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最弱の代行者  作者: ひとみ
13/24

部屋に着くまでがライブだ

~レベルの目安~



Lv.5 スピードラビット

・臆病ですばしっこい。

・5歳児とタイマン張れるくらいの強さ。



Lv.7 黒江ダリア

・7歳児と同レベルの身体能力を有する。

・下手をするとスピードラビットに寝首を掻かれるくらいには強い。



Lv.22 グリンベア

・常人での討伐は可能。



Lv.26 キリングバブーン

・常人での討伐は可能。



Lv.31 ワイバーン

・常人での討伐は不可能。

・イサメにボコられる。



Lv.36 渡辺カロス

・ヴィジランテの元A級組員。

・イサメにボコられる。

・ナイトにボコられる。



Lv.44 ヤマタノオロチ

・天変地異を起こせる。

・ナイトにボコられる。



Lv.45 星呼び

・王国最強にして世界で唯一のLv.45の到達者。



Lv.46(自称) イサメ

・ワイバーンを瞬殺。

・渡辺カロスを瞬殺。

「じゃあダリア、俺そろそろ時間だから」


兄ちゃんがそう切り出したのは、太陽が建物群に姿を隠し始めた頃だった。


ああもうそんな時間か。



結局、鳴滝ポルポのライブは中止になった。まああれだけ騒ぎになったらそうなるのも仕方がない。


駆け付けた軍の人達と軽く問答をして解散その後ライブ会場及びその周辺調査の為に封鎖され急遽路頭に迷う事になった。


何して時間潰そうかと尋ねると、兄ちゃんが魚みたいとか言い出したから水族館に行った。で、次は球投げしたいとか言い出したからボウリングに行ってきた。


いやー、ボウリングって次の日筋肉痛になるんだよな。



染々と今日の事を振り返ると、急に寂しさが込み上げてきた。夏だと言うのに心が冷える。……まああと半年で卒業だから、直ぐにまた会えるしな。


「ああそうだ」


と兄ちゃんが紙切れを渡してきた。


「ん? 何これ……番号書いてあるけど?」


「そうそう、俺の携帯の番号。何かあった時にでも電話しろや。8割方無視するけど」


「え、無視すんのかよ」


「はは! じゃあそういう事で」



兄ちゃんは誇らしげな顔で鼻をフフンと鳴らし、なぜかムーンウォークで去っていった。


途中で盛大にコケたけど、とりあえず指差して笑っといた。



兄ちゃんを見送り、俺も帰えるか、と踵を返すと、既にイサメとナイトがスタンバってた。


「ごふっ」


ビックリしてむせた。


その気配消して背後に立ってるの止めてほしい。凄いビビる。


あとナイト、君は距離が近いな。危うくぶつかるとこだったよ。


「ダリア様、お迎えに上がりました」


イサメがペコリとお辞儀をしたので、慌ててお礼を返す。


「あ、うん。ありがとう」


「……いえ、従者として当然の事」


と謙虚な言葉を言いつつも、顔が緩んでる。そんなに嬉しいか。


「そういえば、さ、ナイトは犯人捕まえに行ってたんだっけ?」


イサメがそんな事を言っていた。人を操る特殊な魔法を使う奴がいたらしい。で、そいつが今回の事件の真犯人だとか。


それを考えると、今日の暴徒達は被害者になる。だが被害を出してしまったからには加害者として処理されるだろう。


生きにくい世界だ。


「あの、危なくなかったの? 怪我とかしてない?」


これは愚問だったかな? 見たところ無傷だし、服に汚れもついてない。


特殊な魔法を使えるってだけでそいつ自体は弱かったんだろうな。 


俺の質問に、ナイトは自慢気に堂々と胸を張った。毎回思うが、やっぱデカいな。何がとは言わないが。


「全然平気でしたよ。直ぐですよ、直ぐ。カップラーメンの方がまだ時間かかりますよ。怪我だって全然無傷で───」


唐突に口を塞ぐナイト。何かを閃いたかの様な顔をしている。


……いや、そんな顔じゃないな。例えるなら、悟りの境地に辿り着いたような、神秘的で不思議、独特な表情をしている。


未来でも見透してそうだ。


まさか、私が未来から来たって言ったら笑います? とか言ってくるんじゃないだろうな。


「あの……大した事ではないんですが……」


申し訳なさそうに右手を上げる。


見ると、手の甲にうっすらと赤い線が入っていた。血が滲んでる。


「ちょ、怪我してるじゃん。あ、俺絆創膏持ってるよ」


絆創膏を取り出そうとした瞬間、イサメに右手で制された。


「ダリア様がお手を煩わせる必要はありません。ナイト殿は治癒魔法が使えるので、自分で治せます」


「ギクッ」


「それにその傷、今自分で付けたものですよね? まさかダリア様に手当てされたいなどという、愚劣極まりない考えをしておりませんか?」


「ギクギクッ」


「先程からなんでございますか、そのセルフ効果音は。面白くありません」


「グサッ」


イサメの言葉は最終的に矢になってナイトの胸に刺さった。


イサメに指摘されたせいか、ナイトが肩を落としてしょんぼりとしてしまった。頭の上にはどんよりとしたマークがグルグルと回っているのが見える。


心なしか、ツインテールにも覇気が無い。


だがナイトも負けじとばかりに反撃に出る。


「で、でもさ、私だって叶えたかったのよ! ダリア様に手当てされたい。そんな夢物語を、そんな淡く儚い夢を、そんな果ての無い遠い夢を……」


「……ナイト殿……」


「……夢は、叶えちゃいけないのものなの? 見てる……だけなの?」


「そ、それは……」


「ねぇ、イサメ……答えてよ。私は……悪い事をしたの?」


ナイトが心から叫ぶ。掠れた声で。今にも消えそうな瞳で。



あるぇ。これ手当てするかどうかの話で合ってる? 合ってるよな?



「わ、分かったから。絆創膏貼るから。落ち着こう」


もうこうなったら貼ってあげるしかないだろう。絆創膏貼るだけなのになんか良心が痛む。


「ナイト、手、出して」


「えへへ、ハイ!」


ナイトは嬉しそうに右手を出す。太陽にも負けない満面の笑みだ。ツインテールもまるで生きてるかのように踊っている。


それに対しナイトの白い綺麗な手を握った俺の手は、


「ちょ、待って……狙い定めるから……」


震えていた。


……ま、マジか。人の手に触るってこんなにも緊張するものなのか。


それとも、女性に触れないただのチキンか。


く、クールになれよ俺……クールだクール。ナイトは俺が召喚したんじゃないか。俺の代行者じゃないか。分身みたいなもんじゃないか。ナイトに失礼だろ。


そう言い聞かせて、なんとか絆創膏を貼る事に成功した。


「よ、よし……ふぅ……」


流れる汗の量が尋常じゃないのは夏のせいじゃない筈。


ナイトは空に自分の右手を掲げて恍惚とした瞳で見つめだす。


「一生この右手は洗いません!」


洗って下さい。



「じ、じゃあ帰ろうか」


「お待ち下さい」


帰路に着こうとしたら、イサメに待ったを掛けられた。


さっきまで平然とした顔でナイトをのしていたのに、今はなぜか青ざめた顔で右肩を押さえている。


「ど、どうしたの? 気分でも悪いの?」


「か、肩が……外れてしまいまして……」


「えっ……」



イサメって……アレだよな。


アホ、だよな。絶対。



 ☆



「──ダリア様、一つ言い忘れていた事がございます」


帰り道を夕日を眺めるながら歩いていると、斜め後ろでイサメが思い出した様に口を開いた。


「ん、何?」


「昨日引き払ったあのアパートですが、何かとこれから不便かと思い、再び契約を交わしました」


「え、そうなの?」


「はい。今朝のようにわざわざ人気の無い場所から移動するのは手間が掛かります」


一理ある。確かに朝は人目につかなそうな変な場所に転移したっけな。人前に転移すると驚かれるだろうからな。


それに学校もあるからアパートを経由した方が都合が良いだろう。


「……ん、待って、いつの間に契約してきたの?」


ふと感じた疑問を口にする。


「ナイト殿ですね」


「ああ、なるほど」


イサメは詳細を続けようとしたが、俺は直ぐに納得出来た。


空いた時間に空間転移を使ったんだろうな。公衆トイレなんか人目につかないだろうから転移場にうってつけだろう。


その地味に面倒な契約を行ったナイトは、


「んんふ~」


さっきから俺の貼った絆創膏を宝石のように眺めていて話を聞いていなさそうだ。


「やれやれ……。絆創膏くらいでその喜びようでは、先が不安になりますね」


「む。不安になるってどういう事よ? イサメだって自分で肩外してたじゃない」


「あれは、違いますよ。電柱にぶつかってしまっただけの不慮の事故です」


だとしたら結構な勢いでぶつかったんだな。


てかイサメって良く食い付くよな。ストレスでも溜まってんのかな?


後で肩でも揉んでやろう。



───アパートに到着したのはすっかり日が沈んだ頃だ。


鍵を開けて部屋に入ると、やはりすっからかんだった。引っ越したのに戻ってくるなんて不思議な感覚だ。


月明かりのみが部屋を照らし、床の中央には屋敷で見たような転移魔法陣が描かれていた。仕事が早いな。


「ダリア様、座標の結び方はご存知ですね?」


「あ、うん」


心配そうに聞いてくるイサメに生返事をする。


俺は座標の結び方を失敗して屋敷で迷子になった前科があるからな。心配するのも分かる。


俺もぶっちゃけ不安だ。あんな、ばかデカい屋敷に1人だけポツンと突っ立ってると孤独が押し寄せてくる。


だがしかし、いつまでもナイトに頼って一緒に転移という訳にも行くまい。


それに座標の結び方と言っても、俺が迷子になった後に改良を加えてメッチャ簡単にしてくれたらしい。ありがとうナイト。


魔法陣の上に立つと、俺の眼前に6つの屋敷の平面図が描かれた術式が展開された。


この6つの術式はそれぞれがその対応する階に繋がっている。例えばこの右下にある術式だが、これは俺の部屋がある6階に繋がってる。


屋敷内にはナイトが設置した魔法陣が幾つもあって、平面図に描かれた魔法陣のマークを軽く触れば、その場所に一瞬で転移出来るのだ。



「よし……これだ」


俺は無事に自分の部屋を見付け出し、意気揚々と軽く触れる。



すると景色が瞬く間に一変し、



「………」



俺は迷子になった。



なんて事だ。


兄ちゃんを方向音痴だと笑いつつ、俺も人の事言えないじゃないか。図面すら読めないじゃないか。


原因究明の為にもう一度術式を展開し、平面図を腕を組んで眺める。


───で、原因が分かった。どの階も間取りが似過ぎている。まあ俺の目が慣れてないせいで似てるように見えるんだろうが。


自分で言うのもなんだが、頭が良くても昨日の今日で間取りを覚えるなんて俺には無理だ。学校じゃ良い成績叩き出してても無理なものは無理だ。


どうせ迷子になってもイサメとナイトが迎えに来てくれるだろう、という甘えから適当に転移したせいもあるかもしれない。


もう一回転移してみるか? でも大人しくしてないとイサメに怒られそうだ。



「あぅ……!」



不意にか細い声と、ドテッという転倒をしたような音が背中に当たった。


見てみると、銀髪少女が倒れていた。てかリュウが倒れてた。


リュウは倒れた状態のまま顔だけを俺に向け、一言。


「助け、て……」


そんな潤んだ眼差しを向けるんじゃないよ。なんか俺が悪者みたいじゃないか。


放って置く訳にもいかないので、俺はリュウに近付き中腰になる。


「だ、大丈夫?」


「……ダリア、おかえりなさい……」


「あ、うん。ただいま。大丈夫?」


「……ダメ。ボク、ダリアの事待ち伏せして……驚かそうと思って、た。けど、転んだ……」


「そ、そうか」


じゃあピンポイントでこの場所にスタンバイしてたって事か? 凄い読みだな。


そういえば昨日、俺が数千㎞離れてても一瞬で居場所を特定できるとか言ってたが……マジなんだろうか?


「抱っこ……」


「え?」


「抱っこ……して? もう、立てない……死ぬ……」


そう言い残してそのままぐったりと寝込むリュウ。転んだぐらいで大袈裟な。


てかその状態からどうやって抱っこすんだよ。分かんねーよ。腹に手を回すして起こすのか? セクハラとかにならない? 大丈夫?


脇に手を入れるならセーフだろ、と思いリュウに手を伸ばすと、いきなりリュウが起き上がった。


「ダリア様、リュウ殿を甘やかしてはいけませんよ」


その声に反応して顔を上げると、イサメがいた。リュウの首根っこ、もとい襟を掴み身体ごと持ち上げている。


もう迎えに来てくれたのか。早いな。


イサメがリュウをソッと下ろし、それと同タイミングでナイトも転移してきた。ナイトは慌てたように真っ先に俺の元に駆け寄ってくる。


「だ、ダリア様、怪我は無いですか?」


「え? あ、うん。無いけど」


「よ、良かったぁ……。部屋にいなかったから心配したんですよ?」


ナイトはホッと胸を撫で下ろす。ただ転移先をミスっただけなのにそんなに慌てないでよ。


「良くこの場所が分かったね」


「履歴を確認したんですよ。ダリア様が部屋にいなかったので、アパートからどこに転移したのかを調べたんですよ」


今度は誇らしげに、フフン、と腕を組むナイト。


ほう、履歴なんていう便利な機能があるのか。


「ナイト殿、誇る前にまずは転移魔法陣を組み直した方が宜しいのではありませんか? ダリア様が扱えないようでは優れていも意味がありません」


イサメは言葉の端々にトゲを含める言い方でナイトを睨む。


「ぐっ……イサメに言われなくても分かってるわよ」


「お願いしますよ、本当に」


「な、なぁ。転移間違えたの俺のせいなんだから、さ、そんなに責めなくても……」


俺が謝罪を始めると、イサメとナイトがマッハで膝をついた。


「ダリア様に非はございません。全ては我々の任の疎かさによって生まれた不祥事です」


「イサメの言う通りです! これは私の責任です」


硬いな、2人共。特にイサメは言葉が硬ければ表情も硬い。


するとリュウが頭を垂れるイサメとナイトの前にしゃがみ、2人の顔を交互に覗き込む。


「な、何よ?」とナイト。


「……じゃあ……イサメとナイトは、罰ね。今日はダリアに近付いちゃ、ダメ……。あーゆーおーけー?」


「それは聞けない相談でございますね。わたくしにはわたくしの任がありますので」


「そうよそうよ。それにリュウだって転移魔法陣を組む時に立ち会ったんだから、あなたも同罪よ」


「う……」


リュウは2人の反撃に負け、助けを乞うかのように俺の腕にしがみついて来た。


と、その時である。どうしていいか分からずこのままグダるかと思われた現状が、


「───そろそろ夕食時だが、いつまでここで時間を潰すつもりだ?」


「なっ! もうそんな時間でしたか。ではわたくしは夕食の準備に取り掛かります」


「じゃあ私は夕食前に転移魔法陣を直しておきますね」


物陰から出てきた黒猫さんの一言で円滑に動き出したのだった。



 ☆



同日。


夜の静けさと微かな昭明の灯りが今を支配する屋敷内。外の風景を眺めながら靴音が反響する廊下を歩いていると、とある一室に辿り着いた。


「───失礼します」


ノックをして中に入る。部屋の中央には黒い円卓があり、その周りには7つの椅子が据えられている。既に席は5つが埋まっていた。


上座はダリア様の為のものだから空けてある。因みにダリア様はお休みになっている。


わたくしが席に着くと、羽を丁寧にブラッシングしていた堕天使が手を止めて全員の顔を見回した。


「よし全員揃ったか。よくぞ集まってくれたなクズ共。お前達の顔を見れて俺はすこぶる機嫌が悪いです。胃が痛くなりましたどうしてくれる」


などと開口一番から気分を害する発言を放つルシファー殿。


おそらくルシファー殿は構って欲しいだろう。が、そうすると調子に乗って騒がしくなるので聞き流す。


「それでルシファー殿、我々を呼び出した用件を聞きましょうか。手短にお願いします。屋敷の掃除をしなければいけないので」


わたくしが急かし気味に切り出すと、ナイトが眠そうに目を擦った。


「……そうそう。早く始めましょ。私眠いんだけど」


ナイト殿に賛同するかの様に、リュウ殿とシロ殿も眠気アピールを始める。


「……ボクも、眠い……成長、止まっちゃうよ……」


「私も眠いですわ。早くして下さらない?」


リュウ殿の閉じかかった目蓋から覗く瞳は虚空を眺めていて、シロ殿は静かに欠伸をかいている。確かに眠そうだ。


わたくしの隣に着座しているコロネ殿も、うとうと状態である。軽く夢の中に旅ってるのではないだろうか


「分かったよ。仕方ねぇなぁ……」


ルシファーは渋々といった感じで立ち上がり、側に置かれていたホワイトボードからペンを取って中々に達筆な字を書き殴っていく。



『鳴……なんとかさんのライブの件』



と書いて、我々に向き直った。


「に、ついてだ。そこのパツキンとデカ乳と愛玩動物は知ってると思うが、ライブが大惨事だったそうだな?」


パツキンとはわたくしの事だろう。パツキンの言い方に少し怒りの感情が渦巻いたが、事実なので聞き流そう。


そして一拍。


普段ならナイト殿がデカ乳に対して何かしらアクションを起こしていただろうが、眠いのか全く反応しない。


あまりもの温度の違いにルシファー殿も空気を読んだらしく、ホワイトボードを壁際に置き、席に座り直して淡々と話し始めた。


「……今回の件だが、ナイトが持ち帰った数珠を俺とリュウで調べたところ、ある事が分かった。

この数珠は精神操作の力を有している。

この数珠は古代遺産と呼ばれる強力な道具の一種だと思われる。

この数珠はその複製品だ。古代遺産の複製品の為か完成度は低いが」


開いた指を一本一本折っていく。


わたくしは疑問が生じたのでスッと挙手する。


「質問があります」


「なんだイサメ?」


「古代遺産と断言できる根拠はなんですか?」


「古代遺産には古代遺産特有の波長があるんだよ。それとこの数珠と似通った物がとある書物に記載されていた。ナイトは戦利品として古代遺産も貴重書物も回収しているからな」


ルシファー殿は説明を続けながら、その数珠を机の上に転がす。


「この数珠にも僅かだが古代遺産と同じ波長が見られた。───そうだな、リュウ?」


「……うん。調べた……から、間違い、ないよ」


問われ、リュウ殿は静かに頷く。


「現代には現代特有の波長があるから、古代遺産に似せて造らなければこの反応は見られない。複製品と結論付けるのが妥当だろう」


「なるほど。理解しました。」


「で、まあ、この数珠とその持ち主とライブの件とナイトを監察してたっていう男女の2人組と……まあなんやかんや色々とあれこれ考えてみたら、ヤバい未来が見えますた。はい」


ルシファー殿は説明が面倒になったのか、随分と雑に要約した。


“ヤバい未来”。その一言が、わたくしの脳内に五月蝿くこだまする。嫌な汗が流れる。


ルシファー殿がそう言うのなら、そうなのだろう。日常での態度は褒められたものではないが、頭脳は信用できる。


彼は今ある情報から無限に広がる未来を紡ぎ、あらゆる可能性を思考し、何か一つの未来に辿り着いた、という事だ。


何か……危険な未来に。



ダリア様に危害が及ぶ。そんな事態が起こりうる未来に。



我々にとって、それは最優先で避けねばならない未来だ。


「その……いったい何が見えたのですか?」


真剣に、真っ直ぐに、ルシファー殿の瞳を捕らえる。他の方々も察したのか、先程までの眠気が嘘のように消え去り、しっかりとルシファー殿を見据えていた。


そして、ルシファー殿が口を開いた。



「国が死ぬ」

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