#15 学園生活初日、午後編 後編
~続き~
「さぁ、私の本気と貴方の力・・・。どちらが上かしらね!!!」
激しい言葉とは反対に、周囲に冷気が立ち込める。
ユキが、その冷たさを漂わせているのだ。
普通ではあり得ない。そう思わせるほどのプレッシャーがかかる。
周囲の空気は、ユキの魔力の余波で冷却されていく。
プレッシャーと冷気、相乗効果でより冷たさを際立たせる。
タクは、身震いをする。彼はこう思う。
(どんな魔力だったら空気にまで影響を与えるんだ・・・。分身?もフル活用する必要がありそうだ・・・。)
そうして彼は、分身全員に、一ヶ所に集まって炎属性上位以上の魔法を
作りまくるように念話を飛ばす。
ユキが、冷たく魔法を唱える。
「【氷吹雪】・・・。」
名前が短いが、上級魔法である。5回の発音で、範囲的に天候を変えるある意味
使い勝手のいい技だと本には書かれていた。
しかし、タクも負けてはいない。彼も分身から送られてくる魔法を小出しにしていく。
「【身纏火炎】!!」
タクは、自分の身に炎を纏う。吹雪で怖いのは、体温低下と視界狭窄。つまりは、
それを防ぐわけだ。
さらに、タクはそのままユキに殴りかかる。一番手加減できる拳で。
ユキも、それに抵抗する。
「【氷結城壁】」
タクの拳は、炎を纏っているのにも関わらず、氷の城壁に阻まれる。
「・・・分厚すぎませんかねぇ・・・。この氷・・・。」
「貴方、さっき手加減しようとしたでしょう?怪我しても、致命傷でも、絶対無傷になる結界があるし、蘇生魔法使える人も居るんだから、手加減なんて要らないわ。
本気を・・・見せなさい?」
「・・・早く言って欲しかったなぁ。それ・・・。」
「知らないなんて思ってなかったからね。まぁ、それで本気を出せるなら、
見せてちょうだい?」
「ええ・・・、お望み通りね・・・。段階は踏みますが。」
「へぇ?貴方もまだ本気じゃないのね。なら、良いかしら?・・・学園長、
結界の強度を。」
「ええ、もう上げてあります。お好きに。」
「流石ね。学園長。じゃあ、やらせてもらうわ?」
そう言ったユキの中に大きな魔力が渦巻く。
「氷属性召喚魔法【召喚:フルー・ジ・アイス】」
ユキがそう唱えると、おそらく精霊であろう女性?が出てきた。
「氷を自在に操れるの。上位精霊になるのかしら?貴方の攻撃は精霊には効かないわ。」
「まあ、問題ないね。炎属性召喚魔法【召喚:イフリート】」
タクは、いわずと知れたイフリートを召喚する。この世界では上位精霊。勇ましい男のイメージ?
二人の召喚精霊がぶつかる。特に会話もなく・・・氷が生み出され、溶かされ・・・。
相性もあって、イフリートがすんなり勝つ。
「まぁ、負けますわね・・・。炎 対 氷ですもの・・・。」
ユキはそう言いつつ、次の魔法を準備する。
タクは、イフリートを戻す。また、二人の戦いになる。
「これを、最後にしますわ。【永久凍土】」
あたりが凍りつく。息をすると痛い。そんなレベルだ。
あらゆる生物も凍りつくような、そんな氷の棺が出来上がる。
タクもその中に閉じ込められる。空気の水蒸気の凍結とユキの魔力氷による拘束からは逃れられない。
「そこから出るには、私が解除するか、死んでから・・・いえ、何も言わないわ。
出られるものなら出てみなさい?」
タクは、氷の中で、どの魔法なら全てを焼き尽くす・・・、
昇華させられるか考えていた。
(永久凍土ってロシアの北部の・・・あれか?暖房の熱で溶けるやつ・・・(苦笑)。
こっちの世界では相当硬い氷みたいだな・・・。まぁ、向こうでずっと考えてた
魔法があるし・・・それでいいや。)
タクは無理矢理口を動かして唱える。
「【地獄の業火】」
氷の中心から、燃え盛る炎が噴き出す。
昇華とまではいかないものの、爆発にも等しいその炎は凍土を砕くには十分すぎた。
「・・・私の・・・【永久凍土】すら意味ないのね・・・。」
ユキは、少し悲しそうな目をしたが、同時に希望を見た目をした。
「最後の魔法だったらしいけど、決着は?」
学園長が、勝敗を出した。
「勝者タク!!これにて、タクは学園首席を名乗ることを許します。」
「うん。えっ?」
「学園首席に勝ったんですから当然でしょう?」
「うん、いや、おかしいですよね?たまたまとかは?」
「あれだけ、圧倒的でたまたまとか嫌味ですか?」
「・・・すみません。」
そうして、タクは入学初日から、学園首席を塗り替えたのです。
その会話の後、ユキに話しかけられる。
「まさか、負けてしまうとは、思わなかったわ・・・。」
「あはは、やっぱり勝てると思ってたんですか・・・(苦笑)」
「・・・っ、と、当然よ!!一応、学園首席だったのよ?厳しさを教えようと
思っていたのよ!!」
「あはは・・・。」
「あの、戦いの前に言った約束覚えてる?」
「ああ・・・負けたら僕のものになるとか、なんとか・・・。」
「あ、あれだけど・・・。」
「うん、嫌だったら、ならなくていいですよ?うん。無理矢理はダメだよね。」
「そ、そうでは無くて・・・。」
「え・・・。」
「ぜひ、貴方のものに・・・してくれませんか?」
(あれ、高圧的だったのが、照れに変わってる・・・。うん、これガチのやつか。)
「ああ、うん。ユキさんが望むなら・・・良いですよ。」
「あ、ありがとう。・・・。」
(うん、黙らないで・・・。困るから・・・(苦笑))
「え、ええと・・・。両親は?」
「はっ、そうだったわ。うちにある、お母様とお父様の作った溶けない氷を溶かせるものが現れたら、娘をやるから。と言ってたわ。今度、行きましょう!!」
「あ、はい。」
(外に出たがってたのかな?自由になりたい、みたいな?その氷見てみたいな・・・。)
「明日の・・・帰りとかどうよ?」
「ああ、はい。良いですよ。」
「ずいぶんすんなりね・・・。まあ、いいわ。約束したからね!!またね!!」
「はい。お疲れ様でした~。」
そうして、なんやかんやあって、タクの学園初日が終わった。
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タクの初日の成果
・ルナと将来を約束した。
・ユキともおそらく将来を約束した。
・学園首席になってしまった。
・戦いのその後を知ってる男子に恨まれそう。←new!!
・他の女子からなんか人気っぽい?←new!!
・学園長がニヤニヤしてたから嫌な予感がする。←new!!
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帰り道、タクはルナと帰ることになった。
「歩いて帰るか、一瞬で帰るか、どっちがいい?」
「今日は疲れたから、すぐ帰りたいな・・・。でも、すぐって・・・。」
「ん、分かった。手を繋ごうか(笑)」
「えっ?こ・・・こう?(テレ)」
「ありがと(笑)。・・・【転移】」
二人はその場から消える。
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~屋敷~
二人は、屋敷の前に出てくる。
「何があ・・・って、ええええええええええええ!?」
「うん、僕の家ね。着いたよ。」
「着いたよって、えっ?」
「転移魔法だよ。」
「あ、遠くに学園が見える。ホントに転移したんだ・・・。」
「これからは、送ったりもできるから、何でも言ってね。で、今日からここがルナと僕の家ね。」
「豪邸じゃん・・・。あ、貴族だったっけ。」
「そうだよ(苦笑)。さあ、入ろうか。」
「う、うん・・・。」
二人は屋敷に入る。
「「「「お帰りなさいませ。ご主人様。」」」」
「ああ、ただいま。で、増えてないか??」
「はい、タク様、私たちの仲間です。」
「・・・そうか、また、聞かせてもらう。今日は新たな、同居人を連れてきた。婚約者のルナだ。」
「あ、え、えっと。ルナです。よ、よろしくお願いします?」
「・・・ふっ。そんなにかしこまらなくていいよ。執事とメイドだ。」
「そ、そうなんですね。」
「よくよく、考えたら君のことをほとんど知らない。今日は、一緒に話そう。」
「あ、はい。」
「晩の用意と風呂の用意を。風呂に少し細工をしといたから、誰でも出来る。頼んだ。」
「承知しました。あと、伝えるのが遅くなり、申し訳ないのですが、ギルドカードの
更新に。とギルドの方がいらっしゃり、伝えておいてくれ、と残していきました。」
「そうか、分かった。行ってくる。ルナ、ちょっと、ギルドまで行くから、待ってて。」
「は、はい。」
「うちのメイド達は優秀だ。話し相手にでもなってもらうよ。よろしく。」
「承りました。」
「じゃあ。」
タクは、慣れたお陰か、もう何も言わずに跳べるようになった。
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~ギルド~
「来てくださったんですね。」
「カード更新ですよね。お願いします。」
「はい!!」
少しして、カードが返ってくる。
「すみません、強さとかだとS以上なんですけど、人についての依頼が達成できていないため、Bです。盗賊狩りみたいなのをクリアしてくれば、Sまで、上がります。
それまで、Bでお願いします。すみません。」
「良いよ、そんなの(笑)。気にしないで。」
「ありがとうございます。また、お願いします。」
「ん、了解。じゃあね。」
タクは、また屋敷に戻る。
「ただいま~。」
「お帰りなさいませ。」
「お帰り~(笑)」
「・・・?」
「どうしたの?タク?」
「いや、さっきとあまりに雰囲気が違って、和んでたから・・・。」
「自分達の話とかを聞かせてもらっててね(笑)。」
「そっか、良かったね。まぁ、仲良くしてね(笑)」
「もちろんです!!ふふっ。」
(大丈夫そうだな(笑)良かった。)
「お風呂わいてますよ。タク様。」
「ありがとう、入ってくる。シルバス、手が開いてるなら、付き合ってくれ。」
「了解でございます。」
~風呂~
「ここの屋敷で執事をするのは、どうだ?」
「どう・・・とは?」
「ん~、不便、とか、仕事量多すぎるとか、いろいろ?」
「聞くまでもございませんね。最高でございます。」
「そうか。なら、良かった。問題があれば、すぐ言ってくれ。」
「ありがとうございます。」
「そういえば、魔法は・・・何か使えるのか?」
「無属性を少々。」
「そうか・・・。なら、問題ないな。」
「と、いいますと?」
「便利な生活魔法なら、無属性にかたまっているからな。」
「そうですね。今度、ご教授お願いします。」
「ああ、任せろ。」
「ありがとうございます。」
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~タクの部屋~
夕食と、風呂を終えて、寝る準備が出来たタクとルナは、タクの部屋で話をする。
タクはルナを見て、改めて思う。
金と黄色の合わさった、綺麗な金髪に、金色?の澄んだ目。狐っぽい?耳。
小さくはない胸、美しいくびれ。尻尾ももふもふ・・・。
(うん、普通に、めっちゃ可愛いよ?うん。)
「えっとね、いくつか質問させてね?」
「もちろんです(笑)」
「・・・正確な種族は?」
「ん~・・・金狐族?かな?」
「・・・(唖然)」
(ヤバい種族来たよ~!!成長したら強いやつやん・・・。)
「あれ、どうしたの?」
「それ、周りの人に言った?」
「いえ、言ってません。だって、奴隷に・・・(苦笑)。狐って言ってます。」
「うん、良かったわ。とりあえず、分かった。次、スリーサイズは?」
「あ、えっ?」
「うん、ごめん、流石に冗談。得意なスキルは?」
「あ、えっと、知りたかったら・「いいから、スキルは?」」
「・・・えっと、炎と体術と剣だよ。」
「うん、戦った通りだね。次、故郷はどこ?」
「大陸が違います。」
「うん、聞くの止めるわ。いつ、いけばいいんだ・・・」
「ああ、両親は、今この大陸の、別の国で生活してますよ。」
「うん、分かった。今度、行こう。」
「行ってくれるんだね。良かった(笑)」
「ん~あとはいいかな。よし、寝よう。」
「・・・スリーサイズは聞かなくて・・・「いいから!!冗談!!(苦笑)」」
「はーい。」
「まったく・・・。」
「ねぇ、タク~、こっち向いて~。」
「ん?」
チュッ
「!?」
「・・・」(赤面)
「・・・」
「これで、あのユキって子とはキスまでなら良いからね!!おやすみ!!」
そして、ルナは、自分の部屋まで戻っていった。
その日は寝るまで時間がめちゃめちゃかかった。
召喚した、氷精霊の名前はオリジナルです。The iceとfluentから、自在に氷を操るを連想した名前です。
次回は、機械たちがメインのお話です。多分。メイドが増えたお話とか。
次々回では、ユキのお宅にお邪魔します(笑)
妻キャラはいろんなところで、ちょこちょこ増やしていきますよ?




