普通
小和が、家族になってから、一週間が経過した。兼ねてより、約束をしていた美冬の家で遊ぶという話の日になっている。そして、本日は、『蟋蟀真礼、15歳の誕生日だ』
誕生日プレゼントは、小和とららぽーとへ行き、悩みながらも一所懸命考えたプレゼントなら、大丈夫だろうという安易な考えで適当に決めてしまった物がある。
美冬の家では、パーティーをしてくれる予定なのでケーキや料理の心配は、ない。兎に角リュックにプレゼントをしっかりと入れ、行く準備は、整った。
猫の絵が描かれた絵にジーンズというラフな格好で俺は、クッションに座っていた。真礼は、一旦、家へと戻っているので小和の着替えを待っている。
「勇人お兄ちゃん! どう? 可愛いでしょ?」
エメラルドのベアトップワンピで下は、キュロットになっている。夏らしく露出も多めである。ウィンクやら、キメ顔をしてくるので褒める言葉を必死に探した。
「可愛いな! さすが、俺の妹だ」
俺は、頬を赤らめてお褒めの言葉をかけた。小和も頬を赤らめていたので女の子らしさが、あるんだなっと改めて思った。
「ありがとー。真礼ちゃん、まだかな? 迎え来てくれるんだよね?」
「ああ、もう少しで真礼も来るみたいだし、美冬さんの車ももう少しだってさ! 荷物の確認しとけよ」
「はーい」
最初は、ぎこちない兄妹という感じであったが、会話も自然な兄妹に近づいているような気がした。
「お待たせー!」
真礼は、ベージュのプリーツスカートに水玉模様の入ったオフショルダーを着こなしている。
「真礼なんだか、今日、大人っぽいな」
「そう? 可愛い?」
真礼は、甘えるようにして腕を組んでくる。こういうとこは、結構大胆なんだよな。
「可愛いよ。いつも可愛いけど、今日は、格別だ!」
「うふふ」
見つめ合う二人を見て、小和は、「お熱いよ、激アツだよー。夏の暑さもアツアツだし、ここ暑さのパレードかな?」
ボケているようであり、「だったら、小和ちゃんのことも見つめちゃうぞー」っと真礼は、小和に近づき、今にもキスしてしまいそうなくらいの距離で見つめる。
「真礼ちゃん、いい匂いする。甘い香りだ」
「ちょっとー、くすぐったいよー」
小和は、真礼の腕の匂いを嗅いで二の腕を揉み揉みと揉んでいる。艶っぽい声を時折出すために発情しそうになる気持ちをなんとか、抑えている。
「ねえ、真礼ちゃん、ビキニ持ってきた? 私は、この前買ったよ! ちょっと大人っぽいやつを」
小和は、ビキニを鞄から、取り出して真礼に見せている。確かに布面積が、狭そうなビキニであった。しかし、小和さんは、胸が、その、あの、ちっちゃいと言いますか。ひんぬーなのでそこ狭くてもねえー。だが、お尻なら、話は、別だ。お尻は、綺麗でデカイというのが、小和の魅力でもある。危うく、尻フェチになりそうになったまである。
「持ってきたよ。あら、小和ちゃん大胆なビキニだね! 可愛い。きっと似合うよ! あー、プール入るの楽しみだね!」
真礼は、勇人にまだ見られたくないという意向から、後のお楽しみねっと言わんばかりの表情を見せた。うーん、いけずー。
インターホンが、鳴った。美冬の迎えが、来たようであった。受験生なのに先週と今週も突き合わせしまい、申し訳ないのは、関の山だ。
「オジャマシマース! 来たよ! キタキタ! あー、受験勉強この一週間耐えてのリラックスタイムだから、今日は、目一杯楽しむわよ! えいえいおー!」
美冬は、謎のハイテンションで心配になるくらいであった。それだけストレスが、溜まっているワケなのか。それでも遊んでくれる時間を作ってくれるとは、なんていい先輩なんだ。さすが、生徒会長だ。今日もでかい、おっぱいが、でかい。
黒×袖シースルートップスに花柄のショートパンツを着こなしている。胸元は、レースで色気を感じさせていた。
「八月一日先輩! おっぱいおっきい! でっかい! 羨ましい! 触ってもいいですか?」
小和は、美冬のおっぱいに興味津々だ。俺もゴクリと固唾を飲んで、その光景を見守っている。
「ダメダメ。もう行くわよ! また、後でなら、たーくさん揉ませてあげるわ! でも、私も揉ませもらうからね!」
美冬は、手でバツを作り、ダメだよって今は、触っちゃダメー、触るのバイバイというような物言いで話した。
「はーい!」
小和は、素直の返事をし、車へと乗らせてもらった。今日は、リムジンである。あの時は、バレてしまってるかもしれないからと車種を変更し、プリウスだったが、今日は、豪華なリムジンだ。プリウスも十分に豪華だがな。
「では、しっかりとシートベルトを着けてくださいね」
運転手のおじさんが、そう言って俺達は、シートベルトを装着した。
車は、スイスイと走って行く。気持ちの良いくらいに進んでいくので清々しい気持ちになった。
「八月一日先輩! 色々心配お掛けしてすみませんでした。私は、八月一日先輩に助けられたのも同然ですし、運転してもらえなかったら、勇人君も真礼ちゃんもあの別荘へと辿り着けなかったワケですし、その本当にすみませんでした。そして、ありがとうございました。嬉しかったです!」
小和は、感謝の言葉を述べて頭を下げる。「そんなこと、小和ちゃんが、気にすることじゃないわ! あなたは、被害者なの。だから、大丈夫ですわ」
美冬は、感謝されるのも悪くないという表情を浮かべながらも小和を気遣った。
「そうだよ、悪くないんだよ小和ちゃんわ」
真礼も口元を綻ばせて微笑んだ。
「ああ、そうだ! それに小和も無事なワケだし、いいな! よーっし今日は、楽しもうな!」
美冬の家は、大豪邸だった。東京ドーム三個分くらいの面積がある。なんという豪邸だろうか、一種のテーマパークのようである。なんとかランドみたいな家であった。
「お嬢様、お帰りなさいませ!」
メイドの方が、家へと入ると、頭を下げて出迎えてくれた。え、ここなんてとこ? 普通の家ではないよな?
「すっげー」
俺は、思わず口を開いたままになってしまった。まるで夢のような世界に入ってしまったような気分である。
「八月一日先輩これ、なんですか? すごーい。よく分からないけど、すごーい。こんなに広い部屋で生活してるんですね」
小和も部屋の隅々までチェックして嬉しそうにしている。
「私にとっては、ここが、普通だから、なんとも思わないけど、でも、私は、小浮気君達みたいに兄妹が、いるの羨ましいかな」
少しだけ寂しい顔を見せて美冬は、笑顔を取り繕った。
「俺には、その分からないです。何が、普通なのかって」
俺は、普通に生きるということをずっと考えながら、生きてきたけど、応えは、まだ出そうにない。一人一人違うという中で同調圧力の社会を俺等は、生きているのだから。
「いつか、分かる日がくるわ! よっしー、プール行きましょ!」
美冬の部屋に荷物も置かせてもらい、女子の三人は、着替えに行き、俺は、海パンを既に穿いているから、心配ないさー。美冬の部屋は、160cmくらいのでっかいベッドにTV可愛らしい花模様のカーテンがあり、クマのぬいぐるみを抱っこして寝ているような形跡があった。意外と乙女っぽいとこあるんですね。美冬先輩かわすゆ。生徒会長は、意外と子供っぽいって分かりましたね。ギャップ萌えー。
俺は、プールへと向かい、女性陣が来るのを待った。プールサイドのベンチで座って待っていながら、プールを眺めていた。プールは、50メートルもあるようであった。市営プールよりも綺麗で掃除もよく施されているようである。
「勇人君! どう似合ってる?」
勢いよく飛び出て来たのは、水色のビキニを身にまとっている小和であった。身体を斜めに傾けてセクシーポーズをとる真似をしていた。胸は、貧相でありながらもお尻のラインは、綺麗だ。お尻は、とっても綺麗である。尻フェチになりそう、尻フェチになりそうと思わせる程である。大切な事なので二回言いました。
「可愛いよ! 小和は、元気印だな」
「嬉しい、可愛いって言われるって嬉しい。私、勇人君にしか言われたことないよ」
「あらあら、小和ちゃんも大胆ね!」
ゆっくりと胸を揺らして歩いてくる美冬。はち切れんばかりの胸で走ってしまうと今にも溢れそうだ。情熱の薔薇のような色のビキニでポロリが、あるかも? っと期待させてしまうビキニ姿だ。胸の主張が、激しいですね。
「すっごいでっかい。ポロリしてしまいそうですね」
小和は、美冬の胸の辺りをツンツンとして人差し指で触る。「ちょちょっちょっと、あ、ああー。はあ」なんでそんないやらしそうな声出すんですか、目のやり場に困るでしょ。
「私は、可愛いかしら? 小浮気君!」
「かわいいです。その立派で」
胸に視線を当ててしまい、しまったと心の中で思った。
「それは、ちょっとセクハラ気味ね! まあ、私と小浮気君の仲だから、許すけど。気をつけないと危ないわよ!」
美冬は、発言に気をつけた方がいいかもよと釘を刺すように言った。それでも満更でもないような表情であった。
「そういえば、真礼は、まだか?」
「あー、なんか、恥ずかしいから、中々来れないみたいだわ」
「ほー、じゃあ、迎えに行くか!」
俺は、プールではしゃいでいる美冬と小和を置いて、更衣室の前へと向かった。
「真礼、着替えれたか?」
「勇人? うーん、なんか、外だと恥ずかしいそんなに綺麗じゃないかもしれないし、二人共可愛いから、その自信ないよ」
いつもに増して弱気の真礼の声が、ドア越しに聞こえてくる。
「真礼のそのビキニ姿、俺は、見たいなー。その彼女だからってことじゃなくて女の子特有の可愛らしさが、際立つビキニ見たいなって思うから、その無理は、しなくてもいいんだ。恥ずかしいなら、言ってくるよ!」
「もう。ばーか。行けばいいんでしょ? どう?」
更衣室のドア開けて出てくる真礼。恥ずかしそうにしながら、胸を手で覆っている。純白のビキニである。白いの好きって知ってたのか。それとも偶然? いや、言わなくても分かっていることなのか。
「可愛い。似合ってるよ! 真礼だけが、似合うって感じするし、その好き!」
凝視するようにして、真礼のビキニ姿を脳内に焼き付けたかった。
「もう。ありがと。行く。プール! 可愛いあたしをずっと見ててね」
「自分で言うんかよ」
「いいじゃん。たまには、いつか言えなくなっちゃう時も来ちゃうから、今、伝えないとね」
「そんなもんか?」
「そうだし、ばーか、いくよ」
真礼は、俺の背中を叩いたので真っ赤になっている。それを見た小和に「喧嘩? 真っ赤かだよ」っと心配してくれた。美冬は、「すけべなことしようとしたの?」っとからかってきた。
「してない、してない。真礼すっげえ綺麗だよって言ったくらいだよ」
俺は、首を横に振ると同時に手も横に振った。
「みんなの前で言うなんて、ばかじゃないの? もう勇人ってホントにさー」
呆れた様子で俺の顔を見る真礼。
「それが、小浮気君の良いところでもあるけど」
「あー、それ言えてます!」
アトラクションのようなプールで遊び、日が暮れるころまで楽しんだ。夕食の時間になり、パーティールームへと案内された。真礼だけは、遅く来るように頼み、三人で誕生日会の準備というよりもクラッカーを鳴らす準備に入った。
「失礼します!」
恐る恐るゆっくりと入ってくる真礼に向かって三人同時にクラッカーを鳴らした「誕生日おめでとう!」
クラッカーの音に吃驚して腰を抜かしているような真礼のリアクションであった。中々のリアクションありがとうございます。
「ありがとう。誕生日パーティーしてくれるなんて思ってもなかった。嬉しい」
真礼は、瞳を潤ませていたが、堪えて口角を緩ませた。その笑顔を見るために今日が、あったのだから、大成功だ。
「ケーキも用意してるから、どんどんいっぱい食べてね! 私からのお礼と小和ちゃんのお礼と小浮気君の旦那としてのお礼だから、満足するまで召し上がってね! 料理は、どんどん作ってくれるから、料理人をフル稼働させてあるので」
料理人をフル稼働? なんなんだこの家は、今、とんでもない場所に足を踏み入れている気がしてしまった。
「金持ちって凄いですね、こんな高級そうなモノ食べたことないですよ」
思わず口に出てしまうほどであった。A5ランクの牛肉を使用したハンバーグ。お寿司もあり、デザートもある。テーブルいっぱいに広がっており、バイキングみたいなディナーであった。これが、家庭で行われる夕食とは、思えなかった。イカ好きな、俺にとってみれば、「イカだけお願いします」という注文には、やや、微妙な反応をされてしまった。
ステーキもあり、「初ステーキ!」っと人生初のステーキによだれを垂らしそうな表情をしている小和。
ディナーは、豪華であった。何より、一番良かったのは、オムライスである。ふんわりとした卵の感じは、さすがに料理人が、作っただけあった。
ケーキの上の蝋燭に火をつけ、「ハッピーバースデイ真礼」っと歌いあげ、火を真礼が、息を吹きかけて消灯した。
4人分くらいのホールケーキを三等分にして食べた。ショートケーキの生クリームは、とろけるような感じであった。甘すぎずといった感じで食べごたえもあり、とても舌を癒してくれた。
正にデザートは、別腹のようで女子陣は、軽く食べてしまった。きっとこのケーキの味は、忘れられないであろう。
ディナーもお開きが、近づいてきた。ふと、ナルミの事を思い出していた。今、どこにいるのだろうかと。
「いつまでもグダグダすんな!」
幻聴かと、最初は、思ったが、ナルミが、隣にいた。どうやら、白いワンピースを取りに現実世界へと戻れたらしい。そんな理由でか。
「みんなは、気付いてないのか?」
「せやな、お前だけが、見えてる! どうだ、俺の監視の目もないから、その彼女とあんなこともしてもええんやで!」
いつもの生意気な口調で調子が、良さそうなナルミ。
「あほなこと言うなよ! 俺は、正しかったのか? お前を消してまで守ったということを」
「正しいとか、正しくないかと言えば、どっちか、分かんねえよ。でもな、それでもあんなにあいつは、楽しそうな顔をしている。それが、答えじゃねえの? 何が、正しいか、分からないから、こそ人生なんだ。誰も正しいよなんて言ってなんてくれねえ、だから、自分自身に嘘だけは、つくなよ! マジな気持ちでやったことは、間違えじゃないと。それが、お前にあったんだろ? なら、いいじゃん。ワイは、ワイでまた、楽しくやるからさ!」
イクミは、自分なりの持論を展開して俺の考えを肯定してくれるようであった。
「ありがと、そのありがと! また、いつか、お世話になるかもしれないが」
「馬鹿じゃねえの! もう世話になんかなるな、お前は、やっとスタートラインに立ったってだけの話だぞ! ゴールなんかじゃねえ、スタートに着いただけ、こっから、頑張るのもお前次第! ま、お前のことワイも気に入ってるから、たまには、力貸してやってもええけどな! お前が、望んでいた普通の暮らしになれただけなんだよ!」
イクミは、叱咤激励するように話をしてくれた。白いワンピースを揺らし、そろそろ戻らなきゃという様子である。
「普通の暮らしか。そうだな因果応報が、それにしてくれたってだけなのか」
「そういうこと! 目的は、果たせたけど、この先は、知らんぞってこと、じゃあ、時間だから、ばーい」
消えていくイクミに俺は、手を振った。透明になる寸前までずっと手を振り続けた。腱鞘炎になるくらい振っていたと思う。
春から、夏にかけて流星のように駆け抜けたナルミの存在もなくなり、秋と季節は、変化する。
悪い行いをすれば、悪い結果になる。良い行いをすれば、良い結果になる。因果応報という能力は、使用出来なくなったが、それを通じて普通の暮らしになれた。能力は、使えなくなったとしても因果応報という言葉は、俺にとっては、座右の銘になり、人生を立て直すきっかけをくれた言葉になると真礼が、隣にいる幸せから、感じたのである。。秋風が、通る朝、俺は、真礼と婚約した。