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悪役令嬢はパラ萌えされる  作者: ハルノ_haruno
2年生
103/160

1日目の夜

「リシリア様ぁ~見てください!」


 夕食は浜辺でBBQをした。

 庶民棟の皆はわいわい立って食べていた。

 それに対して貴族出身者は困惑するばかり。


 でもそれも次第に慣れて、日が落ちる頃には誰もがお祭り気分を楽しんでいた。


「夜の海って少し怖いわね。飲みこまれそう」

「それは海ですか? 気持ちじゃなくて?」


 アンジュは的確なことを言う。


 アルバートは夕食もそこそこに、モモタナ様を連れてどこかへ行ってしまった。

 真っ暗な海を見ていると、ドロドロの感情に飲みこまれそうになる。


 私が黙っていると、アンジュは小さなネックレスを首にかけてくれた。


「夜光貝です。お昼に見つけたのでネックレスにしてみました」

「不思議、光ってる」


 夜光貝は淡いブルーの光を放っていた。

 滲むような、じんわりとした光だった。


「差し上げます。リシリア様の元気が出ますように」

「ありがとう」

「嫌なら止めればよかったんですよ」

「いいえ。私が言い出したことなの」

「リシリア様が?」

「モモタナ様はアルバートのために毎日頑張ってらっしゃるのに、見向きもされないだなんて報われないでしょう」

「はぁ?」


 アンジュは口をへの字に曲げた。


「ア、アンジュ!?」

「リシリア様、余計なお世話ですそれ」

「で、でも」

「その上壮大な勘違いをしていらっしゃる」

「勘違い?」

「まぁモモタナ様も悪いですけどね」


 アンジュは呆れたような声で言った。


「私、何かおかしなことをした?」

「みんなバカですね」

「!?」


 バカ!?

 すごいパワーワードではないですか。


「勘違いされるようなことをしたモモタナ様も、殿下を送り出すリシリア様も、リシリア様の言うことを聞いて行っちゃう殿下も、みーんなバカですよ」


 ふ、不敬ですよ。

 私はともかく、王太子殿下と隣国の王女にバカなどと。


「ま、いいですけどね! そのおかげで私、リシリア様ひとり占めですからっ」


 アンジュは私の腕に絡みついてきた。

 バカという言葉が衝撃的過ぎて思考停止中なのですが。




「リシリア!」

「あっ、ノアくんの声」


 ノアは砂に足をとられながら、歩きにくそうにしていた。


「こんばんは、ノア」

「あのさ、さっき向こうで殿下を見たんだけど」


 モモタナ様と一緒だったところを見たんだろう。

 夜風は随分涼しいのに、額に汗を浮かべて私を探し回ったのかもしれない。


「モモタナ様もいらした?」

「いたよ。リシリアはそれでいいの?」

「私はアルバートを信じてるから」


 ノアは何かを言いかけて、それをぐっと飲みこんだ。

 そして一言だけ、私を真っ直ぐに見つめて言った。


「泣かされてない?」


 私は微笑む。


「大丈夫よ」


 ノアはぎゅっと拳を握った。


「わかった。リシリアが大丈夫なら、それでいい」

「心配してくれてありがとう」


 きっと言いたいことは他にもあるんだろう。

 でもノアから出てきた言葉は私が考えるよりもずっと大人だった。 


「じゃあ行くよ。アンジュさん、邪魔してごめん」

「いえいえ!」

「何か辛いことがあったら言って」

「ノア君。今は私がいるので!」

「そっか、じゃあアンジュさんに任せよう」

「はい! 任されました!」


 アンジュは騎士の敬礼をする。

 夜はあっという間に更けてゆく。




「リシリア様、そろそろお部屋に」


 シーラが迎えにきたのはまだ宴が盛り上がっている最中だった。


「アンジュ、ネックレスをありがとう。今日はもう休むわ」

「私はもう少し遊んできます」

「えぇ、楽しんで」

「リシリア様、おやすみなさい」

「おやすみ」


 アンジュは一礼すると、焚火の方へ行ってしまった。

 焚火を囲むように人の輪ができ、思い思いに語り合っている。


 私は焚火に背を向けると、シーラの案内で部屋に向かった。


ノアが大人になっている!

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