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第1話

 あらすじにも書きましたが、「僕の人生の一番長い一日」本編直後の後日譚的な話です。

 いきなり、祖母にして孫のジャンヌ達の面倒を、女主人公のサラは見る羽目になります。

「何だって。私のお尻の上に、小さい頃は蒙古斑があって、その理由をジャンヌお祖母さんに聞いて、泣いて一生忘れない、と幼い頃の私が言ったかって。何で息子のお前が知ってんだ」

 最近、私のお気に入りになっている自宅のサンルームでの昼寝の寝入り端に、いきなり日本から掛けてきた息子の長距離電話でたたき起こされてしまった私の気分は最悪だった。


 しかも、息子がとんでもないことをいきなり聞いてくるのだ。

 私が幼い頃は、お尻の上に蒙古斑があって、ジャンヌお祖母さんにその理由を聞いたか、などと。

 思わず、かつて現役軍人時代に部下を叱責していた時に使っていたような伝法口調を、息子に私は取ってしまった。


 息子も、それこそ生まれてからの付き合いで、私が機嫌が悪い時には、こんな口調になるのは分かってはいるが、それよりも自分の一人娘、私の孫に起きた事態が遥かに重要だった。

「本当なんだね」

「本当だとも。そもそも、息子のお前が何で知っているのか。それを教えな」

 言う事をさっぱり聞かない、できの悪い部下に対しての心底怒ったときの口調で、私は更に言った。


「信じて貰えないと思うけど」

 久々に聞く私の伝法口調に、息子は縮こまっていたが、言うしかない、と覚悟を決めたようだ。

「一人娘のジャンヌが、ジャンヌ曽お祖母さんの生まれ変わりで、その記憶がある、と言い張るんだ。その証拠として、さっきの話を言ったんだ」

 息子は、ぼそぼそと言った。

 私は、眠気が吹き飛んだ。


「ちょっと。嘘じゃないんだね。生まれ変わりだなんて信じられないよ」

「嘘じゃないよ。自分だって信じられないけど」

 私と息子は更に会話した。


「そもそも何で生まれ変わりなんて、ジャンヌは言い出したんだい」

 私の問いかけに、息子は暫く沈黙した。

 後から分かったことだが、どう説明すればいいのか、息子は頭を抱え込んでいたのだろう。

「さっさと、はっきり言いな」

 事が事だけに、イライラが募った私は、息子を怒鳴りつけた。


「実は、今日、女学校の入学式に、ジャンヌが出席したんだ。その際に、何て言えばいいかな。お母さんのお祖父さん、ジャンヌ曽お祖母さんの相手の生まれ変わりもいて、更にその男性との間に子どもができた他の3人の女性の生まれ変わりも現れたんだ。それで、顔を合わせた瞬間に、生まれ変わる前の全員の記憶がよみがえって、女性同士の酷い修羅場になったんだ。今、その後始末をどうするか、関係者全員が頭を抱え込んでいるところなんだ」

 息子のさっぱり要領を得ない説明は、私の内心を更に苛立たせたが、その一方で、これは大変な事態だという想いもこみ上げてきた。


 こんな生まれ変わりの事態、雑誌やネット等で流されたら、どんな事態が更に起きることやら。

 フリーライターになっている姪のマリーとかには、絶対に明かせない事態だ。

(マリーの倫理自体には、私には信頼がおけるが、その周囲のライターまで信頼できるものか。

 更にマリーが、うっかり周囲に明かさないと絶対に言えるのか、というと。)


「それで、どうするつもりなんだ」

 周囲に誰もいないにもかかわらず、私は思わず声を潜めて、息子に電話越しで尋ねた。

「迷惑をかけて、申し訳ないと思うけど」

 息子は躊躇いながら、一瞬、沈黙した。


「曽お祖父さんの相手の女性4人の面倒を、事実上、見てもらえないだろうか。ジャンヌ曽お祖母ちゃんが言い出した話なんだけど」

 息子は、腹をくくって言った。

「質の悪い冗談は止めてよ。何で、私が面倒を見るのよ」

 私は抗議した。


「だって、彼女たちからすれば、お母さんは義理の孫じゃないか。祖母の面倒を見るのは、義理から当然ということだから」

 息子はそう言って、私に押し付けた。

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