想いだし笑い。
くしゃみをした。
誰かが僕の悪口を言ったに違いない。
そういうことってあるんだと思う。
ある美術館のなかを歩き回りながら、
僕は今度は思いだし笑いをした。
思いだし笑いにも理由があるのだろうか。
思い出したのはある人と行った美術館。
覚えているのはよく笑う彼女の姿。
彼女はよく笑う人だった。
彼女は終始笑いっぱなしだった。
ときおり「えっ?何で私だけ笑ってるの?」
と可笑しそうにまた笑っていた。
笑わすことが目的の企画展だったとはいえ、
彼女は一つ一つのブースで丁寧に一つ一つ笑っていった。
彼女の姿を見た主催者は翌日から「笑いすぎ注意」という注意書きを出すことにした、という噂まで聞いた。
僕は本来あまり笑う方じゃないのだが、
いつのまにか彼女につられて笑っていた。
最後の方は展示が面白くて笑ったのではなくて彼女が笑う姿が可笑しくて笑っていた。
ふいにこみ上げる思い出し笑い。
思い出し笑いはどうして起こるのか。
それはきっと彼女が今、笑っているせいだ。
きっとつられて笑ってしまったのだ。
そういうことってあるんだと思う。




