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最弱の代行者  作者: ひとみ
4/24

ダリアと代行者

さて、晴天である。


今日は残りの代行者達に会いに行こうと思う。マックロネコ曰く、別の場所に滞在しているそうだ。


驚く事に、ここ付近にある廃城に居るそうだ。この近くに廃病院はあるが、廃城なんて無かった気がする。しかし、そんな場所に寝泊まりしてるなんて可哀想だ。


そんな事を伝えたら、どうやら彼らは人間とは全く違う感覚らしく、平気との事。そういや人間じゃないんだよな、あいつら。


驚いたが、メイドさんは自動人形らしい。血も出れば内臓もあり、構造上人間と変わらないが、首が取れたり、関節部分で取り外しが出来るそうだ。ちょっとしたビックリ人間だ。


エネルギー効率が良いので栄養は少しでいいし睡眠も必要ない、と本人談。


あと、俺が寝てる間は廊下でずっと突っ立ってたんだってさ。……でもなんか申し訳なくて気が引けるな。



で、話は変わるが、平日は7時くらいに起きて、8時くらいに家を出て学校に通学している。


俺の身体は休日には10時過ぎくらいに起きるように出来ているのだが、7時に布団を引き剥がされて叩き起こされた。


「朝でございます、ダリア様」


メイドさんの金髪が布団で起こった風に吹かれ、シャランと浮き上がる。


「待って……まだ7時じゃん。あと3時間は寝させて……」


「ダリア様がその様な事では他の者に示しがつきません。生活習慣を乱されますと、お身体に関わります」


こんな時にメイドっぷりを発揮しなくても……。


欠伸を一つかき、ベッドから降りる。と、目の前には朝食が用意されていた。


「あと、あの……謝罪したい事がございます」


なんだよ。改まって。


「2日前からダリア様のご奉仕をさせて頂いていますが、その……緊張と喜びが高揚し、任が疎かに……」


掠れた声のメイドさんが弱々しく膝をつく。な、なんだよ。怖いな。何をしたんだよメイドさん。


「何したの?」


「は、はい……。栄養バランスを考えていませんでした……」


「え?」


そんな事で凹み過ぎだよメイドさん。着地点が予想外過ぎる。


「いいよ。腹に入ればなんでも」


「ありがとうございます」



顔を洗い終え朝食に手をつけると、低い声が耳に届いた。


「ダリア様、お食事中に失礼する」


テレビの影からマックロネコが赤い眼を光らせて出て来た。


「10時に使いの者が来る。それまでゆっくりしていてくれ」


「分かった」と俺は二つ返事。



 ☆



現在10時手前。そろそろ使いの者が来る時間だ。


夏休みの刺客である数学の宿題を適当に済ました俺は、ベッドの上で今日の朝刊の4コマ欄を眺めている。メイドさんが気まぐれに買ってきた物だ。


メイドさんは部屋の中央に置かれた長方形のガラステーブルの側で、瞑想でもしているかのように正座をしている。その膝の上には、眠りこけるマックロネコ。


最初はメイドさんが突っ立って居たのだが、気が散るとやんわり伝えたら、速攻で座ってくれた。


朝刊を閉じようとしたその時、ある記事が視界に入った。



『赤く染まった月!! 大きさが3倍に!!?』


『2日前の7月25日の夜、多くの都民が確認したこの月は災厄が起こる前触れか!!?』



朝刊一面飾る赤い月の話題。ズラリと並んだの記事。見に覚えのある内容に、冷や汗が流れる俺。


……い、いや。これアレだよ。人違いだよ。


だってほら、専門家的なハゲたおっさんが、吸血鬼が現れる可能性があるってコメントしてるし。


「ダリア様、顔色が優れないようですが?」


メイドさんが前屈みで心配そうに尋ねてくる。察しが早い奴だ。


「な、なんでもない」


「そうですか。では、何かございましたら、なんなりとお申し付け下さい」


と、その時、インターホンの音が部屋に響いた。


「来たみたいですね。わたくしが出ます」


「俺が出るよ」


使いの者じゃないかもしれないし。



狭い廊下を抜け、玄関のドアの取っ手に手をかける。


「はーい。ちょっと待って下さい」


朝刊のせいで頭がこんがらがっていたが、これから目の当たりにする光景は、朝刊の内容など吹っ飛んでいく絶景だった。



ガチャリとドアノブを捻ると、



「どちら様で──っ!?」



眼前に巨乳が広がった。



予想だにしていなかった状況にしばらく直視していると、可憐な声が落ちてきた。


「だ、ダリア様……そんなに見られては困ります。恥ずかしいので……」


正気に戻り顔を上げると、頬を赤く染めた女性が困った表情で俺を見下ろしていた。


綺麗な紅に染まった長い髪は(くるぶし)にまで届き、軽くウェーブがかかっている。ツインテールというヘアスタイルだ。


ぱっちりと開いた目には紅い瞳が宿り、可愛いと美人を足して割った整った顔立ちには、ハートを射抜かれる奴が多いんじゃないだろうか。


あと、デカい。胸が。ヤバい。


デカいと言えば、身長も高い。底の高い靴のせいもあるだろうが、紅い色の薄地の衣装からはスタイルの良さが際立ってる。



「……えっと、君は確か……」


「ダイナ・マ・イトボディ、主命に従いお迎えに上がりました」


巨乳の人がひざまづき、頭を垂れる。そこへ、足音を立てずにメイドさんが俺の後ろに立つ。


「来ましたか」


「メイドさん、ダリア様に迷惑はかけてない? 心配してたんだけど」


「全力で尽くしております」


メイドさんが胸を張って誇らしげに自慢する。全力過ぎて空回りしてる気がするけどな。


「そう。なら良かった」


巨乳の人は立ち上がり、俺に顔を向ける。


「ダリア様、早速向かいたいんですけど、飛んで向かうのと一瞬で着くの、どちらがいいですか?」


「飛ぶ? 飛べるの?」


“一瞬”と言う単語が少し引っ掛かったが、飛ぶと言う言葉に意識を持っていかれたのでスルーした。


確か、飛行魔法は難易度高かった筈。クラスレジェンドに名を連ねる『風神』が半永久的に飛行出来るそうだが、その人ぐらいしか飛行魔法を使える人は知らない。


「飛べます」


俺の疑念の声は、巨乳の人にアッサリと返された。


「“天域魔法”は8割、それより下位の魔法はほぼ全て習得してますから」


なんか巨乳の人が凄い事言ってる気がする。



“天域魔法”とは、魔法に順位を付けた時の各位の名称。全部で七つの位階があり、“天域魔法”は上から二番目の強力な部類に入り、相当な実力を有していなければまともに扱えないらしい。


しかも、全ての魔法が自分に合うわけではない。そこには個人差があり、得意な分野があるのだ。


それを、“天域魔法”を8割、それより下位の魔法をほぼ全て使用できるのは並ではないだろう。


だが、普通の人からすればとんでもないんだろうが、魔法を習得するという大変さを味わった事の無い異端児の俺としては、鼻くそほじりながら聞き流せる。


他の人は息をするように魔法を使えるのを、俺はそれすら出来ない。認識の差が大きいのだ。


凄いのは分かる。が、その域は出ない。


他人が難しいと言っている事を、俺がそれに便乗して難しいと、さも自分の事のように言っているだけだ。


まあ、この巨乳の人もワイバーンを倒せるくらい強いんだろうな。


そのようなものをメイドさんの他に召喚出来た自分に驚きを隠せない。もしかしたら他の代行者達のレベルも高いのかもな。



「じ、じゃあ、飛ぶ方向で」


「はい、分かりました。……あ、ダリア様。直ぐに向かいますか? 準備が出来てないなら待ってますよ?」


「大丈夫。直ぐに行けるよ」


「分かりました」


巨乳の人がコクりと頷き、空を見上げる。そして、呟く。



「……≪クリアランス=トランスフェレンス≫」



刹那、景色が青空に染まった。


てか、空だ。


青のキャンバスには掠れた白い色があちこちに塗られている。太陽がなんとも眩しい。


ふと、足下に違和感じた。地面を足で掴むような感覚がなかったのだから。何事かと思い足下に目をやると、王都の街並みが広がっていた。


突如として足下に広がった都市景観に圧倒されたが、直ぐに現状を理解した。


「し、瞬間移動……?」


ぶっちゃけ、漏れそうになった。今まで地から足を離した事はない。高所恐怖症ではないが、足場がある高所とは訳が違う。


この浮遊感を味わった事が無かった俺は、ただただ恐怖を感じていた。


「だ、ダリア様? 顔が青いですよ?」


後ろから巨乳の人の心配そうな声が聞こえてきた。


「だ、大丈夫だって。ちょっとビックリしただけだから。……これって、瞬間移動?」


「正確には空間転移ですね。それと同時に飛行の魔法をかけました」


「へ、へぇ~」


サラッと言ったが、空間転移って凄いんじゃないだろうか? 聞いたことない魔法だ。あ、俺の知識が無いんだな、反省します。


「ダイナ・マ・イトボディ殿、ダリア様の気分を削ぐとは何事でございますか? 感心しませんね。もう少し配慮というものを」


と、眉を寄せるメイドさん。


「ご、ごめんなさい、メイドさん。予告無しでダリア様を空に転移させるのは早計だったよ。張り切っちゃって……」


「まあ、ダリア様も大丈夫だと言っている。思い詰めてもダリア様の迷惑になるぞ」


そう言うマックロネコは、巨乳の人のツインテールに猫パンチでじゃれていて説得力に欠ける。てか可愛いな。



 ☆



「あそこです」


と巨乳の人が下を指差す。どうやら目的地に着いたみたいだ。


時間にして約10分。風の抵抗を受けない魔法をかけて物凄いスピードで飛行をしていたが、予想以上に早かった。


障害物が何も無いって凄いな。地面の凸凹とか坂とかを無視出来るって凄いな。楽だわ。


「……ん?」


下を見て、俺は声を漏らす。着いた場所が視界を覆うほどの大森林なのだ。


巨乳の人が指差す先には、緑に染まった大地にぽっかりと空いた穴があった。目を凝らして穴を良く見ると、水色があった。どうやら湖みたいだ。


その湖の中心には、噂の廃城の姿があった。あそこに代行者達がいるのか。


しかし、と俺は顎に手を当てて考える。


王都アイテールの北東に位置するこの“悪魔の大森林”には強力な魔物が多く生息している。Lv.40オーバーの魔物も、随分と昔だが確認され、討伐された事例もある。王国でもっとも警戒されている“吸血鬼”の目撃例もある。


なぜこんな危険地帯の側に王都を構えているのかと言うと、王都と大森林の間には“カルゼン大河”と呼ばれる巨大な川が流れているからだ。


不思議な事に、魔物はこの川を超えてくるという事が滅多に無い。何か魔物を寄せ付けない力があるそうだ。


あと、この大森林には貴重な資源が豊富というのもある。王都を発展させるには重要なのだろう。専門家じゃないので詳しくは知らないが。


でも、何故あんな所に城があるんだろうか? 建てた奴が馬鹿だったのか、強い傭兵でも雇っていたのか。もしかしたら昔はそれほど魔物が多く無かったのかもしれないな。



「な、なあ。あそこに寝泊まりしてるの?」


恐る恐る巨乳の人に聞いてみる。魔物に囲まれてるとか、想像したくないな。


「そうですよ。昨日の内に半径1kmぐらいの魔物は狩っておきました。魔除けもしてあるので、近寄って来る魔物は少ないと思います」


「す、凄いな。大変だったんじゃないか?」


「いえ、全然。ダリア様の為ですからね」


そう言って、廃城に向かって降下を始める。



ダリア様の為? なんだろうか。気になるな。


巨乳の人に尋ねる間も無く、城の玄関だったと思われる位置に着地し、


「お待ちしておりました、ダリア様」


ルシファーがお辞儀で出迎えてくれた。両脇の白井さんと竜王ウロオボエも同じく丁寧なお辞儀を見せる。


「あ、ありがとう。出迎えてくれて」


「配下の者として当然の事です」


一日しか挟んで無いのに、久しぶりにあった気分だ。ま、とりあえずアレだな。今日の二つの本題にでも移るか。


ずっと思っていたが、名前が酷い。だからニックネームを付けるのが一つ。


あと、こんな場所での寝泊まりは俺としては許可したくない。良心が痛む。まあ本人達は大丈夫って言ってるけど。だから話し合うので二つ、だ。


改名後の名前を書いたメモ帳が入っているポケットに手を入れると、誰かに袖を引っ張られた。


「だ、ダリア……始めまして」


銀髪の少女、竜王ウロオボエだった。


「えーっと、竜王ウロオボエだよね」



竜王ウロオボエは小動物のような可愛さだった。


身長は140ちょっとだろうか。腰まで伸びた銀の髪は鮮やかな色艶で、先端にかけて虹が出来ているみたいだ。綺麗な髪から覗く目は眠そうに垂れ、瞳は常に色が変化していて、これも虹のようだ。


頭の両側面からは黒く長い角が伸び、尻の方からは爬虫類に似た長い尻尾が生えている。


そして、ゆるい雰囲気のある服装の上からではあるが、、少女らしからぬ発育の良さが滲み出ている。いや、こいつが何歳かは知らんけど。


メイドさんもそうだが、胸がある奴多いな。小さい頃の俺はデカい胸が好きだったのか。マセ餓鬼め! 良くやった!


彼女らに対抗するために俺も胸筋でも鍛えようかしら。



「そう……ボクは竜王ウロオボエ。会いたかったよ、ダリア……」


か細い声で腕を伸ばし、腹に回してきた。が、


「お止め下さい竜王ウロオボエ殿!」


「メイドさん……離して。抱き付かせて」


メイドさんが抱えてそれを阻止した。竜王ウロオボエがバタバタもがいている。


「ダリア様、竜王ウロオボエは結構な怪力の持ち主なのです」


そう苦笑いしながら説明し出すのはルシファー。


「ダリア様が居ないと気分が低下し、非力になる上に良く転ぶようになります。逆に、ダリア様が目の前に居るとなると……」


「……ああ、潰されるのか」


「はい。しかも今日がまともなダリア様との対面になりますからね。気分の高揚具合は尋常では無いでしょう」


俺はゴクりと唾を飲み込む。あんな細い腕のどこにそんな怪力があるのだろうか。とんでもないな。


「……分かったよ。ボク、我慢するよ。確かに思い切り締め付けそうだし……」


なんか銀髪少女が怖いこと言ってる。


視線を銀髪少女からルシファーの隣で静かに立つ白い人にスライドさせる。


「で、君が白井さん……だよね?」


「はい。白井さんと申しますわ、ダリア様」


と、白井さんが一礼。前にも思ったが、やっぱ白いな。


モデルを出来そうな女性の体型だが、真っ白。顔まで真っ白で、のっぺらぼう。


白井さんを見て思い出したが、都市伝説の一つに白い人型の妖怪の話があったな。うねうねだかこねこねだか忘れたが、確か正体が分かった者は発狂し、廃人になるんだったか。


パッと見、白井さんはそっくりな気がする。彼女? が、変な踊りをしているところ想像すると……寧ろ爆笑しそうだ。



「それで、ダリア様。本日はどのようなご用件で?」


と切り出すルシファー。


「ああ。ちょっと話したい事があってさ」


俺はポケットからメモ帳を取り出す。


「皆の名前がアレだからさぁ、名前……違う感じにしたいんだけど……いい?」


「はっ。ダリア様の贈り物なら喜んで」


ルシファーが膝をつき頭を下げ、他の代行者達もそれに続く。


メイドさん一人が膝を突くのですら何事かと戸惑うのに、それをこの人数でやられると一歩後退してしまう。


うん、慣れない。多分未来永劫慣れない。



さて、じゃあ成長したネーミングセンスを披露しようか。


「じゃあ先ずはルシファーなんだけど、君は変更無いな。一番まともだし」


「はっ」


「次に白井さんだけど、シロにする」


「畏まりましたわ」


「えー、次はダイナ・マ・イトボディだけど、君はナイトね」


「分かりました」


「竜王ウロオボエは、リュウ」


「うん、分かった……」


「マックロネコは、コロネ」


「了解した」


「最後にメイドさん。君はイサメね」


「有り難く頂戴致します」



メモ帳を閉じ、フッと息を吐き、思う。


あれ? 大してネーミングセンス無くね?


やっべ、前の方がセンスあるよきっと。人前には出せないネーミングだけど。


なんか恥ずかしくて死にたくなった。


「格好いい……」


いや待て銀髪娘。なんで喜んでんだ。あんまいい名前じゃないぞ。


「感動です! こんなわたくしめに新たな名前など……」


おい金髪メイド、鼻血を出すんじゃないよ。そこまで感動されると恥ずかしさが限界突破してしまう。


「あと、君らの寝泊まりしてるこの城なんだけど、やっぱ危ないしさ」


「それは魔物の事ですか? でも魔除けはしてありますし、この森に生息している魔物達はそれほど強くありません。私達で対処出来ますよ?」


自慢気に語るナイト。


「ほら、城が崩れたりしたら危ないし。食事とかも満足には取れないんじゃない? こう……不便じゃない?」


だからって、俺が何か出来る訳じゃないが。でも、皆で考えれば何か思い付くんじゃないだろうか。


他力本願だけど。情けない話だ。


「くっ……!」


悔しそうにルシファーが地面を殴る。


「ダリア様にご心配を掛けさせるとは……このルシファー、自分の非力をこれほど恨んだ事はありません……!」


「よしなさいルシファー。貴方だけの責任じゃありませんわ」


シロがルシファーの肩に手を乗せて慰める。


「気が回らなかった私達にも原因がありますもの」


「……ああ、シロ。ありがとう」


あの……いちいち大袈裟過ぎやしませんかね?


「しかし、それならご心配には及びません!」


ルシファーが力強く立ち上がり、自分の胸をドンと叩く。でも強く叩き過ぎたのか、むせた。


「ごふっ……。も、申し訳ありません、ダリア様。ですが、それについては考えがあります。この廃城ですが、建て直します」


「うぇ? い、いや……どうやって? 結構な大金がいるだろ」


「ナイトを“ヴィジランテ”へ行かせます。それが一番手っ取り早いかと。我々では目立ちますが、彼女なら素でも街を歩けますし」


「いや、それは……」


ルシファーの出した案に渋る俺。



“ヴィジランテ”とは危険因子の排除、要人の護衛、危険地帯への資源回収などを主とする民間企業の事である。


元は、国が対処しきれない魔物の群れや賊の為に結成された小さなボランティアの自警団だったが、当時の頭の良い奴がそこに介入し、実力のある者を集めて一大企業にまで成長させた。


依頼者は個人から国までと幅広く、魔物が現れても集団で動く軍より、少数編成されているヴィジランテのメンバーの方が到着が早く、国民にとっては軍より評価が高い。


名を早く上げたいならヴィジランテで功績を上げるのが一番だが、実力がものを言う上、個性的な者達が多い。悪く言えば荒くれ者だ。悪い評判の者も多いのだ。


因みに、クラスレジェンドの『星呼び』と『風神』が在籍している。


「新人潰しってのを聞いたことあるし……相場は良く知らないけど、ランクBぐらいの依頼を受けないと、大金は手に入らないんじゃない?」


「心配しないで下さい! 私なら全然大丈夫ですから」


巨乳の人改め、ナイトが自信満々にけしからん胸を張る。


……うーん、大丈夫だろうか。そういや、天域魔法使えんだな。なら大丈夫か。折角のやる気を削ぐのも悪いし。


「そ、そうか。分かった」


「ありがとうございます! ダリア様の名に恥じぬ活躍をしてきます」


深々と頭を垂れるナイト。



「ねえ……ダリアは城が完成したら一緒に住んでくれるの?」


「え?」


竜王ウロオボエ改め、リュウが俺の袖を引っ張りながら意味不明な事を聞いてきた。話の筋が見えませんねぇ。


「ダリア様、それについてどうしても了承して貰いたい事があります」


「何、ルシファー?」


「なるべく早くこの城を竣工させますが、ダリア様にはこちらへ住居を移して欲しいのです」


「え?」


いきなりだな、そりゃ。


「ダリア様が戸惑われるのも無理ありません。が、こればかりは譲れません。ダリア様の住まいがアパートの一室など、心が痛みます。それに万が一の事を考えた場合、我々が付いていた方が安全なのです。どうか、了承の意を……」


ルシファーが膝をつき頭を垂れ、ルシファーに続いて他の者達もひざまづく。



いや……そんな急に言われてもなぁ。


簡単に承諾は出来ないよねぇ……。



「……ダリア様」



なんだよイサメ。そんな助けを求めるような目で見ないでよ。



「………」



なんだよ猫ちゃん。捨てられた猫みたいなオーラを出すんじゃないよ。



「ダリア様」



なんだよ巨乳の人。そんな上目遣いされても、簡単には承諾出来ないんだってば。



「ダリアぁ……」



そんな悲しそうな声を出すなよリュウ。ちょっ、涙ぐむんじゃないよ!



「ダリア様」



くぁwせdrftgyふじこlp。



心が折れたので承諾しました。

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