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ポーランドオペレーション5

事実の冷酷さに体が震え、マクナルディは言葉が出なかった。彼は端末を

ポケットにしまうと、今後の方針について考えた。


ポーランド国内のSIS臨時基地に連絡を入れようにも、

先程の待ち伏せの件を考えれば、

地元当局があらゆる

通信情報を盗聴しているはずで、

おそらく作戦用の暗号の意味も把握されている。


英国大使館に直行するのも手だが、秘密保全のため、大使館は作戦の詳細を知らされていない。


それに身分証も偽造したものだから、話をあちらにしても、信じないだろう。ポーランド、イギリス当局の探査網からも外れている、安全な場所となると、

マクナルディには

1つしか思いつかない。


正道とは言えないが、彼にはこの道しか残されていないと思わざるを得なかった。


イギリス人は路地から外の道路をうかがい、警察などの車両が通っていないのを確認する慎重に足を踏み出し、目的地に向けて走り出した。



港湾エリアの入口付近の検問所の混乱は一応の終息をみせていた。

現場検証を行う警察の鑑識班や刑事たちが、慌ただしく行き交い、情報の交換、吟味が行動の中心になっていた。


その中でポーランド保安情報部将校のヴィエス ヴォイヒクは仮設指揮所のテーブルの前に数点の写真、地図表に目を配りながら、部下のソロスキの報告に耳を傾けていた。


「1キロ半先の廃材置き場で例のトラックと3人の遺体が発見されております。」

ソロスキはメモ帳をちらりと見て、報告を再開した。


「捜索中の犯人たちと思われ、確認を急いでいます。遺体の損傷はひどく、IDなどは未発見で、、、」。


「もういい」。


ヴォイヒクは手で部下の言葉を制止し、ゆっくりと腕を組んで目を閉じた。


「話のつづきを当てようか?、あの機密情報も見当たらずさらには遺体の数が合わない、つまり生存者がいる。そうではないか?」。


ソロスキは口をつぐみ、視線を一瞬、地面に落とした。「はい、申し訳ありません、その通りです。報告は以上、指示を乞います。」


ヴォイヒクはテーブル付近で静かにコーヒーを飲んでいる、長身の男に目をやったあと、ソロスキに命令した。


「トラックの発見場所を徹底して、調査しろ。国内のあらゆる通信を傍受させて、市街のめぼしい所に捜査員を配置、情報を集めろ。」


ソロスキはうなずくと、きびきびと立ち去った。その一部始終を見ていた、長身の男はコーヒーのカップをテーブルに置き、言った。


「忠実な者が配下で、うらやましいね、ヴォイヒク少佐、、、」。


冷厳で高慢さが窺える声色に、ヴォイヒクは内心でこのロシアの諜報員、ニコライ キルレンコを罵った。


しかし、表情にその様子を出すことは避けた。元々、英国の工作の情報をポーランド側にもたらしたのは、キルレンコ本人であり、彼は旧KGBの後継組織、FSBの大佐だった。


FSBは特殊部隊を有し、あらゆる、秘密作戦に関与する。あのゴロディエフの行動はFSBの手で何年も前から監視され、


英国の作戦内容もロシア側の資産アセットで、SISに潜伏しているスパイの手で筒抜けのはずだった。キルレンコにとって、今はベストの状況といえず、本来なら港湾でのトラブルはあってはならない事だった。


さらにゆゆしき事に機密データのSDカードは行方が分からない。だが、キルレンコにとっては訓練を受けた情報員としての分析で、生き残った、

英国工作員があの機密を所持して、逃走しているという推理に行き着くのはたやすかった。


彼はヴォイヒクに向かい、口を開いた。「もうすぐ M から英国側の情報が流されてくる頃だ、奴からの知らせがあれば、逃亡者を拘束するのに、そう長くかからないだろう。」


ヴォイヒクは黙って聞いていた。Mというのは暗号名で、SISに浸透しているFSBの内通者だった。キルレンコはその者の管理、運用を機関の上層部から任されていた。


英情報部のMといえば、007の上司であるのをこの男はロシアのために英国人が働いているという事実を皮肉ってこんなコードネームをつけたのだった。


「私は大使館に戻る、ここのことは任せるよ、少佐。」キルレンコはそう言い残すと、仮設指揮所を出て、

車に乗り込んだ。ヴォイヒクはその様子を煮えたぎる怒りを抑えながら、見ている内に車は走り去った。


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