ポーランドオペレーション
ロシア人がそう言うのを、廃ビルのマクナル
ディ達にも分かった。ケスラーの上着の裏側に装着されている超小型盗聴器からのもので
、マクナルディ達の高性能通信機から、明瞭にロシア人が英語で話しているのが聞こえる
。そのロシアの友人の白髪のスラブ的容貌は
年に似合わず少し若く見え、瞳の周辺はひどく端正だった。マクナルディはヘッドフォンに先ほどから神経を使い、深く聞き入っている。「プレゼントをもらおうか、大佐?」。ケスラー要員はそう言うと、相手の男は小さなビニール袋を新聞から取り出し、ケスラーに手渡した。彼は携帯端末を手にし、ビニールの中の黒っぽい機械部品を出すと、端末のソケットに差し込んだ。端末を操作し、画面に
文章や画像が表示され情報員はそれに満足すると、口笛を吹いた。それが合図でビルの彼の同僚たちにもブツが本物だと分かった。ケスラーは端末から部品、SDカードを外すと
、ビニールに戻した。「OKだ、後はアンタを港まで護送するだけだ。方法は前に教えた通り、、、それも現役時代にそちらもよくやったろ?」イコンは悲しそうに一人うなずいた。英国人はポケットから紙片を出し、目の前の男に手渡した。「それに書かれている番地に時刻通りに俺と共に行く。回収班と車がくる
事になってる」ロシア人は内容を瞬時暗記すると、ライターで紙を燃やした。紙片が燃え切ったのを確認するとマクナルディは手元のマイクに囁いた。「ユニット3、時間だ、予定通り例のポイントで合流だ、以上」(了解)ケスラーは言うと目前のイコンに視線を移した。「俺たちが自由に招待してやる、行こうか、、、イワン」。ロシア人は懐かしく、切ない感情や若干の興奮が蘇るのがよく理解できた。アフガニスタン、緊張緩和、冷戦に充満した対立感情や駆け引きが全て夢で、自分が存在していたのかも怪しい気分になった。列車の汽笛が聞こえだして、元KGB大佐、ユーリィ ゴロディエフは夢想を消し払い、英国人工作員と共に駅を去っていった。