先輩
後日、神谷と笹崎は、少年院へと送られたという話を武蔵先生に聞いた。教室中では、犯罪行為に立ち向かった勇気ある人間という扱いで見られようになった。
俺は、案外悪い気持ちでなかった。日陰者が、チヤホヤされるということが、この先何回あるだろうか? 最初で最後の可能性だって大いにある。
神谷と笹崎のせいで不登校になっていた生徒も保健室登校出来るようになったらしい。まだ、メンタルカウンセリングが、必要ということで完全な回復には、至っていないみたいである。だが、ここまで回復するのは、医者も思っていなかったみたいで俺は、その二人の生徒と医者に感謝された。
「一躍人気な気分は、どうですか?」
インタビュー気取りで質問する真礼。
「えー、そうですね! 初めてのことで戸惑っています。まあ、困っている人を助けるのは、当然なのでね! ガハハ」
俺は、調子に乗って答えた。真礼は、ネタを振ったわりにドン引きしているようであった。一躍学校中のヒーローみたいな存在になってしまい、休み時間中には、生徒が殺到して休む暇もなかった。
やはり、いつもの孤独にいる時間の方が、似合っているなっとしみじみと思い返すのであった。
移動教室の時間に俺は、筆箱を教室に忘れたので取りに戻った。教室には、誰かいるようであった。見たこともない女性である。
「いやあーん」
その女性は、着替え中であった。豊満な胸に豊満なお尻。どれをとってもグラマラスボディーである。身長は、165センチくらいであろう。髪は、茶髪のツインテール。そして、男を虜にしてしまうスタイルの良さであった。
「何してるんですか? そこ俺の席なんですけど」
「あら、そうなの? ごめんね! ちょっと用があって」
紫の下着姿に今にも飛び出しそうな胸の谷間。こぼれそうな胸とは、まさにこのことである。視線は、どうしても胸にいってしまう。
「そうなんですか。誰に用ですか? 僕で良かったら、呼びましょうか?」
胸を凝視していることが、バレたのか女性は、誘惑するように谷間を俺に近づける。
「小浮気って子を探してるの。知らない? それと君さ、私のおっぱい見すぎだぞー! もしかして童貞? 卒業させてあげよっか? お姉さんの身体じゃ、刺激強いよね? 顔、真っ赤だよ? あら、あそこも真っ赤になってたり? かわいいー」
そりゃ、そんなにおっぱい強調した服装でいれば、誰も凝視してしまう。ましてや、思春期の中学生になら、当然のことだ。胸を揺らし、人差し指を舐めて甘えたような顔をつきをする女性。この人は、誰なんだ。
「小浮気なら、俺ですけど。ってか、服着てください!」
胸への視線を逸らして俺は、答える。
「へえー、君だったんだ! やっと会えた! 会えた記念におっぱい触ってもいいよ? 触る? 好きでしょ? こういうの」
俺の手を握り、胸に手を当てさせる。柔らかい感触。すごい柔らかい。弾力のあるマシュマロのような胸である。
「や、やめてください。お、おれ、一応彼女いる身なので」
名残惜しいが、胸から手を離した。真礼に殺されてしまう。
「そうなんだ! 別に今なら、誰もいなしいいんだけどね! 彼女いるんだ。でも、私のおっぱい触った変態君」
まさに彼女の言ったことは、図星だろ。触ってしまったからには、変態と言われても仕方ないと思った。
「ってか、あなたは、誰ですか?」
「あ、遅れたね! 私は、中学三年の八月一日美冬だにょん!」
やっと制服と着てくれて、目線を気にせずに話せる。先輩のようである。それにしても俺に何の用なのであろうか。
「俺は、小浮気隼人、中二です!」
「知ってるう! 有名人だから!」
「そうですか?」
俺は、照れて首の後ろを搔いて口元を緩ませる。
「君は、どこまで知ってるの? 因果応報使ってるんでしょ?」
先程とは、打って変わり、真面目な顔つきになる美冬。彼女もまた、因果応報を使用したことのある人間なのであろうか。
「使ってます! これで、俺の人生が、救われたと言っても過言ではありません。これが、なかったら、今でも俺は、死んだ魚のような目をして生きていました! これに出会って俺は、大切なことを学びました。そして、大切な人に出会いました! それが、いけないと言うことですか?」
俺は、正直に答えた。嘘を言ってもどうせ見抜かれると思ったからだ。どうにも不思議な感じがしてならない。
「なるほど、なるほど、まだ、間違った使い方は、してないようね! なら、安心したわ! あなた、小浮気君は、いい子なんだね!」
俺の頭を撫でて赤ちゃんをあやすようにする美冬。包容力のある女性だなと感じさせられる。
「間違った使い方とは?」
「えっとね。まず、あなたが、社会的な復讐の為に使用したとします。その因果応報は、あなたに返ってきます。すると、自分の身体の一部に障害をもたらすことになるでしょう! 間違った感情は、自分に返ってきたという知り合いを私は、知ってるわ! そうなる前にあなたに伝えたかったの! そしてその間違った感情に支配されている友人を止めて欲しい! どうか、お力を貸して頂けませんか?」
簡潔にすると、間違った感情で使用する際には、自身の身体を破綻させるということか。これは、道徳に反する行為での復讐の際に利用した時に限るのか。では、俺のやった因果応報は、正攻法だったといえるのであろう。その為に身体機能に異常をきたしていない
美冬の胸を触ってしまったという罪悪感もあるために、断る訳にはいかないという理由もあるので了承しよう。
「俺でよければ! 助けますよ! 俺で出来ますかね?」
「出来るよ! 小浮気君しか、出来ないことだから」
美冬は、口元を緩ませて俺の手をしっかりと握る。すると教室のドアが、開く音がした。誰か来たようであった。
「ねえ、勇人その人誰?」
真礼は、真顔で低い声て言っていたので怒っているのが、すぐ分かった。真礼が、怒った時は、すぐに声に出る。あからさまに声が、低くなり、真顔になるのだ。
「いやいや、この人は、先輩であって、あの、そのそういう訳じゃなくて」
俺は、手を振りながら、必死にこの状況を説明しようとしたが、時既に遅し。真礼は、俺にビンタをした。痛い。
「全く、最低! こんなことするために教室にいたなんて! ばーか。ふんだ!」
ご機嫌悪い様子でいる真礼。俺は、床に寝転がってヒリヒリする痛みがとれるのを待った。
「あらら、派手にやったわねー! あなたが、小浮気君の恋人ね」
先輩の余裕か、胸の余裕か、笑みをこぼす美冬。
「そうですけど、あなたは、もしかして八月一日さん?」
真礼は、吃驚したようで手を口で押さえた。
「ええ、そうよ!」
「生徒会長の人が、勇人に何か用あるんですか?」
「そうね、好きになっちゃたから、付き合いたいって言ったら?」
悪戯な笑みをこぼし、真礼をからかう美冬。
「いやいや、違うからね。真礼」
俺は、痛みが取れて立ち上がり、腕を振り否定した。
「八月一日さんだったら、勇人嬉しいんだろうなって思いますけど、あたしの方が好きなんであげません! 誰にも勇人は、渡しません! 愛してますから」
顔を真っ赤にしながら、宣戦布告をするように真礼は、不敵な笑みをこぼす。
「ふふふ。ごめんね! 冗談! 真礼ちゃんに愛されてるんだね! 小浮気君は、幸せだなー! ちょっと眩しすぎて、私、溶けちゃいそう」
口元を押さえて笑みをこぼして、二人共笑っていた。
「で、美冬さん! 俺は、何をしたらいいんですか?」
「そうね! まずは、その子と会ってもらっていいかな?」
顎に手をやり、瞬きを数回し、いいアイデアは、ないかなーっとでも考えているかのようだった。
「了解です! いつですか?」
「今日は? どう? もしかしてデートだった?」
後輩をからかう先輩のノリで茶化す美冬。
「いえいえ、いいですよ! あたしは、大丈夫です! 生徒会長さんのお願いなら、聞いてあげてよ! 勇人」
丁寧な答え方をする真礼。機嫌が、治ったみたいで良かった。
「じゃあ、行ってくるな!」
「はーい。今日は、ご馳走にしてあげるから」
「ありがと」
「フフフ。新婚みたいだね! 羨ましいー」
何かと、からかってくる美冬さんは、楽しそうであった。真礼もノリに慣れたのか、上手い具合の流し方を熟知しているようである。さすが、女子だなって感心した。
「放課後よろしくね! ヒーローくん!」
「はーい」
教室のドアを開けて、三年生の教室へと戻っていく美冬。それに流れで手を振り、見送る、真礼と俺。
授業が、終了し、放課後へとなった。真礼は、大谷と遊ぶらしい。今日は、日頃のストレス発散の為にカラオケへと行くと言っていたな。
俺は、教室の掃除を終わらせて、昇降口で美冬さんを待った。
「お待たせ! よっし行こう!」
制服をきっちり着こなしていると、それは、それで下着姿よりも魅力的である。
「はい、で、どこに行くんですか?」
「その子のおうち!」
「なるほど」
伊座敷中学校を出て、校門の近くにある自販機の角を右に曲がり、街路樹が、連なる道を五分程真っ直ぐに進み、イオンの近くに出た。
イオンの隣には、団地があった。この団地が、どうやら、その子の家らしい。インターホンを鳴らして美冬が、その子の名前を呼んだ。
「紗央! きたよ! 美冬だよー!」
フレンドリーな口調で話す、美冬は、生き生きしているようにみえた。数秒してから、ドアが開き、紗央が出てきた。
「美冬か。何? うち、もう学校いけないよ」
死んだような目をしていた。長い髪で目にかかっており、ジャージ姿であった。かつての俺のような目である。妙に親近感を覚えてしまった。同じ因果応報の使い手だからということもあるだろうけど、家庭環境もそうなのかもしれない。紗央の家には、他に誰も住んでいないような雰囲気を感じた。
「誰、それ?」
「あー、ちょっとした学校のヒーローだよ!」
「えっと、小浮気勇人です。よろしくお願いします!」
俺は、咳払いをし、吃りそうになりながらも、自己紹介を終えた。反応は、勿論薄かった。この感じは、慣れている。むしろ、この感じこそが、俺なんだよなー。
「よろしく! 入って!」
「おっじゃっまー!」
友人に会えた喜びか、テンションの高い美冬。生活感のないリビングへと招かれた。申し訳程度のコーヒーを出してくれた。
彼女が、本当に間違った使い方をするのであろうか、疑問を覚えた。
「ワイは、わかるでー」
ナルミが、ここぞとばかり起床。勿論、ここにいる三人は、ナルミのことが、見えている。そして、その声に驚くことは、なかった。
「へえー、小浮気君は、こういう子なんだー!」
ナルミの頭を撫で撫でしている美冬。ってことは、紗央にも妖精が、存在するということだろう。
「私のは、ダイゴっていう男の子」
「ウィッス。ウィッシュ! きもてぃーー!」
変な革手袋をつけている少年の妖精。いやー、なんか、こんな芸能人みたことあるなーって思いながら、コーヒーをいただいた。
「で、話の本題をそろそろ教えてくれませんか? 俺には、紗央さんが、どうにも普通にしか見えないんですけど」
紗央は、じっと俺の顔を睨みつけた。容姿も整っているし、学校にいれば、そこそこ人気のありそうな女の子にしか見えなかったからだ。
「そうね、じゃ、私が話すわ! 紗央は、元々孤児だったの。そして、肉親でない父に性的虐待を受けて育ってきた。ある日、紗央は、自殺を決意したみたいで私に手紙を渡したわ! 『今までありがとう』って私は、その自殺を止めようとしたわ。その時に因果応報の力を紗央は、得たの」
美冬が、話しているのを聞いていた紗央は、それを遮った。
「美冬! 後は、私が話すね! 因果応報を手にして私が、まずしたことは、なんだかだいたいあなたになら、わかるよね?」
紗央は、ボサボサだった髪をツインテールに縛り、俺に問いかける。
ここで考えられるのは、父親に因果応報を使用したことか。いや、それなら、俺と一緒なはずだ。障害をきたすはずがない。だとすると、そういうことか。
「憶測ですけど、なんとなくわ」
「さすがね! 多分、図星かな? 父親を私は、殺したの!」
美冬にくっついて紗央は、目を瞬かせた。
しかし、俺もそれに近い状況になった。それを止めなかったら、俺も一緒のことになっていたということなのか?
「じゃあ、ナルミ。俺も殺してたら、同じようなことになってたのか?」
「やで、そうや」
ナルミは、リラックスした様子で本棚にある本を勝手に漁っている。紗央は、少女漫画が好きだったようである。
「紗央さんは、どのような障害を持ってしまったんですか?」
恐る恐る聞いてみると、俺の様子を窺いながらも答えてくれた。
「脚が、動かないの完全に麻痺してしまって」
ジャージを捲り上げて白い肌の脚をみせてくれた。見た感じでは、さっぱりわからなかったが、歩いている時は、引きずりながらであることを思い出した。
それにしても命と引き換えに障害を持つということを解消する術があるのだろうか。紗央の脚は、綺麗だった。こんな綺麗な脚を見せつけて歩けないなんてもったいなことだ。
「それで、紗央さんは、治したいの?」
「ううん、でも、治らないのきっと、これが、私の罰だから、ごめんね、見ず知らずの悩みなんて聞いてもらってしまって」
紗央は、首を横に振り、無理ということを覚悟しているようであった。
父親を殺した罪滅ぼしとして脚くらい動けなくても命があるからって思っているようであった。
美冬に頼まれたからには、なんとかしてあげたいが。いい方法を考えるんだ。可能性は、きっとある。常軌を逸してこそ道は、開けるんだ。風穴を突破口は、きっとある。どこだ、どこにあるんだ。
「ナルミ、お前なら、わかるか?」
「ワイなら、わかるで! こいつを抹消させれば治る」
ナルミが、指差した奴は、ダイゴであった。そうか、妖精を殺せば、その因果は、もうそこになくなるのか。
「ただしその女が、望めばの話な」
「私は、ダイゴに命を救われた。殺すなんて無理だよ……」
紗央は、ダイゴの手を握り、「ウィッシュ」ポーズを取っていた。これが、いいなら、俺の出る幕でもない。
この発言が、偽りでもない限り、俺の出番は、必要でない。でも、きっと美冬は、望んでいるのであろう。一緒に学校へ通うことを。
「美冬さん、どうしたらいいですか?」
「そうね! ごめん、小浮気君! やっぱり、いいや」
無理に笑顔を取り繕っているのが、俺にでも分かった。手をパーにして頭を下げる美冬。彼女が、望んでいないなら仕方ない。
今日のところは、帰宅することにした。「困ったら、連絡してくださいと」言って俺は、紗央の家を後にする。
しかし、妖精を殺すという方法は、あるのだろうか。ナルミが、殺るのか。それとも俺が。あまりにもよく分からない状況なので夕焼け空を見て、考えることをやめた。
家に帰れば、真礼がいるんだ。思わず、スキップをしてしまうほど、ルンルンな気分であった。
父親を殺したというのは、間違った使い方なのか? どうも引っ掛かる。殺すことは、間違いではあるが。それだけの憎しみがあった場合は、どうなのか。
もっと違うことをしているんじゃないのか? 社会に対してと美冬が、言っていた。これは、もしかしたら、大変なことになっているのか?
しかし、考えていても仕方ないし、顔を叩き、自動販売機でいろはすを二つ買い、帰宅した。
「おかえりー」
「おおおー。なんだよその格好は?」
あまりにも過激というか、セクシーな格好をしている真礼にどこを見ていいか、分からなくなる。
そしてなにより、かわいい。
「え、なんか。男の子ってこういうの好きって奈央が言ってたから、やってみたの? え、勇人は、こういうの嫌いなの?」
裸にエプロンをかけている姿は、確かに綺麗だ。興奮してしまう。アニメとかだったら、鼻血がいっぱい出ていただろう。
しかし、理性を保て俺。彼女では、あるがな。我慢は、大切。
「そうなの? 普通にかわいいよ! 真礼ってなんでも似合うしさ、その何しててもかわいいよ!」
そう言って、ソファーに座ると真礼は、その格好で抱きついてきた。ちょっと熱くなるからね、刺激強い、強い。
「ありがと!」
キスをして真礼は、すぐに服を着替えだした。その様子を見る訳にもいかないので俺は、寝室で待つことにした。
最近起きた事件について俺は、ネットを利用して調べることにした。社会という言葉が、関係しているとすれば、必ずネットニュースになるくらいの事件になっているのだろうから。
案の定、俺の考えは、当たっていた。
『恨み代行サイト』
事件には、なっていなかったが、あるネットサイトのクチコミに目を通した。
『彼氏の浮気を懲らしめました。夫のDVに悩まされていたのですが、ここで相談した結果、不慮の事故で亡くなり、安心した毎日を送れるようになりました』
どうやら、メールアドレスに相談内容を入力すると、恨みを代行してくれるという仕組みらしい。
それにしてもこれが、紗央の仕業なのだろうか。
『魔法少女サリーが、解決します』
サリー? 魔法少女? そうか、因果応報の力を魔法と見立てているのだろう。これが、社会に対する間違った使用の仕方。
ようは、金儲けの手段として利用しているんだ。生活費を稼ぐということをすることは、決して悪くはないと思うし、ここに相談した人も救われているとは、思うんだが、倫理にかけている気がする。
「ナルミ、これは、ダイゴの仕業だろ? あいつが、なにか、話を持ちかけていたんだろ?」
「せやな! あの女は、利用されているだけだろ。これの方が手っ取り早く、因果を集められるし、プラス金も手に入ってWIN―WINの関係となるやろ? まさにダイゴは、頭がいい妖精だ」
ナルミは、薄々勘づいていたようである。そうか、本棚を漁っていたのは、そのためか。確か、『人に信じさせる話し方』という本があった。あれは、このビジネスを成功させるための手段の一つとなっているだろう。
そして、これには、美冬も協力しているのだろうか? それによって話が、変わってくるぞ。生徒会長という立場だから、問題になるだろうし、生徒の模範となる存在を反する行動になる。
しかし、彼女が言っていたことは、友人を止めて欲しいということであった。このことから、『恨み代行サイト』は、紗央とダイゴの手だけで動いているのだ。
「でっきたっよ」
真礼が、部屋を開けて抱きついてくる。本当に甘えん坊だなー。真礼って。
「はい、ありがと!」
「なにこれ、怖くない?」
真礼は、震える身体を抱いて安心させようとした。真っ暗なサイトだから、確かに女の子には、少々恐さを覚えるのだろう。
「これが、その先輩に頼まれたやつだと」
「恨み代行サイト? これ、今、学校で話題だったよ! 確か、あたし達のクラスでもやってる子いたみたい」
真礼は、髪の毛を揺らし、顎に手をやり、「でも、早くご飯食べたい」と言わんばかりの表情をしていた。
真礼の髪からは、甘い香りがしていて好きな匂いランキングがあるとしたら、断然一位であろう。うん、俺、調べだけどね。
「まじで? 明日、色々聞いてみる! 待たせて悪かったな、早く食べるか!」
「うん! 勇人の好きなカレーライスだよ!」
「やったー! 真礼のカレーとか、何年ぶりだろう? 楽しみだなー」
俺は、笑顔を取り繕って不安にさせないよう振舞った。真礼には、笑顔でいて欲しいから、この問題は、俺がなんとか出来ると思う。
カレーライスを食べてみると、激辛カレーライスだった。なんだ、この激辛……。
「真礼、これ辛くね? 水くれ」
「え、勇人大丈夫? はい、飲んで。そんな辛いかな?」
真礼も食べてみると、顔を曇らせて水を飲み始めた。
激辛カレーライスは、俺と真礼を苦しめた。しかし、味は、かなり美味しかった。
「美味しいけど、辛すぎるよ」
俺は、完食した皿を見ながら、くたびれた顔をした。一気に新陳代謝が、良くなって汗いっぱいとなった。
「うん、今度は、辛さ調整しっかりするね! 汗いっぱい掻いてるみたいだし、勇人お風呂入ったら?」
真礼は、食器を片付け、流しで洗いながら、お風呂の勧めをする。
「そうだな! じゃあ、入らしてもらうわ!」
俺は、そう言って風呂場で服を脱ぎ、風呂へと足を踏み入れた。まずは、シャワーを浴びてだらーっとしていると、違和感が。
風呂場のドアが、開き、音がしている。そして風呂のドアが開き、シャワーを浴びている俺の元へ真礼が、バスタオルをつけてやって来た。
子供の頃、お風呂に入ったことは、あったけど、もう俺らも大人の身体へと近づいてるわけだしね。バスタオルから、こぼれそうな胸にドキドキしてしまう。
「えへへ、勇人と入りたくて来ちゃった!」
顔を真っ赤にしているのは、ドキドキしているのか、それとも血行が良くなっているのかは、分からないが。艶っぽい大人の顔になったなーって改めて思った。
「入りたくなっちゃったって……。俺は、いいけど、真礼その綺麗過ぎて」
「いいよー! それより身体洗ってあげる! ほれほれ、真礼お姉さんが、洗ってあげますよ!」
ゴシゴシタオルを持ってきてボディーソープをつけて俺の背中から、ゴシゴシと擦ってきた。チクチクとした痛みが、伝わって来るが、これはこれで案外悪くない。
「何が、真礼お姉さんだよ!」
「え、だって、あたしの方が、誕生日早いから! ね、お姉ちゃんでしょ?」
確かに真礼は、七月生まれで俺は、一二月生まれなので言われてみれば、お姉さんというのは、あながち間違いではない。背中は、泡いっぱいになり、そしてお腹側の方を洗ってくれるというので真礼に向けた。
「すっごいい。あたしで興奮してくれて嬉しいな! ちょっと、八月一日さんのことで頭いっぱいなのかと思ってたし」
微笑む真礼は、俺のお腹を何回も指で突っついてくる。くすぐったい。そして、恥ずかしい。
「いや、そのマジマジとみられると恥ずかしい……。あれは、頼まれたことだから、なんとか力になれないかなってその真礼のことは、愛してるよ!」
熱くなるところも真礼は、洗ってくれ、ボディーソープをシャワーで流してくれた。ツルピカになった身体は、心と共にスッキリとなった。
「ねえ、勇人。あたしのさ、身体も洗って欲しいって言ったら、やってくれる? 洗いっ子したいなって思っててさ」
バスタオルを取り、生まれたての身体で真礼は、恥ずかしそうに胸へ手を当てて手ぶらをした。
湯気で際どい所は、あまり見えなかったが、どこから、洗えばいいのだろうかと悩みながら、ボディーソープをゴシゴシタオルにつけて、ぼーっとしていると、真礼が、俺の手を握って「背中からでいいよ」とゴシゴシタオルを背中に当てて擦った。擦っていると喘ぎ声に近いような声を真礼は、出すので心が、乱れかけている。
落ち着け、平常心を保つことが、男の生き方だ。
「気持ちいいよ。すっごく男の人の手になったね」
艶っぽい声で言うのでいつもより色っぽい真礼。手のことを言うので自分の手を見つめてしまった。そういえば、昔から、手だけは、綺麗って言われてたなー。
「な、なら、よかったよ。背中だけでいいよな?」
背中をシャワーで流して、終わったぜと思って、浴槽に入ろうと俺は、一歩動いた。だが、真礼は、こっちもやって欲しいらしい。
「胸の方も洗って欲しい。あたしだって洗ったから、お相子だよ!」
確かに俺もそのデリケートな部分を洗ってもらったけどさ、女の子の方が、そのデリケートの部分が多いと思うからさ、どうにも羞恥心が捨てきれない。
だが、お願いとなれば、不可抗力に近い。俺が、切望としてこの行為をしてるわけでないという証になる。やりたくないといえば、嘘になる。むしろ、やりたいに決まっている。
「わ、わ、わかった」
俺は、たっぷりと冷や汗を掻いた状態で真礼のデリケートな部分を慎重にゴシゴシタオルで擦り、出した。思ったより、柔らかい女の子の身体。
プルプルと動く肌や胸。
「ああーーん。そこ、だめえーー」
真礼は、悶えている。悪戯とばかりに何度も何度もデリケートな部分を拭いてあげる。いつもは、いじられているから、今日くらい俺も真礼は、いじりたい気持ちになっていた。
「でも、嬉しいの?」
「うん、感じる。こんな気持ち初めて、エッチになっちゃったね真礼お姉さん」
まだ、そのお姉さんキャラやってたのか。
デリケートな部分を洗い流して、洗いっ子は、終了した。真礼は、浴槽へと入り、「勇人も一緒に入ろうよ!」と言うが、浴槽に入れるのは、精々一人だ。
「さすがに、狭いからさ。俺は、もう出るよ!」
俺は、風呂から出ようとした。しかし、腕をガッチリと掴まれて「待って」と言い、何か、真礼が、思いついたようである。
「勇人一回一人で入ってみて!」
言われるがままに俺は、一人で入った。すると、その後にだ真礼は、俺の股の上に乗っかって「これで二人で入れるね!」と微笑む。
しかし、真礼は、結構軽いなー。何キロあるんだろう。スタイルを保つ秘訣でもあるのだろうか、女の子に体重の話は、タブーだけどね。
「狭くない? 真礼揺れてるよ」
俺が、そう言うと「ばか、うるさい口は、閉じちゃうぞ」っと言いながら、キスをしてくる。キスをして口を閉じさせるとは、真礼は、結構大胆だな。
「真礼は、こういうことどこで勉強したの?」
俺は、疑問を投げ掛けた。
「漫画とかネットに決まってるでしょ! その初めては、勇人なんだから、これからも最初で最後の相手は、勇人に決まってるから、いい女になりたくて」
俺の手を胸で挟み、甘えた口調で質問に答えてくれた。真礼の胸の鼓動が、伝わってくる。これだけ、ドキドキしてるんだよって分かって欲しくて、俺の手を胸に当てさせたのであろう。俺も真礼の手を胸に当てさせた。
「俺もこんなにドキドキしているよ! 真礼は、自慢の女の子だよ! 俺には、もったいないくらいの女の子だよ! だから、ありがとな」
俺を喜ばせたいという気持ちから、色々勉強していてくれたことに感激したと同時に真礼を好きになってよかったという気持ちが、改めて強まった。
しかし、浴槽に浸かっているのは、さすがに身体に堪える。脱水症状気味に近づいてきた。のぼせてしまったのか、頭痛が、してくる。
「ごめん、真礼、ちょっとのぼせたみたい」
「あたしもかも、出ようか!」
「ああ」
「ねえ、また入ろうね! 今度は、もっと気持ちよくしてあげるから! 楽しみにしててよね!」
「俺も気持ちよくしてあげるな!」
お風呂から、出て脱水症状気味な身体に『いろはす』を投入にする。喉がカラカラの時飲む水が、格別だ。どんな高級料理にも勝るであろう。
真礼は、ドライヤーで髪を乾かしている。半同棲生活に近い状態になっているのは、真礼と俺の仲だからこそであろう。真礼の親は、俺のことを何かと気にかけてくれる優しい親であり、俺の親とは、正反対だった。出来たら、蟋蟀家の家族になりたいって何度も思ったこともある。親がいないとくれば、真礼の親も助けてあげなと言ってくれたのは、容易に想像することが出来た。あの親なら、こんなに優しい娘も生まれるものであろう。環境が、人を育てるというのは、あながち嘘ではないし、真実であろう。
「勇人ー! 今日も一緒に寝ようね!」
髪を乾かし終え、ピンクのかわいいタオルを肩にかけながら、真礼は、今日も元気をくれる女神のような存在であった。




