京都
2日目になった。
温泉は、最高に気持ち良かった。あれだけの広さを俺、1人で楽しめたのは、最高である。他の生徒達は、とっくにいなかったので実質1人であった。心地良い、露天風呂は、疲れ身体を癒してくれた。
朝の点呼を武蔵先生が、確認し、俺らは、制服でまたバスへと乗り込んだ。
本日の行き先は、学問の神様がいらっしゃる北野天満宮である。受験生である俺達にとっては、ゆかりの深いところでもあるだろう。
真礼は、松岡の隣に座り、俺は、小和の隣に座った。
「しっかりお願いしようね! 3人が一緒の高校行けますようにって」
小和は、手を合掌させて祈るようにして微笑んだ。まだ、早いよ、ここバスだからねっと思ったが、その無邪気な姿勢は、羨ましかった。
「ああー。そうだな! 祈ろうな!」
「勇人君、ちょっとスッキリしたね! 昨日よりも」
「よくわかるな!」
「妹だからね。一応」
澄ました顔で小和は、胸を張った。まだ、発達途上の胸で。
「小和は、修学旅行楽しんでるか?」
「うん、とっても1年前の私からは、想像出来ないくらいに楽しんでてちょっと怖い。この当たり前が、いつか、失くなるんじゃないかって」
「なくさせないから、心配しろよ! 俺がな!」
「かっこつけて! 勇人君は、そういうとこあるよねー!」
俺は、小和と他愛もない話で花を咲かせて、その間に北野天満宮へと到着した。駐車場を降りると、他にも学生や外国人や老人等、老若男女が、大勢いた。それを見ただけで目眩を起こしそうになる。
「じゃあ、集合写真撮ってからは、自由行動ね! 12時までには、バスへ戻ること!」
武蔵先生が、そう言ってから、集合写真を撮り、自由行動へと変わった。班行動ではないが、俺達は、班行動なようなもんであった。
「松岡さんは、どこの高校いこうとしてるの?」
真礼とすっかり打ち解けたようだ。
「敷井高校だよ。でも、まだ、勉強不足というか。もっと頑張らないといけないなー、蟋蟀さんは?」
「あたしもそこだよ! 行けるといいね!」
「うん!」
微笑ましい会話を見ながら、俺達は、絵馬作成へと向かった。受験生といえば、絵馬だろうということで目標を書く事になる。
「うーん、こういうの書くの初めてだから、何、書いたらいいか、分からないよお。勇人君は、何、書いた?」
小和は、油性のマジックペンを持ってブラブラと揺らしながら、悩んでいる。
「第一志望合格とかでいいんじゃね? 俺は、当たり前の日々を好きな人と送れるように健康かな」
「フフフ、勇人、おじさんみたいだね! 現実的な考えで」
真礼は、クスッと鼻で笑った。それにつられて松岡も笑っていた。ま、こういうネタ要員みたいなキャラになってるんですね。
「おおー。じゃあ、これなんか、どう? 飛躍!」
もう書いている内容も飛躍しているくらいである。小和は、どこかぶっ飛んでるよな。だが、それがいい。
「なんか、小和ちゃんは、そのいい感じに抜けてるよね!」
「じゃあ、真礼は、何書いた?」
「志望校を大好きな3人で合格!」
からかう暇もなかった。俺と小和もそれと同じ気持ちということを確認出来たからだ。そのことが、何より嬉しかった。
「嬉しくなった、絶対行こうね」
「勿論だ! 小和と真礼が、いないと寂しいしな」
「フフフ」
その後は、学業のお守りを買っているうちに時間が、経過しており、バスへと急いで戻った。
2日目は、より一層絆が、深った1日になった気がする。ただ、ただ、普通に生きたいと願って、バスの中で眠りに就いてしまい、後のことは、あまり覚えていない。気づいたら、ホテルにいた。
京都の景色は、優しくもあり、これから、待っている現実を逃避させてくれる非日常をもたらしてくれた。