イタコマシン
「これでよしっと。」
張り詰めるような沈黙を破り、博士は体を起こす。その表情には安堵の色が見えた。
「ついに出来たのですね!」
僕も思わず声を上擦らせる。
博士の研究は常人のそれとは全く異なるものであった。"死後の世界"すなわち、あの世の存在という非科学的な事象を科学で証明することに日夜、挑戦してきたのだ。思えばこの研究を初めてもう4年半もの月日が過ぎようとしていた。それ程までに博士はこの分野に尽力してきたのだ。そして、長年の努力がついに、実を結ぼうとしているのだ。
「これを使って霊との交信ができるようになれば私は多くの名声が得られるぞ!ついでに、先代の偉人の知識や経験をご教授願うのだ!すると、私はもっとすごいものを作る!すぐに富も名声も得られる訳だ!」
「博士ならきっと出来ます!応援します!」
僕も博士にエールを送る。博士は達成感と開放感からか、とても上機嫌。博士の嬉しそうな表情は僕まで幸せにする。改めて僕は尋ねてみる。
「このマシンの名前なんて付けてはどうでしょう?」
「マシンの名前をつけないとなぁ。どうしたものか...。ここは安直に"イタコマシン"とでも名付けようか。素晴らしい発明は名前がどうであっても素晴らしいものだ。」
博士はそんなことを言いながら高らかに笑い飛ばした。暫くして、博士はマシンの端の方へ歩いていった。そして、赤くて大きなボタンの前に立つ。
大きく、1回、深呼吸。
「それでは早速、スイッチを入れてみるとしよう。」
僕も思わず息を呑む。未知との遭遇が、人類の夢。
死者と繋がる事が、今ここで実現するのだ!
5
4
3
2
1
0!!
広くて清潔な研究所、白衣を着た博士が1人。彼の震えた指はすうっと、僕を指す__
「......誰?」