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悪役令嬢はパラ萌えされる  作者: ハルノ_haruno
2年生
127/160

エーコット第二王子 トマスティオ

「劇のリハーサルの帰りに寄ったんだ。明日は見に来てよ」

「そうね。リシリア、貴女も一緒にいらっしゃい」


 モモ様がこちらを向く。


「は、はい。1年生の演劇は是非観たいと思っておりましたので」

「リシリア? その人が?」


 トマスティオ殿下はつかつかと近寄ってきた。


 長い睫毛に色素の薄い肌。

 モモタナ様の弟だけあって、お人形のような可愛らしさがある。

 背は私より少し低いだろうか。


「はじめまして。ノックス公爵家のリシリアと申します。モモタナ様にはいつもお世話になっております」


 私はスカートを軽く持ち上げて礼をする。


「ふーん、可愛いね」


 トマスティオ殿下は人差し指で私の顎をくいっと持ち上げた。

 思い出した。傍若無人な隣国の王子の登場シーン。

 あのスチルそのままだ。


「恐れ入ります」


 私はその指から逃れるため一歩下がって頭を下げた。

 そして床を見ながら薄れかけていた前世の記憶を辿る。


 トマスティオの出現条件。

 アルバートの好感度が「友人」未満の状態で、2年生の学園祭を迎えること。


 2年生の学園祭ともなれば、ある程度パラメータが上がっているので自然にパラ萌えされ、デートしなくても「友人」くらいにはなる。

 だからある意味攻略難度の高いキャラなのだけど。


「リシリア、顔上げてよ。その綺麗な顔、もっと見たい」

「もったいないお言葉ですわ」


 まずいまずいまずい。

 これは久々にパラ萌えされているのではないでしょうか。


 アルバートと私が恋仲になったせいで、アルバートのアンジュに対する好感度は上がることがない。

 トマスティオが出てくるのは容易に想像できたはずなのに。


「ちょっとトマ。リシリアが困っているでしょう」

「えぇ? でもさ、リシリアって姉様のお気に入りだよね?」

「な、何を!」


 モモ様は狼狽した声を出した。


「俺がエーコットに迎えたら、姉様とリシリアは姉妹になれるんだけど。どう?」


 これは非常にまずい。


「トマスティオ殿下。私は王妃教育を受けている身ですので――」

「ちょうどいいじゃん。俺も王子だよ。お妃教育の手間が省ける」


 そういう問題ではありません。


「トマスティオ殿。あまり困らせないでやってくれ」


 アルバートが私とトマスティオの間に割って入った。

 私はようやく顔を上げる。


「アルバート殿。どちらかに肩入れなどなさってないでしょうね?」

「悪いが私は――」

「ねぇ、こういうのはどうです? エーコットの王女がこの国に嫁ぎ、リシリアがエーコットに嫁ぐ。我々の国の絆はうんと深まりますよ」


 その幼い少年は無邪気な声で言った。


「断る」

「これは単に妃選びの問題だけじゃないんですよ」

「何が言いたい」

「いやぁ。二国間の友好を築くことを断るのと同義じゃないかなぁ」

「口が過ぎるぞ」


 一瞬で空気が張り詰める。


「トマ、いい加減になさい」


 モモタナの強い声が響いた。

 王女の威厳が空気を震わせる。


「はいはい。じゃあまたね、リシリア、また今度デートしようね」

「待て、私が許さん」

「待つのはそっちだよ。王妃教育を受けている姉様の前で、そんなこと言うなんて俺が許さない」


 トマスティオはアルバートの懐に入ると、じっとアルバートの顔を見上げた。

 そして何も言わずに出て行った。


「待ちなさい、トマ!」


 そしてそれを追うようにモモタナが出て行った。




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