不吉
美冬に調査を頼んでから、早、1週間が過ぎた。
特に不思議なことも起きずにこの1週間は、過ごすことが、出来ている。花粉症は、日々悪化しているくらいの四月半ばですかね。
「花見でもしようか?」
真礼は、家の前にある桜の木を見ながら、そう呟いた。
「それもいいな! おにぎりでも作るよ!」
「家の中で見ればいいよね?」
「そうだな!」
今日は、日曜日だ。真礼は、ラフなピンク色のワンピースで可愛らしい。妖精のようだ。小和は、朝から、どこかに出掛けているみたいである。『お昼いらないよ』という手紙が、テーブルの上に置いてあった。
俺は、ジーンズにグレーのカーディガンという部屋着を着て、おにぎりを作り始める。
「なんか、ライン来てる? えっと小和ちゃん?」
小和から、ラインが来たようだ。何やら、急用みたいである。美冬と街で会っていたらしいのだ。
「小和が、どうかしたのか?」
「分かんないけど、家に来るみたいだから、家にいてだってさ! 家にいるよって送っておくね!」
「ああ」
不吉な予感がするなー。もしかしたら、調査結果が、出たのかもしれない。名刺1つで何が、分かるのだろうか。
「嫌なことじゃないといいねー。また、その危ない目に遭ったら嫌だしさ、勇人もあたしも」
真礼は、俯いてスマホをフリップさせる。後ろから抱き締めて、キスをした。吃驚した顔が、愛おしかった。「俺は、危ない目にあっても死なない! 約束する」真礼の耳元で囁く。小さな声で真礼は、「ありがとう」っと安心した目をした。
ラブラブし合っているのを見られたら、恥ずかしいので少しだけ、そういうことを…………2階でしていた。
「ただいまー! 真礼ちゃん! 勇人君! ただいま帰りましたー!」
元気な声が、部屋中を支配した。キンキンとした声でやまびこしそうであった。
続いて美冬もやって来た。街で何をしていたのか、少し気になった。
「どうもー! 今日は、その結果発表会と行くわ! いいかな? 家庭教師美冬じゃないけど、許してね! うふ」
珍しく、胸元を大胆に露出していない服装であり、拍子抜けしたが、見えないエロさもある。Tシャツ姿のホットパンツ姿に、見惚れた。
「あはは、結果教えてください!」
「あらら、小浮気君は、早漏さんね! 慌てないの! すぐにそうなっちゃうと女の子満足しないよ?」
また、美冬のからかいが、始まる。真礼と小和も見慣れた光景なのか、苦笑を浮かべている。
「あはは、そんなことないですから」
「あらら、話を戻しましょう! この前の事務所は、簡単に言うとインチキ、嘘、デタラメの事務所だったわ!」
「わー、なら、良かったー。助かりましたー! みんなに話しておいて良かった!」
小和も今、その事実を聞いたのであろうという反応をした。インチキということは、未成年の女の子を集めて何をしようとしていたのかが、ポイントになるのであろう。考えられるのは、いかがわしいことだ。みだらな行為をして女の子を苦しませる? だが、自殺するということは、直接手を加えていないということになってしまうのではないか。だったら、どうして。
「小浮気君なら、気付いたかもしれないけど、どうして自殺をしたのかってことでしょ? 多分ね、仮設程度に受け取って欲しいけどもあれだと思うAVよ」
「アニマルビデオ?」
小和は、首を傾げて動物のビデオだと本当に思っているらしい。どこまで純粋なんだよ。
「アダルトビデオよ! 小和ちゃん」
真礼は、幾分かの間を挟んで恥ずかしさを堪えて言った。
「そのとおり! アダルトビデオってこと! 小浮気君の大好きなAVよ! 確か、女教師が、好きなんだってね! 真礼ちゃんに夜のあれあれ教えてあげるって言われてるかしら、うふふ」
「言われてないですし、やってませんし。まあ、確かに女教師は、大好物ですけどね!」
後、パンチラ系も好きなですよね。パンチラってワクワクしない? 際どいとことかさ、ね? 思わない? 咳払いをして心を落ち着かせた。
「え、そういうのやってほしいの? 勇人?」
真礼は、ゴミを見るような目で俺を見る。え、どうしてそこまで軽蔑されなければならいんですか……。ただ、好きなことに変わりないから、返答に迷う。
「いやいや、そういうことじゃなくてだな。話進めてください! 美冬さん! ややこしくなるんで」
「はいはい、失礼しましたね! で、契約を交わした後に多分、AV出演オファーを出すのよ! それで契約解除しようとすると何が、生まれると思う?」
「え、やめないでやめないでって言われる」
「違うね」
小和の意見は、違うのか。
「おっぱい触らせろって言われる」
「惜しいかも」
おっぱいが、惜しいだと? だったら、本番行為しかないだろ、なんだよこの話。
「違約金が、発生する。それも高額に」
「ピンポン、ピンポン、ピンポン、大正解! その通りよ! 多分奴らの常套手段よ! ヤクザのやり口と言っても過言ではないわ!」
「怖い、怖い。ちょっと人間不信になりますね。持ち上げられたのにそういう世界に引き釣り込まれるって」
怯える小和を真礼が、抱き締めて慰めている。
「で、俺が、何をしろって?」
「そのことなんだけど、君が、因果応報使えないという状況では、言うなれば、足手まといね!」
美冬は、案外どストライクで人の痛いところを突いてくる。しかしながら、それは、もっともだ。因果応報あっての俺であったわけだし、なければ、ただの中3の餓鬼でしかない。
「そうですね。でも、何か、頼みたいんでしょ?」
「ナルミちゃんを探しに行って欲しい! きっとその事務所の奴も因果の妖精操ってると思うのだから」
「それは、虫が、良すぎませんか? それにメリットってあるんですか? 何で、勇人なんですか? 他の人じゃ、いけないんですか」
真礼の感情が、高ぶっている。珍しいくらいに怒声を響かせた。顔は、怒りで真っ赤になっている。
「あらら、ごめんなさいね! 大切な彼氏さんが、危ない目に遭うって分かってて行けなんて出来ないもんね! わかるわー。でも、彼にしか出来ないし、きっと彼をおびき寄せる作戦に違いないの」
「そんなの仮説じゃないの事実じゃない!」
「そうね! 仮説ね、でも、事実に近いの。これは、その話を少ししておきましょうか。因果応報とは、何かって話をね」
因果応報の真実を語ってくれるという美冬に血の気が、上がりっぱなしの真礼。俺に報いを葬ろうとしている奴が、いるということが、なんとなく肌で感じた。