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第3話

 本来なら、空港まで日本から来る祖母達(?)を出迎えに行くべきなのだろうが、どうにも気が進まない私は、自分の自宅の住所は、祖母にして孫娘のジャンヌ(以下、「ジャンヌ」と記す。)が知っているから、と自分に言い訳をして、空港に迎えに行かなかった。

 実際、ジャンヌは他の3人を連れて、タクシー等を使い、私の自宅まで自分で来た。


「お世話になります。サラお祖母さん」

 いきなり、日本から帰ってきたジャンヌに、久々に会って早々にそう言われ、私は下手に事情を知っているために戸惑う羽目になった。

 流石に向こうの方が実際の人生経験が長い。

 私の戸惑いの感情は、ジャンヌにあっさり見抜かれた。


「うーん。可愛い孫娘のサラ、と呼んだ方がいいかな」

「止めて下さい。外見上の年齢が逆なのに」

「私としては、そう呼びたいけど。何しろ、そっちの方が呼びなれているから」

 ジャンヌと私は思わずそう言いあった。

 ジャンヌと一緒に日本から来たジャンヌと(外見上は)同年代の少女3人は、私達のやり取りが分からないようで戸惑っている。


「そうそう、紹介しないといけないわね。一緒に来た3人が、サラのお祖父さんが付き合って子どもができた女性3人の生まれ変わりね。サラからしてみれば、義理の祖母になるのかしら」

 ジャンヌの言葉に、その内の1人が抗議の声を即、挙げた。

「正妻の私をそう紹介するな」

 別の1人も声を挙げた。

「私だって、婚約者なのよ」


「婚約破棄された癖に」

「私から略奪した癖に」

 それを機に、私とジャンヌを無視して、その2人はそう言って口論を始めた。

 ある程度続いた後、ずっと沈黙していた3人目の少女が口を開いた。

「はいはい、それまで。一応、停戦協定に全員が調印した身でしょう。それにサラさんに受け入れてもらえなかった場合、行く当てがあるの」

 ぐっと詰まったらしく、2人は沈黙した。


「ごめんなさい。まだ、どうにも感情の整理が完全には付かなくて。自己紹介をするわ。私が村山愛、前世での名は村山キク。あなたのお祖父さんの最初の相手になるわ。日本語で大丈夫かしら」

 3人目の少女が口を開いて、自己紹介をした。

「ええ。大丈夫です。日常会話はできます」

 私は、目の前の口論に毒気を抜かれてはいたが、辛うじてそう返答した。

「よかった」

 村山愛こと村山キクは、花の咲くような笑顔を示した。


「私が土方鈴、前世での名は篠田りつになるわ。お祖父さんの2人目の相手ね。婚約者だったわ」

 婚約者だと言った2人目の少女が言った。

「私が岸澪、前世での名は岸忠子。あなたのお祖父さんの正妻よ」

 正妻と称する3人目の少女が言った。

 ただ、問題は3人共、どう見ても10代前半なことだ。

(村山愛に至っては、10歳未満でも通る童顔だ。その癖、一番、大人びた口調なのだ。)


「そして、私がお祖父さんの4人目の相手だったわけ。生まれ変わるまで知らなかったけどね」

 その後、ジャンヌがあっけらかんと言った。

「さすが元街娼。堂に入っているというか」

「というか、それを言って良いの?サラさん、知らなかったんじゃ」

「良いわよ。真実は知らせるべきよ」

 他の3人が小声で話すのが、私の耳に入り、私は硬直して思わず叫んだ。

「ジャンヌ。街娼していたって、本当」


「もう、家族全員にずっと秘密にしていたのに。前世の話だから、サラもそう叫ばないで。今もやっているみたいじゃない」

 ジャンヌは、舌を出しながら言った。

「お祖父さんとは、日本海兵隊の病院の入院患者と雑役婦として知り合ったという話は嘘だったの」

 私は、ジャンヌを詰問した。

「「「大嘘です」」」

 他の3人が即答し、私は卒倒しそうになりながら考えた。

 この4人との同居生活、やっていけるの。

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