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悪役令嬢はパラ萌えされる  作者: ハルノ_haruno
3年生
142/160

アンジュと殿下の作戦会議

「あ、開けますから!」


 扉の向こうがしんとする。

 仕方ない、短期間のうちに二度も扉が破壊されただなんて外聞が悪すぎる。


「少しお待ちいただけますか」


 私はそっと扉に触れた。

 せめて心を落ち着けて、二人の前で笑えるくらいにはならないと。


「アンジュ、待てるか?」

「待てませんね」


 !?


「待てないそうだ。どうするリシリア」


 アルバートまで乗っからないでください。


「アンジュ、無理を言わないで」

「何かランカ先輩の無茶苦茶っぷりが移ったみたいですみません」

「すみませんって、本当に思ってる?」

「いえ、特に。どうします? 早くしないと殿下がドア壊しちゃいますよ」

「そうだ、壊してしまうぞ」


 何ですかその悪ノリは。


 私は観念して鍵に手を掛ける。

 無機質な金属音がカチャリと響いた。




「リシリア様っ」


 先に飛び込んできたのはアンジュだった。


「今日の護衛は不要と伝えたでしょう」


 私は顔を背けて言った。


「はい。だから護衛じゃありません。親友として心配しに来ました」

「心配されるようなことは何も――」

「お辛いのでしょう?」


 アンジュの腕がふわりと私を包んだ。


「何がかは知りません。だけどリシリア様は、いつも一人で抱え込んで悩むじゃないですか」

「そんな風に見える?」

「ほら、そうやって強がる。見えるも何も、そうでしょう」


 強がってるんじゃない。心配をかけたくないだけ。

 アンジュもアルバートも頑張っているのに、私が泣き言を言うわけにはいかない。


「リシリア、母上と何かあったか?」

「何も……。何も成果を得られませんでした」

「それでか」

「申し訳ございません。殿下に会わせる顔がありません」


「アンジュ、代われ」


 アンジュが私の身体を離し、アルバートがゆっくり歩を進める。 


「っ!」


 私はぎゅっと自分の身を抱いて背を向けた。


「私が嫌か」

「情けない自分が嫌なのです」

「そんなことはないのにな。すまない」


 アルバートの大きな腕が私を包む。

 背中にアルバートの鼓動を感じる。


「辛い思いをさせるが、どうしてもリシリアがいい。許せ」


 アルバートの腕の中で、私は小さく頷いた。








「つまりリシリア様は、王妃様とのお喋りが上手くいかなくて悩んでいる、と」


 私とアンジュはベッドに腰掛け、アルバートは向かい合うように椅子を置いて座った。


「まぁ、そうね」

「どんなことを話したんですか?」


 私は今日のために予習した内容を見せた。


「よく学んでいるな。母上は何が不満なのか」

「えぇっ、殿下本気で言ってます!? こんな話されたらめちゃくちゃ眠くなりますよ!」


 眠くなる?


「アンジュはどんな話がいいと思うの?」

「女子が集まったら話すことは一つじゃないですかぁ」


 アンジュは肘で私の脇腹をぐりぐりした。


「ふむ。前にラッタとナナが言っていたな。好きな男の話をすると言って騒いでいた」


 修学旅行の時ですね。

 確かに「お泊り会」について尋ねた時にそう言っていたような気がします。


「ザラ様相手にアルバートの話をせよというのですか?」


 それはちょっと、羞恥プレイがすぎますよ。


「してみたらどうだ。母上はよくリシリアとのことを聞きたがるぞ」

「私も聞きたーい! というか、それ聞きたくない人いないですよ!」

「言いたくない……しかもそれで失敗したらどうするの」


 恥ずかしすぎる。


「失敗したらその時に考えればいいじゃないですか! このままいったらどうせまた失敗しますよ?」

「一理あるな」

「アルバートは構わないのですか? その……恥ずかしいじゃないですか」

「リシリアが落ち込んだ顔をしているのと恥ずかしがった顔をしているのでは、後者の方が断然好ましいと思うぞ」

「照れてるリシリア様、可愛いですもんねっ」

「あぁ、可愛い」


 何なの二人とも。


「やってダメだったら励ましに来ますっ。ねっ、殿下」

「そうしよう」


 二人の笑顔にいつしか心が緩んでいく。


「アルバート、本当に良いのですね」

「構わん。二言はない」


 だったら私も腹を括ろう。


「ではアンジュ、今日はお泊り会をします。どんな話が盛り上がるのか、アンジュで検証しましょう」

「わぁっ! 本当ですか!? 嬉しい~!」


 アンジュは腕を絡めて喜んだ。


「どうせならラッタとナナも呼びましょう。サンプルは多い方がいいわ」

「じゃあ私、一度庶民棟に戻って呼んできますね。リシリア様はその間に殿下とごはんでも食べててください」


「私は蚊帳の外だな」


 アルバートは微笑んで言った。


「いえ、何をどこまで話していいかの摺り合わせをいたしましょう」

「食事をしながらでも?」


 アルバートは立ち上がって私に右手を差し出した。

 私は不意なエスコートにドキッとする。


「はい、是非」


 重ねた手は温かくて、とても心強いものだった。


「では皆さま、一度前室へ。リシリア様のご準備をさせていただきます」


 絶妙なタイミングでシーラが声を掛ける。

 そうだ、制服のままベッドに転がってしまったし、髪も乱れてお化粧も崩れている。


「よろしくね、シーラ」

「承知いたしました」


 シーラは安心したような柔らかな顔で言った。 



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