬を管理する馬屋に、ひときわ目の引く真っ白な馬がいた。

 毛並みがつやつやしていて、まるで物語の王子様が乗っていそうな馬。


 アルバートは馬に飛び乗ると、手を差し出してくれた。

 私は用意された踏み台に登って、ゆっくりと馬の背中に乗る。


「すごい、高い」

「怖くはないか?」

「はい。むしろわくわくします」


 アルバートはふっと笑って足を一蹴りした。

 大きな馬体が上下に揺れる。


「以前アンジュの馬に乗せてもらったことがあるのですが、全然高さが違いますね」

「アンジュの馬は小さいからな。でもどうして急に馬なんて言い出した」

「今しか乗れないかな、と思って」

「そうか」


 王妃になれば、身の安全を考えどこへ行くにも馬車だろう。

 それも揺れの少ない最上級の馬車。

 もちろん十分素敵だし、文句を言うなんて贅沢なのだが、馬に乗ってしか見られない景色がある。それが見たかった。


「視界が開けて、遠くまで見渡せて、頭がクリアになる気がするんです」

「そういうものか」

「はい」

「では景色の良いところまで走ろう」


 背中にアルバートの体温を感じる。

 頬を撫でる風はしっとりと湿っていた。


 私たちは小高い丘にある東屋で馬を下りた。

 円形のドームのような屋根の下で、シーラに包んでもらった昼食を広げる。


「結婚しても、たまにはこうして出掛けよう」

「嬉しいです」

「久しぶりにリシリアの笑顔を見たな」

「すみません、心配かけてばかりで」

「謝ることではない。好きな女の心配をするのは男の特権だ」


 アルバートは柔らかな顔で私を見て手を重ねた。


「アルバートが困った時は、私に心配させてくださいね」


  いつも完璧で、困った様子なんて見ないけれど。

  でも弱音を見せてもらえる存在でありたい。


「そうか、困ったな」

「?」


「リシリア、早速困っているぞ」

「なんでしょうか」

「お前が可愛すぎて、さぁどうしようか」


 アルバートは重ねた手を引き寄せ、私をぎゅっと抱きしめた。

 その体温に心臓がトクンと鳴る。


「どうされたい?」


 何か企んだ目が私を覗き込む。


「ど、どうもこうも……」

「今日の褒美も取らせないとな。さぁ欲しいものを言え」


 アルバートは息がかかりそうな距離まで顔を寄せる。

 もう少しで唇が触れてしまいそう。


「意地悪」


 小さく唇を動かして言った。


「先月からお預けをくらっていたんだ。恥ずかしがるリシリアも、蕩けるリシリアも、全部見たい」

「っ!」

「ほら、何が欲しい?」


 アルバートは私の髪に触れるとさらりと耳にかけた。

 耳を掠める指に肩がぴくんと震える。

 焦れた吐息が口から漏れる。


「熱いな。耳まで真っ赤だぞ」

「ほし、い」

「ん?」

「アルバートが、ほしい」

「あぁいいぞ。奪ってみろ」


 にっと笑った顔は何もしてくれない。


「んっ」


 私はアルバートの首の後ろに腕を回して唇を重ねた。

 チュ。

 湿った音がやけに艶めかしく響く。


 ゆっくりと唇を離すと、顔を赤くしたアルバートがそこにいた。


「これはなかなか、悪くないものだな」

「もう……」


 恥ずかしさで思わず下を向いてしまう。


「そんな顔をされると加減するのが難しくなる」

「んんっ!!」


 アルバートは私の顎を掬うといつもより激しく私を求めた。

 

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