屋根裏組の仕事
屋根裏組の仕事は、平日は食堂の手伝いに学校の薬草園や畑の世話、寮の清掃などがある。
週末は、土曜日に学校の田んぼとか農場の手伝いをする。田んぼや農場には専門課程の学生もいるから、週一で人手が欲しいことをするのに丁度いいらしい。
日曜日は基本的に休み。けれど農繁期はそうも言っていられないから、日曜日の休みもなくなってしまうことがある。
お休みがなくなってしまった日は、農場長さんが「ナイショだぞ」と言って、とっておきのチーズでピザを焼いてくれたり、あとから食堂のおばちゃんや寮監さんが特別におやつをくれたりする。
そういう時は屋根裏組のみんなが『共犯者』になったような感じで、連帯感があるというかお互いが特別になったというか、なんだかくすぐったいような気持ちになる。
平日の1日の流れは、起床後、洗顔して身支度したら屋根裏組の全学年が寮の廊下やトイレ・玄関など共用部分を掃除、そのあと食堂で朝食の準備と片付け。
昼は食堂に通いで手伝いに来る『お姉さま方(近所のおばさまたち)』がいるので、配膳と食器洗いを手伝う程度で済むから、学年ごとにローテーションで手伝う。
放課後からは屋根裏組の全学年で薬草園や畑の世話を先生方の指示で行う。
夕方には食堂に通いで来ている『お姉さま方』が帰ってしまうので、食堂の手伝いに入る。
夕飯の片付けまで終わったら、各自部屋で課題を済ませ、入浴時間終わりごろに大浴場で入浴して風呂掃除(もちろん男女別)。
そして就寝。
週末の食堂は、通いの『お姉さま方』がいるので屋根裏組が関与しなくても済むことが多い。メニューを簡単なものにして洗い物がなるべく出ないよう(おにぎりやサンドイッチ)にするとか工夫もしているようだ。もちろんメニューに飽きが来ないよう、丼1つで済むようなもの(うどんなど)にすることもある。
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最近、カイが『お姉さま方』に人気だ。
ノマはカバネが大きすぎるけど、カイはちょっと小柄で「みんなのめんこい息子」って感じなんだと思う。
「カイくん、コレちょっと食べでみで。味ッコ濃いべか?」
「カイくん、アレとってけで」
「カイくん、ソレお願いすっからね」
……
次から次へと声をかけられている。
ちなみに、ノマは高いところにあるものを取りたい時だけ重宝されているようだ。
「去年はリョウさんが人気だったみたいよ」
情報通のアミが2年生の名前を出す。
屋根裏組の中でも笑顔がめんこいメガネ男子だ。
母性本能をくすぐるってヤツなんだろうか。
カイとはちょっとタイプが違うけれど。
「その前はフミさんだったって。今より背が低くて、中性的だったらしいよ」
…そうなんだ。フミさんという人は、今では背も伸びて男らしい感じになってるから想像つかない。
「カイくん、その鍋かましておいて」
「ハイ!」
カイの元気な声が聞こえて、ふとそちらへ目をやると、カイが鍋の下にふきんを突っ込もうとしていた。
…えーと。
「カイ、『かます』って言うのは『かき混ぜる』って意味だから」
たぶん、鍋が動かないようにふきんを「かまして」いたんだろうカイは、私の言葉に驚いた表情をする。
「リウって人のことよく見てるよねぇ」
タキが面白がるような口調で言った。
「え?そうかなぁ…」
「そうだよ。カイの勘違いとか、よく気がつくよね」
「私だったら『何やってんの?』で終わっちゃうわー」
アミまで半笑いになっている。
カイが『かまして』いる鍋の中身は、お姉さま方の「休憩用おやつ」のホットケーキの生地だった。