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悪役令嬢はパラ萌えされる  作者: ハルノ_haruno
2年生
112/160

テスト最終日!

 窓から真っ青な夏空を見上げて、試験が終わった解放感を噛みしめる。

 

「リシリア、貴女の発表素晴らしかったわ」

「モモ様こそ、スケールが大きくて面喰いました」


 私たちは絨毯の敷き詰められた廊下を軽い足取りで歩いた。


「そう言えば、モモ様は夏期講習どうなさるのですか?」

実家エーコットに帰るわよ」


 ん?

 しれっと「帰る」とおっしゃいましたか?


「ですが、卒業までは学園から出られぬ決まりだと――」

「でも帰るわ」

「学園側は何と?」

「あら、エーコットの王女を帰国させなかったら国際問題でしょう?」


 モモタナは意地悪気に笑った。

 まさか、脅したのでしょうか?


「いつお戻りに?」

「夏休みの最終日の夜」

「では夏休み中はずっといらっしゃらないのですね」

「えぇ。あちらでやることもあるし、私こう見えても忙しいのよ」


 別に暇人だと思っているわけではありませんが。


「ではお見送りには行かせてくださいね」

「ありがとう。馬車を待たせているからすぐに出るけれど」

「今日お発ちに!?」

「えぇ。時間を無駄にするのは愚か者のすることよ」


 フットワーク軽いですね。意外ですよ。


 ちょうど校舎を出たところに、確かにエーコットの紋様が描かれた馬車が停まっていた。


「ではここで失礼いたします。道中お気を付けて」 

「リシリアも元気で」


 1か月だけだというのに、何だか別れの挨拶のようです。


「お待ちしておりますね」

「帰ってこない方が都合がいいのではなくて?」

「それはそれです」

「言うわね」


 私はモモタナと握手を交わした。

 モモタナが使用人と共に馬車に乗り込むと、あっという間に馬車は出発してしまった。







「シーラ、戻りました」

「おかえりなさいませ」

「あら、どうしたの?」


 修学旅行に持って行った大きな皮のトランクが2つ、扉の横あたりに積んであった。


「後ほどご説明いたします。先にお召し替えとお食事を」

「そう?」


 私は制服からドレスに着替える。

 いつもの部屋用と違ってきちんとしたドレスだ。


「誰かと会うの?」

「はい。お食事に呼ばれております」


 アルバートだろうか。

 何だかシーラが忙しそうなので、口を挟むのも悪い気がした。


 髪もアップに結われ、お化粧もシンプルなものからきちんとしたものへ。

 何だか仰々しいですが、アルバートとデートならば納得です。


 しばらくするとノックの音がした。


「アルバート!」


 試験のせいか顔は少しやつれているような気もするが、それさえもセクシーでかっこよく見えるのだから恋とは恐ろしい。


「リシリア、久しいな」

「はい、とても」


 久々に見る恋人の顔。

 遠恋マジックとまでは言いませんが、十倍増しくらい輝いて見えて、眩しくて直視出来ません。


「また無理をしていないか?」

「アルバートのためなら無理をするのも幸せです」

「また可愛いことを言う」


 アルバートは柔らかな表情で私の頬を撫でる。

 久々のアルバートの体温に思わず目を細めてしまう。


「殿下、リシリア様。ご移動を」


 控えめな声でシーラが言った。

 そうですね、こんなところでいちゃつかなくてもいいですよね。


「あぁ、わかった」

「どちらに行かれるのですか?」

「星空ダイニングだ。まぁ、星は見えんがな」

「でも泉が見えますから、きっと涼しげでしょうね」


 そして何より初デートの場所だ。

 心が浮足立って、そわそわしてしまう。


「リシリア」


 アルバートが腕を差し出す。


「はい」


 私は手を絡める。


 ただのエスコートなのにとてもドキドキします。






 星空ダイニングは貸し切りになっているようで、テーブルはどこも空だった。

 私たちはその最奥、スイート個室に通される。


 個室で食事するのなら、わざわざ店ごと貸し切りにしなくてもいいのに。

 そう思って個室の扉をくぐったが、すぐに私の考えは撤回することになる。


「お疲れ様。アルバート、リアちゃん」

「ザ、ザラ様!?」

「母上、お久しゅうございます」


 窓にもたれるようにして立っていたのは国王妃殿下だった。



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