第2話
本文での説明を省略してすみません。
女主人公のサラは、自身がいわゆる日本人のクオーターであること、また、息子の嫁(生まれ変わってきたジャンヌの実母)が日本人であることから、興味を持って日本語を勉強したことから、日本語での日常会話が可能です。
息子からそう頼まれてしまい、私は祖母にして孫のジャンヌに加え、義理の祖母3人(?)の面倒を急に看る羽目になった。
流石に事が事だけに、他の3人の個別の身内からも、私に直接の電話があり、よろしくお願いします、と電話越しに頭を下げての依頼があった。
特に土方伯爵からは、直接、フランス語で可愛い孫娘にして祖母をよろしく頼みます、と頼み込まれた。
更に思わぬ人からの電話があった。
「サラかい」
若い男性の声で、いきなり電話越しに問いかけられた。
「はい、そうですが」
警戒しながら、私が答えると、その人は更に言った。
「分かってはいたけど、孫娘の方が、年を取っているのは不思議な感じがするな」
孫娘と私を呼ぶという事は。
「ひょっとして、生まれ変わってきたお祖父さん」
「そうだ。本当に迷惑をかける」
私の問いかけに、その男性は答えた。
「本当なら、直接、フランスに行って、君に会って、彼女たちのことを自分で頼まねばならないが」
その男性の言葉に、反射的に思わず私は怒鳴った。
「私の祖母を含む女性4人との間に子どもを遺して、勝手に死んで、来世でも迷惑をかけて。孫として迷惑を掛けられすぎです」
「サラの言う通りだ」
その男性は沈んだ声で言った。
「とは言え、私が意図してそうした訳ではないことだけは分かって欲しい。詳しいことは、彼女達が自分から更に話してくれるだろう」
「そうですか」
私は冷たい声で答えた。
「金で済む話ではないが、できる限りの支援は私からもするつもりだ。彼女達をよろしく頼む」
「分かりました」
渋々、私は答えながら、内心でさらに毒づいた。
何で孫とは言え、愛人が産んだ息子の娘が、祖父の女性4人全員の面倒を見ないといけないのだ。
更に数日後、とうとう祖母達(?)がやってくることになった。
その間に、私は祖母達が通う学校の手配等で、忙しく動き回る羽目になった。
更に祖母達が住む場所だが。
「私と同居するというの。ジャンヌ達は」
電話越しということもあり、面倒くさくなった私(と息子)は、祖母達を「ジャンヌ達」と呼んだ。
実際、日本では、彼女達の呼び方で一騒動が遭ったらしい。
何しろ、私もそうだが、土方伯爵達にしてみれば、祖母にして孫娘というややこしい立場になる。
更に名前が問題になった。
私の祖母にして孫娘は、前世でも現世でも、名前はジャンヌ・ダヴーなので、まだしもなのだが。
他の3人、特に土方鈴に至っては、前世では篠田りつ、と姓名共に違う名前になる。
前世では別の名前で70年以上呼ばれてきて、その記憶もある以上、10年余りしか呼ばれていない現世での名前で呼ばれることに違和感が抜けない、という事態が他の3人には引き起こされたらしい。
「中身は80年以上生きているけど、外見は10代前半だから」
息子は、懸命に言い訳をした。
「ジャンヌ達だけで生活する訳にはいかないだろう。かと言って、どこか寮のある学校で寮生活を送らせたら、それはそれで問題を引き起こして、生まれ変わりの事がバレそうだ。だから、秘密を知っている人と同居させて、面倒を見てもらうのが最良ではないか、と皆で考えたんだ。ジャンヌ達も賛成した」
「確かにそう言われると否定しづらいわね」
私はそう言わざるを得なかった。
実際、私は今、一人暮らしを自宅でしているが、その自宅というのは、息子夫婦と二世帯同居を前提としたちょっとした邸宅で、私一人では広さを持て余していたところだ。
カサンドラ母さんからもらった遺産をフル活用して作った邸宅で、ジャンヌ達4人全員が個室を悠々と持てる広さを持っている。
「分かった。ジャンヌ達を引き取るよ」
私は盛大に溜息を吐きながら、息子に同意せざるを得なかった。
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