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悪役令嬢はパラ萌えされる  作者: ハルノ_haruno
2年生
123/160

sideアンジュ ランカ先輩とデート1

アンジュ視点です

「お、おはようございます」

「あぁ、おはよう」


 私が馬屋に着くと、ランカ先輩は馬を出しているところだった。

 ランカ先輩の馬は学園の所有馬の中でも一番大きい。

 黒いつやつやとした毛並みがランカ先輩の髪に少し似ている。 


 ふと目が合うと、思わず頬の温度が上がった。

 そんな私をよそに、クールな目元がじっと私を見た。


「いつもと雰囲気が違うな」

「お、おかしいでしょうか」


 昨日はほぼ強制的にリシリア様のお部屋に連れて行かれ、久しぶりに髪にも身体にもたっぷりのトリートメントを施された。

 そして夜はカモミールティーでリラックスさせられ、マッサージを受けている間に眠ってしまった。

 朝は朝で、ヘアセットにメイク、衣装チェックまでリシリア様がしてくださった。


 いつもは汗と泥まみれで美容もほどほどだけど、今日は少し背伸びしたオシャレ女子になれたと思ってたんですが。


「可愛いぞ」


 たった一言で胸がきゅうっと痛くなる。


「ありがとうございます」

「行くか」

「は、はい。私も馬を――」

「俺の前に乗ればいいだろう」


 そう言うとランカ先輩はひらりと馬に飛び乗った。


「え?」

「今日は訓練じゃないからな。ほら、手を」


 ランカ先輩のごつごつした手が馬上から差し出される。

 私と違って大きくて男の人って感じがする。


「じ、自分で乗れます」

「お前の身長では足りないだろう」

「……確かに」


 私はあぶみに足を掛け、ランカ先輩の手を握る。

 その腕がぐっと引き寄せられ、私はランカ先輩に抱き抱えられるようにして馬に跨った。


「わぁ、高い!」


 視界が上がる。

 いつも乗っている馬と数10センチ違うだけなのだろうが、それでも高さを感じる。


「怖いか?」

「まさか!」

「ははっ。では行くぞ」

「はい!」


 ランカ先輩がトンと足で馬の腹を蹴ると、黒い馬体は秋風の中を駆け出した。







 私たちは学園内の森の中を駆けて行く。

 背中に感じるランカ先輩の広い胸にドキドキしてしまう。


 ランカ先輩を意識し始めたのはいつからだったろう。

 1年生の頃は何とも思わなかった。

 面倒見の良いストイックな先輩って感じ。


 それにあの頃のランカ先輩は、多分リシリア様のことを見ていたと思う。

 2年生になって、騎士団専攻の合同実習が週に1度あって、確かそれからだ。

 いつの間にかランカ先輩を目で追うようになったのは。


「少し休むか」

「は、はい」


 突然馬が止まった。


 着いたのは小さな泉のほとりだった。

 ランカ先輩は馬を木に繋ぎ、水を飲ませた。

 私は手ごろな岩の上に座る。


「アンジュ、いつもの元気はどこへ置いてきた」

「それ、ランカ先輩のせいですから」

「俺の?」


 ランカ先輩は不思議そうな顔でこちらに来ると、迷わず私の隣に掛けた。


「昨日の、あ、あれは、一体どういう」


 思い出しただけでも恥ずかしさでおかしくなりそうだ。


「アンジュを娶るという話か」

「何で恥ずかしげもなく言っちゃうんですかぁ~」


 私は膝を抱えて小さくなった。


「何が恥ずかしい」

「むしろなぜ照れの欠片もないのか教えてくださいよ」


 私がもごもごと言うと、ランカ先輩は鼻で笑った。






「アンジュは2学期から中級にクラスが上がったそうだな」

「はい、おかげさまで」


 1学期の終わりに受けたテストで、騎士団の初級クラスから中級クラスに進級した。

 騎士団というのは思っていたよりも実力主義の世界のようで、平民出身の私でも努力さえすれば上へ行けると知った。


「進級試験の時に、外部の視察があったろう」

「ありましたね。偉いさんがずらっと並んで、しきりにメモとってました」

「その中に父がいてな」

「えぇっ!? そうなんですか!?」


 私は思わず顔を上げた。


「試験後に少し話したんだ。面白い女騎士がいると言っていた」

「女騎士……」

「お前のことだ」


 変な汗が背中をつたう。

 あの時は必死で、無我夢中だった。


「騎士団に女というだけでも珍しいのに、その太刀筋も身のこなしも洗練されていて、見どころがあったと」

「あ、ありがとうございます。じゃないや、恐縮ですって、言うんだっけ、こういう時」


 色々と頭がパニックだ。


「アンジュが平民だと知った父が、養子にとって育てようかと持ち掛けてきてな」

「よ、養子!? そんな貴族あるあるみたいなことして、幼気いたいけな平民を貴族社会に巻き込まないでくださいよ~」

「あぁ、だから言った。養子ではなく嫁に取ればいいと」


 !?


「なぜ!?」


 私はランカ先輩の方にぐるりと顔を向けた。


「俺はどの道誰かと結婚する。相手を好きであろうとなかろうと」

「貴族様って大変ですね」

「それならば強い女がいい」

「は?」


 それって口説き文句なの?

 何なの!?


「そして何より、俺が将来仕えるアルバート殿下とリシリア様に、絶対の忠誠を誓える女が妻であることが望みだ」


 その言葉に胸が焦がれる。

 ランカ先輩の誰よりも強い眼差しは、この強い意志にあるのだと知る。


「ランカ先輩は、リシリア様が王妃になると?」

「あぁ。あの方以外にいないだろう。お前もそう思っているんじゃないのか?」


 胸が熱くなる。


「もちろんです」


 リシリア様が大好き。ずっとお傍にいたい。

 そのために辛い訓練も頑張って来たし、自主練だって欠かしたことない。


「アンジュの強さはリシリア殿への気持ちの強さだ」

「間違いないです」

「そういうところに好感を持った」

「こ、好感……」


 その言葉はどう受け取れば良いの!?


「何か言いたそうだな。黙っているのはアンジュらしくないぞ」


 ランカ先輩は私の頭に手を置いた。

 体中の血液が沸騰しそうだ。

 私は立ち上がって大きな声で言った。


「ではいくつか質問よろしいですか!」

「ふっ、その調子だ」


 ランカ先輩も立ち上がる。

 まるで決闘寸前みたいな体勢になってしまった。

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