2.楽しもう!この現実(ユメ) を!
しかし、これはどういうことだろう?生まれてこの方17年、秀でてもないし劣等生せいでもない65点の毎日を誇ってきた僕にとってこういうイベントは割に合わなさすぎる。
緊張というよりかは困惑で足が止まった。
異世界に召喚ってなんだ。夢だろ。夢だ、絶対。
ためしに頬をつねってみる。
痛い。きちんと痛い。ヒリヒリする。
痛いということは夢じゃないのか?
いや、そういうわけでもないか。妙に感覚がリアルな夢。
人生で一回くらいはありそう。
いや、だがしかしでも、これがもし本当に現実だったとしたら……。
扉を開けてからもう十数秒もたっているのに声は止んでない。
部屋のどっかにある巨大なスピーカーから僕を崇める声だけをリピートしまくってるんじゃないのかって感じるほどだ。
「どうなさいましたか?勇者様」
どうなさいましたもこうなさいましたも……。
「お手伝いさん……」
「はい?」
「これって夢だったりしませんよね?」
「何を言ってるのでしょうか?いささか私には理解が……」
「ははは、冗談です。行きましょうか」
お手伝いさんがそういうなら仕方ない。
この、勇者とか救世主とか言う変な呼び名も、ガチガチに鎧をまとった男の人や気品あふれるドレスを着たお手伝いさんが僕にひざまづいているヘンテコな状況も、全部そういうことなのだろう。
昔から特別な何かになりたがってたんだし……。
非日常的な何かに逃避したいって考えてたわけだし……。
不意に訪れる特大級ぼた餅を受け入れることも人生では大切だって誰かが言っていた気がする。
僕の心が弾み弾んで、玉座への足取りも踊るようになっていく。
ぐだぐだ考えるのはもうやめだ。楽しもう!この現実を!
そう開き直った頃には、僕は走り出してこう言っていた。
「王様、女王様!僕が、いや俺が!この世界を救う勇者です!」
小出しになってすみません。次回、簡単な世界観の説明に入ると思います。