ポーランドオペレーション
ポーランドの廃棄された、5階建てのビルの一室で英国情報部の要員、ブライアン・マクナルディは同僚のバーネットと外を見ていた、午後8時を過ぎたところで、外は目前にある公共鉄道の駅の光りで、少し明るかった。二人がいる廃ビルからは、高架橋の駅のホームがよく見え、2,3人の列車を待つ、人々がいるだけだった。マクナルディ達がここにいるのは、情報部の準軍事作戦のためで、彼らは、その専門部門のSOFC課の所属だった。多くの要員が軍の特殊作戦を経験し、イラクやアフガニスタンでの実戦を生き残った。つまり、彼らは、こういう不正規任務のプロで、功績の大部分は、世間に知られはせず、政府の暗部であると、手ひどい批判を受けることもあるが、真実を知る者達からは、プロ意識の強い、勇士だとの評判が高かった。マクナルディは10分ぐらい前から、暗視能力付きの双眼鏡で駅の周辺を観察していた。ビルから駅のホームまで約60メートル、そのホームにもう一人のSOFC要員、ケスラーが、待機し、目標の人物の到着を待っていた。作戦前の説明では目標は男で、ロシア人、亡命希望者だった。英国情報機関がロシア人を相手にする場合、多くが治安、軍事機関の関係者というところだが、冷戦の状況下で繰り広げられた、旧KGBとの諜報戦が終了して長いのに、こんな形の戦争が未だに存在するのが、マクナルディには分からなかった。やれやれ、オレは政治上のことが嫌いなのに、、、。彼は得体のしれない、不安が任務前からあった。ただでさえ、ロシア問題が続発する中で、これ以上、政治的な軋轢を起こそうとして、どうするのか?、そもそもこの任務はデリケートな外交政策だから、そういうもので、自分がどう考えても結論など出ないだろう。「おい、くるぞ、目標、イコンだ。」マクナルディはロシア人の事を暗号名で言った。バーネットも急いで、双眼鏡を手に前方を見た。駅の地下の階段から男が一人、ホームにいる、ケスラーに向かって、右手を挙げた。尾行はなく、自分は一人という、合図だ。彼は右手に新聞を持ち、慎重に歩調を乱さず、ホームのSOFC要員に接近し、呟いた。「神の祝福を、、、」