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第4話

 とりあえず、ジャンヌを含む4人の(外見上)少女を邸内に招じ入れ、私は食堂で4人と向かい合った。

 既に酷い(精神的な)頭痛が、私はしていたが、当面の話をしない訳には行かない。


「サラ、私達の学校への転入手続きは、無事に済みそう」

 ジャンヌが口火を切った。

「何とかなると思います。一応、浦賀女学校からの紹介書類に問題はありませんでしたから」

 私は、一応、敬語で話すことにした。

 なんだかんだ言っても、この4人は、私より(人生経験的には)年長なのだから。


 ジャンヌはともかくとして、他の3人はほっとしたようで、小声で会話を始めた。

「良かった。学校に入れないかと思っていた」

「お祖父さんというか、孫が浦賀女学校に圧力をかけてくれたみたい」

「さすが土方伯爵の御威光ね。料亭にサービスするように伝えておくわ」


「私達は、この邸宅に住むということでいいのかしら」

「それでいいです。個室の準備もしています」

「カサンドラのお陰ね。息子は良い嫁をもらったものだわ」

「間違ってはいませんが、外では言わないでくださいね」

「分かっているわ」

 私とジャンヌは、更に突っ込んだ会話をした。


「そうそう、食事だけど、基本的に私が4人分を作るわね。ちょっと色々と事情があって」

 ジャンヌは、そう言った。

「どうしても日本食を作る際には、私が作るわ。4人が交替で作れないのよ」

 村山愛が言った。

「「何か誤解を招きそうな言い方をするわね」」

 土方鈴と岸澪が、2人して突っ込んだ。


「だって、お互いに相手の料理をけなしあうじゃない。味噌汁は、豆味噌じゃないとダメだ、米味噌じゃないとダメだ、と大ゲンカして、お互いに彼はこれがいい、と言ってくれた、と先日は前世のことまで持ち出したのは誰だったっけ」

 愛が言うと、2人は下を向いた。

「愛の料理にまで京料理風の上品すぎて家庭的な味じゃない、とそこだけは一点共闘して、最終的に私が料理を作ることで妥協したのでしょ。全く、私は料理人じゃないのよ」

 ジャンヌが更に嫌味を言うと、2人は顔を歪めて何か言いたそうだったが、言い返したら、更に事態が悪化すると察したのか、何も言わなかった。


 私はフランス人なので、この辺りの機微が分からない。

 とは言え、聞かないと事情がさっぱり分からない。

 思い切ってジャンヌに尋ねることにした。

「どういうことか、差し支えない範囲で話してくれる?」


「要するに前世での味の記憶があるから、馴染んだ味の料理を作って食べたい訳よ。それで、私はフランス人だから、他の3人からしたら、フランス料理を作るので、余り突っ込まれないんだけど、他の3人が日本料理を作ると、この味はどうだこうだ、馴染んだ味じゃない、とか言いたくなる訳。全く前世では、味噌まで自家製に、澪と鈴はこだわっていたとはね。味にうるさいわけだわ。もっとも愛にしても、料亭の主だったから、味付けには厳しいけど」

 ジャンヌは半ば呆れるように言った。


「日本料理なのに、そんなに違うの?」

 私にはさっぱり分からない話だが、他の3人の表情を見る限り、その通りらしい。

「より正確に言うなら、生まれ育った地域の違いね。現在は、そんなに日本国内では違いがないけど、私も含めて4人共19世紀生まれだから、地域の味付けの差は大きかったのよ。全く味噌汁の味一つで大ゲンカを始めるなんて」

 ジャンヌも、少し頭が痛いようだったが、他の3人にはそうではないらしい。

「「「日本人にとって味噌汁の味は大事なの」」」

 他の3人全員が口を揃えて突っ込んだ。


 私は頭痛が酷くなるのを覚え、神に祈った。

 どうか歳月が早く流れ、祖母(?)4人を成長させ自立させてください。

 私の平穏な日々を早く返してください。

 これで本編は事実上は終わり、次の話は「余談」になります。


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