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最弱の代行者  作者: ひとみ
22/24

才能

さっきリュウがウニを殻ごと食べていた。で、俺に食べさせようとしてウニで攻撃してきた。


痛かった。


そんな小言はさておき、俺は今、6階の隅にあるルシファーの部屋にいる。部屋っていうか、書斎。……いや、書斎っていうか図書館だな。


それぐらい部屋は広く、大量の本で溢れている。てか本しかない。家具が一切無いのだ。


まず俺の左手にある天井まで伸びる高い本棚だが、これは本を積み上げたものだ。部屋の真ん中にポツリと置かれているテーブルや椅子も、本を重ねただけなのに家具として機能している。


本だけとは思えない、なんとも不思議な世界だ。


本でできたテーブルを囲むのは、俺とリュウとルシファーの3人だ。ふと顔を上げると、本棚の上からこちらを見下ろしているコロネと目が合った。


で、イサメとナイトは買い物に出ていて、シロも用事があるそうで、変身して王都に出たそうだ。まあ、シロはルシファーのお使いかなんかだろう。



「───それで聞きたい事とは、私共の召喚条件でしたか」


ルシファーがカップに紅茶を注ぎ、俺とリュウの目の前にカップを置いてからテーブルを挟さんで向かいに腰掛ける。


リュウは出された紅茶を眺めながら一言。


「……ルシファーって、気が使えたんだね。ボク、びっくりだよ……」


「お前、俺をなんだと思ってんだよ」


「手羽先……?」


「………」


ルシファーは渋った顔でリュウを睨み、話を戻す為の咳払いを1つしてから口火を切る。


「ダリア様、召喚魔法によって呼び出す存在達ですが、大まかに3つの類いに分かれているのはご存じですね?」


「うん」と相槌を打つ俺。


異界から聖獣や魔物、天使等を呼び出し契約を結ぶ類いで1つ。

この世界に現存している聖獣や魔物等と直接契約を結ぶ類いで1つ。

シロがこの屋敷に放っている霧状のメイド達のように、自分でつくる類いの1つで───計3つだ。


だが、ルシファー達はこの3つの内のどれにも当てはまらない。俺が想い描いた身体にルシファー達の魂と呼べるものが入り、俺のいる世界に顕現できた。


多分俺には召喚魔法の才能も無かったと思われる。1回失敗しているのが証拠だ。


唯一残された手段だった召喚魔法も扱う事ができないのにルシファー達を召喚できたとなると、ルシファー達の召喚条件は特殊な部類なのではないか? と俺は思う訳だ。


でもまあ無事に召喚できたし、彼らとの間に引いていた線も取り除けた今、別に緊張を持って話し込む事ではないだろう。ただの好奇心だ。


ルシファーの言葉を待っていると、穏やかだったルシファーがいきなり血相を変えて立ち上がった。


「い、いや、いけませんよダリア様!」


「え、何……え? 何? どうしたの?」


「明日は実力テストが控えていると聞き預かっております。この話で時間を取らせた挙げ句、ダリア様の成績に影響が出ては、私は今後ダリア様にどのような顔を見せれば……」


「いや、あの……そこまで気落ちする事でもないんだけど……」


実力テストはぶっちゃけ成績に影響は出ない。夏休みにどれだけ勉強したかを確認する為のテストだ。


「……じゃあダリア。テストの点数悪かったら、ボクの事だっこして……? お姫様抱っこがいい」


闘牛娘がなんか言い出したぞ。お姫様抱っこなんてしたら身震いと嫌な汗が襲ってきそうだが、成績上位から席を外した事はないので点数が悪いという事はないだろう。


「悪いって……何点くらいが悪いの? 実力テストは50点満点になるけど」


リュウにそう聞いてみると、


「……じゃあ10割以下」


「い、以下っすか?」


以下ってなんだよ。じゃあ51点取れと? 50点満点なのに?


「ま、まあ、大丈夫だよ。俺にもペースがあるから。テスト前に勉強しなかった事もあったけど点数悪くなかったし。今回のテストは成績に関係してないし」


リュウからルシファーに視線をスライドさせて説得してみたが、ルシファーは依然として渋ったままだ。


「あ、いや。そんな親身にならなくても成績に影響ないんだって。点数悪かったら俺のせいだから。大丈夫だって」


そこまで言うと、流石に折れたらしく、


「だ、ダリア様! ご自身を責めるのはお止め下さい。全ての責は私にあります。分かりました。ダリア様がわざわざ足を運んでくれたのです。話を続けましょう」


少し遠回りになったが、ようやく本題に入った。


ルシファーの腰の低さも相変わらずだな。リュウみたいにグイグイ来てくれても良いんだけどな。


……いや、リュウのはちょっとスキンシップが斜め上だから、それはそれで対応に困るけど。


「では、改めて……」とルシファーは前置きをつくり、


「その3つの中に私共は含まれません。私共は想い描いた身体に私共の……言わば魂と呼べるものが宿り、この世に存在できるようになるのです」


「うん。でさ、それってやっぱ難しいの?」


「ダリア様はほぼ無自覚でしたのでパッとしないでしょうが、私共の召喚は限りなく不可能に近いかと思われます。私共の召喚を試みようとした者が小数ではありましたが確かにいました。が、どれも私共を召喚するに値しませんでした」


その言い方からして、俺って結構凄い事したのか? 限りなく不可能に近い確率を引き当てたって事だよな。


「私共の契約は至って単純です。聖獣や天使等と契約する為には相性や実力、才能等その個体毎に違いますが、私共はこの世に呼び出した方に従えます」


ルシファーの語調が強くなる。なんかしらんが火が点いたみたいだ。


「宜しいですかダリア様?」


「あ、はい。どうぞ」


「私共の召喚条件ですが、まず霊魂体である私共と接触する事が第一条件になります。そうする事で私共を認識できるようになり、繋がりを持つ事ができます。しかし、私共と接触できる場が夢と現実の狭間という曖昧な空間になるので、誰しもが私共を夢と判断し、召喚には至りません」


ああ。あの良く分からない場所か。確かに夢だと思ってたよ。


ルシファーが指を2本立てる。


「第二条件は素体の想像です。人が人の身体を持って生まれるように、獣が獣として生まれるように、私共にもあるべき姿があるのです」


「え。じゃあ俺はピンポイントで君達のあるべき姿を想い描いた、って事だよね?」


「厳密には違います。例えばリュウですが、リュウは竜を元にイメージしなければなりません。竜人という種は竜の因子が入っていますので、条件はクリアになります。同様にナイトですが、彼女は狐を元にしなければならず、ダリア様は狐の獣人を元に想い描いたので、ナイトの召喚条件もクリアしました」


ふむ。だからコロネはナイトの事を狐って言ってたんだな。


じゃあルシファーは堕天使、イサメは……人か? で、コロネは猫って感じか。シロは……なんだ? シロってなんなの? やっべ分かんねぇ。


「私は悪魔。イサメは人。コロネは四足歩行の動物。シロは現存しない生物。以上が私共のあるべき姿です」


頭を捻っていると、ルシファーが察したように答えをくれた。なるほど、納得した。


つまりシロの場合、腕と脚と脛毛の生えた人面魚とかイメージしておけば召喚条件満たせるんだろうな。


ルシファーが3本目の指を立てる。


「そして3つ目。おそらく誰も達成できないであろう条件が───」


間が置かれたので、何を言い出すのかと思い思わず唾を飲み込んだ。



「魔力になります」



思いのほか普通で安心した。


「ああ、うん。まあ魔力は凄いあったらしいからね、俺。全然自覚ないけど。でも誰も達成できないって流石に……」


「それほどに私共を召喚するには魔力を有し、ダリア様は私共全員を召喚する程の魔力を保有していたのですよ」


「そ、そんなに?」


「はい。ダリア様の魔力は言わば記憶のようなもので、重さが無ければ体積も持ちません。故に適応する魔法も無いのですが……。しかし故に、だからこそ常人ならざる量の魔力を持つ事が可能だったのです」


ルシファーは色々知ってるな。そう思いながらうんうんと興味津々の姿勢で話を聞く。


「イサメは私共の中で一番能力が乏しいのですが、彼女を召喚するにしてもこの国の大都市3つは犠牲にしなくてはなりません」


ちょ、ま。待ちなさい。ど、どういう事だよ。


しどろもどろしていると、ルシファーの瞳に灯っていた火が炎に進化した。


「宜しいですかダリア様?」


「あ、え、あ、はい。ど、どうぞ」


「私共のあるべき姿を正確に見抜き、尚且つ全員を同時に召喚したダリア様は至高の存在と呼ばずしてなんと呼びましょうか。そのような方に仕えられるとは……なんと喜ばし事か」


ぐっと握り拳をつくり、涙ながらに語るルシファー。


ルシファーがなんかとんでもない事言ったから頭がチンプンカンプンなんだけど。俺ってそんなに魔力あったの? ネタじゃなくて?


「つまりダリアは、スーパー凄い……。あーゆーおーけー?」


リュウが簡潔にまとめてくれた。


ま、まあ、魔力が計測不能なのは随分前から知っていたけど、今の話を聞くと相当って事だよな。


そのせいで魔法が使えなかったってのはなんとも言えないが。


俺の中に良く分からない感情が渦巻いたが、ともかく俺はルシファー達に会えた。それで十分じゃないか。


リュウの言葉を借りて、俺は実はスーパー凄い奴だった。ほら解決だ。考え過ぎると混乱するから潔く頭を切り換えよう。


それでも、捨て切れない疑問が生じた。


「……俺の魔力って、確かに色が無いって事は昔に説明されたよ。でもさ、聞いた話だから信憑性は薄いと思うけど、『星呼び』って人は色が無くても魔法が使えてるらしいんだ」


俺の憧れだが、彼とは会った事がなければ見た事もない。噂を聞いてるだけだから色々と情報が錯誤しているが、一貫されている情報がある。


それが、特殊な魔力を持っているという事だ。


俺の問い掛けに、ルシファーは数秒間口をつぐんだ。ルシファーは気を散らすように紅茶を飲み干し、目を伏せて重い口を開いた。


「……ダリア様。私は意地の悪い説明をしました。確かに、色が無くとも魔法は行使できる術はあります。が、口があっても音の聞こえぬ者に……言葉は話せません」


「……なるほど」


ルシファーは優しいな。どうせなら率直に言ってくれた方が良かったが。


オブラートに包まれていたが、つまり……というかやはり、俺には魔法という概念が欠落しているらしい。


ルシファーは目を伏せたまま肩を震わせ、リュウが俺の袖を引っ張ってきた。


「……ダリア。ボク達がいるから」


「お、おう」


リュウが慰めてくれるが、俺は別に大したダメージはない。それより、このお通夜より重い空気を入れ換えよう。


「いや、気にしないで。オーライオーライ。この話は止めよう」


そういえばもう1つ気になる事があったんだ。それに話題を移そう。


俺は少し乾いた喉を紅茶で潤してから言葉を続ける。


「あ、そうだルシファー」


「……なんでしょうか?」


「天使いるでしょ? 3体」


「はい」


「名前聞かなかったな、って思ってさ」


「ダリア様は“三大天使”をご存じでしょうか?」


「え。どうしたの急に? そりゃあまあ知ってるけど」


知ってる、というより常識に近いかもしれない。なんせ三大天使は教科書に載るぐらいだし、三大天使を元にした童話もある。


四英雄の1人に数えられる『聖女』が使役したという天使達でもあり、それが更に認知度に拍車を掛けている。


三大天使は召喚獣の中でも最高位───神獣や他の高位の召喚獣より上の最強の位置に座を冠し、たった1体と契約を交わす事ができれば無類の恩恵を授かれるという。


曰く、人の限界に到達できる。

曰く、あらゆる災厄を振り払う。

曰く、枯渇した大地に緑を潤す。


まあ要は、三大天使はとんでもないって事だ。その天使達を全員従えた『聖女』もとんでもないって事だ。


その三大天使の名を───



『ミカエル』『ガブリエル』『メタトロン』



まさかルシファーはその天使達の事を言っているのか? 話の持っていき方からしてそうだよな?


えっ? マジで?


「……その三大天使が、どうしたの?」


恐る恐る言いながら、紅茶を一口。じっとルシファーの両の瞳を見据えると、ルシファーは静かに頷いた。


「あの3体は、その三大天使になります」


「……ん?」


「あの3体は三大天使になります」


「んん?」


「三大天使です」


「……そうか」


色々何かが飛び出そうだったがなんとかポーカーフェイスを気取る。



……やっべ。紅茶が逆流して鼻から出た。



可笑しいな。一生分の驚きという感情は使い切ったはずだったが、どうやら来世の分を借りないといけないらしい。


「……あ、ダリア。鼻血出てるよ?」


リュウがその辺の本から1ページをむしり、俺の鼻を拭き始めた。


鼻血じゃないよ紅茶だよ、と言いたかったが、予想以上の力で鼻を拭いてきたので口が開かなかった。


何気に苦しかったのでリュウの腕を掴んでそっと引き離し、ルシファーを見やる。


「……三大天使って……あの三大天使?」


「はい。治癒魔法は天使が得意とする魔法なので、万が一の事を考慮し、呼びました」


俺がキョドっているのに対し、天使達を召喚できたのがさも当然です、と言わんばかりの表情のルシファー。


「す、凄いなルシファー」


「いえ。私の力などたかが知れています。天使達を召喚する対価としてし払った魔力も、全てダリア様のものです」


「え、そうなの?」とキョドりを増す俺。


ルシファーはおもむろに立ち上がり、片翼3枚───天使の翼を雄々しく広げた。


天使の翼は雪のような光を溢し、更に窓から射し込む日の光が相重なって、言葉では表現しにくい神々しさがルシファーから放たれる。


「それでこの三大天使の件で、申し上げたい事があります」


「あ、はい」


思わず手を合わせてたくなるような純一無雑なその威儀は、ルシファーが本当に悪魔なのかと疑ってしまう。


いやまあ、ルシファーはなんちゃって悪魔なんだろう。悪魔と聞けば大抵批判が起こるものだが、中には献身的な悪魔もいると聞く。


何を言うのかと身構え、ルシファーの開口を待つ。そして、


「ダリア様、天使達と契約を交わしてはいかがでしょう?」


「え。待っ」


驚き、ガタッと反射的に椅子を引く。


今まで、ルシファーに限らず他の皆も言う事成す事予想外の事してきた。だから、なんか驚く事言ってくるんだろうな、と分かってはいても、やはり驚きは隠せない。


椅子に座り直して、疑問を投げる。


「あの、折角ルシファーが召喚したんでしょ? それに契約だってしてるんでしょ?」


「契約をダリア様に移すのは、私であればさして難しい事ではありません。天使達からも同意は得ています。私共は無名の存在ですが、三大天使を使役しているともなれば、ダリア様の世間の評価が裏返るでしょう」


「いやまあ、そうだろうけど……」


確かに天使を……それも三大天使を使役しているともなれば、直ぐではないにしても俺への風当たりは変わるだろう。


だが、悪い意味でも影響が出てくる。


この十数年、三大天使と契約できた人物はいないと言う。これは世界規模での話だ。世界規模で十数年の間、三大天使は召喚されていないのだ。


まあこの十数年の間に三大天使と契約できた人間がいたかもしれないが、今代には間違いなくいない。でなければルシファーは三大天使全員を召喚できないだろうからだ。


で、学生である俺が学校で三大天使の力を振るえば、噂が広がり国の上層に知らせが行くだろう。


細かい話は無しだ。端的に言って、目立ってしまう。端的に言って、良いように使われてしまう。


そんな懸念がある。


「ダリア様の心中お察しします。ですが、その点は問題ありません」


と、ルシファーが頭を垂れた。


「ダリア様が何者かに言い寄られる可能性は多いにあるでしょう。その言い寄る相手を……仮に王国としましょうか。王国が相手だろうと、法を盾にし国民から支持を募れば対処は難しい事ではありません。何より、三大天使を使役する者を脅すという行為は国民からの反感を買い、国に損失が生まれます。ですので、国も下手な接触は避けるでしょう」


淡々と言葉を並べていくルシファー。息継ぎが全く聞こえず、舌を噛む様子も無い。


「あの……ルシファー?」


ルシファーの台詞に割って入ると、ルシファーが顔を上げた。


「はっ。何か?」


「契約した方が良いの?」


「これは私の勝手な見解です。ダリア様が校門を堂々と潜られる一番の近道かと思い、進言しました」


「そっか」


ルシファーから視線を外し、宙空に目をやる。と、何も無い虚空に今日の出来事が映し出された。


「ルシファーが心配してくれてるのは分かる。けど、契約は止めておくよ」


「理由をお聞きしても?」


「だってなんか……契約ってよそよそしいんだよね。俺の主観だけど」


一拍。


「……俺さ、今日世界が変わった気がしたんだ。学校っていう小さな世界だけど。イサメとナイトが来てくれてさ。ビックリしたけど……なんか嬉しかった。白黒だった風景にようやく色が付いたよ」


「……ダリア様」


学校の連中を見返してやりたい気持ちは、無いと言えば嘘になる。高位の召喚獣を呼ぶのも夢ではあった。


が、俺は今で満足している。今までは普通の人とは違う景色を見ていたが、やっと同じ景色が見れそうだ。理不尽の矛先で身を縮めて怯える日々は終わりだ。


三大天使との契約は名誉ある事で、断るなんてのは嫉妬や反感を喰らってしまうだろう。が、俺は既に贅沢している。


俺を想ってくれる皆がいて、心配してくれる皆がいて、家族にも恵まれている。それを考えたら、学校……というか、世間そのものが屁でもないように思える。


『……アルジサマは欲が無いヤツじゃのぅ』


不意に、鈴を転がしたような声が鳴った。ルシファーの天使の翼から発せられたものだ。


『大天使との契約が確定しとるのに、それを断るなんてどんな神経しとるんじゃ? それも3人じゃ。滅多な事じゃぞ? 大抵の者共は己の力量に見合わぬ弁舌だけ振るってワシらとの契約に必死じゃったが、ヌシのような者はいなかったのぅ』


そりゃあ契約したいが為に呼ぶんだから皆必死にもなるだろう。俺の力量は糞みたいなもんだから天使を呼ぶ気はさらさらなかったが。


続いて、爽やかな男性の声が響く。


『確かに君は異例だね。僕もこの数百年幾度となく呼ばれたけど、契約まで漕ぎ着けられたのは片手で数えられるくらいだ』


流石は天使。数百年も生きてるなんてとんでもないな。『聖女』の生きてる時代からいるんだから当然か。


いや……? 天使にも寿命があるって聞いた事あるから、もしかしたら別個体になるのかな?


『オ2人共、自分ノ物差シヲ、押シ付ケルモノデハアリマセンヨ』


と、今度は無機質な声。


『ダリア様ハ契約ヲ交ワス事デ、自分達トノ間ニ溝ガデキルト、オ考エナノデス』


『別にワシは気にしないんじゃがのぅ……』


『まあ契約というのは、ある種、面識のない者同士が互いに信用を得る為の手段でもあるからねぇ。それを考えたら、ダリア君は既に僕達を信用している、という事になるだろう』


男天使はそう考察しているが、俺を治してくれたんだから命の恩人に信用も何も無いと思うが。


『……しかし、じゃ』と、天使の一翼がプルプルと小刻みに揺れだし、


『考えてみぃ。ルシファーよりアルジサマの方が良いじゃろ!』


吠えた。


『だって、ルシファーってなんかアレじゃろ。気も利かんしアホじゃし鼻くそほじってるしで、なんでこんなのと契約してしまったんじゃ……』


『初見じゃその圧倒的な存在感に思わずやられてしまったよね』


なんとなくルシファーの表情を伺ってみると、ニコやかに微笑んではいるが、こめかみにうっすらと筋が浮かんでいた。


「静かにしろ。ダリア様の前で無駄口は叩くな」


ルシファーがそう制すと、天使達の声が途端に消えた。どうやらルシファーの意思で声を調整できるっぽい。


微笑みをほどき、膝をつく。


「……ダリア様、数々の非礼お許し下さい」


「いや……良いんだけどさ。もう1つ聞いていい?」


「私に答えられる範囲なら何でも」


少し気になっていた事がある。それは、天使の翼に天使達が宿っているのなら、反対側に生えた3枚の翼にも何か宿っているのかな? と。


俺はルシファーの悪魔の翼を指差し、問う。


「他にも召喚したりしてるの?」


「………」


ルシファーは無言のまま顔を強張め、声調を落とす。


「お察しの通りです。他にも3体を召喚しています。恐らく、天使より驚かれるかと思いますが」


「え、何」


「その前に先に申し上げますが、先入観に囚われず、私の言葉を受け止めて頂きたい」


「えっ。だから何?」


「私が召喚したのは───」



 ☆



「───何、三大悪魔……?」


私の目の前に座る“乾”と呼ばれるその男は、表情をコロコロと変える男だったが、その時は分かりやすい驚きを示した。

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