片割れ……って
「いらっしゃいませー」
「こんにちは、リウ。この前と同じの、頼むよ」
ナツキ達を見送ったあと、私はいつものように店番をしていた。
この店に来るのは村の人たちなので、みんな顔見知り。
「テラダさんの前回と同じの……、あ、ありました。コレですね」
叔父さんが「そろそろ来る頃だ」と言って用意していた袋を渡す。
テラダさんは私と同じで気管が弱いので、痰を切りやすくして咳をおさめるように薬草を調合して渡している。気管が弱いと言っても人それぞれの症状や体質があるので、そこら辺は薬草師の腕の見せどころらしい。
「あれ? そう言えば、今日はリウの『片割れ』はいないのかい?」
ん? 『片割れ』って誰のこと?
「あの青い目の男の子だよ」
「……あぁ、ナツキなら里帰りしてます」
「え? 大丈夫なのかい?」
テラダさんは青灰色の目を見開いて驚いている。
うん。確かに青い目の子が村の外に出るなんて、誰だって心配になるよねぇ。
っていうか、『片割れ』って認識されてるなんて……。確かに、この店を開いてから、ずっと2人で店番してたけどさ~。セット扱いされてるし。
「行商の人たちに紛れて、うちの父と祖母ちゃんも一緒に行ってるので、たぶん大丈夫じゃないかと思います」
「ハルさんも!? なんでまた……」
「ナツキの祖父ちゃんって、うちの祖母のお兄さんなんですよ」
「へぇー! ナツキくんは親戚だったんだねぇ。それで一緒に行ったのか」
「親戚ですよー。なんだと思ってたんですか?」
「いやぁ、リウのいい人かと思ってさ」
「……それって、村の人達みんなが思ってます?」
「うん、思ってるねぇ」
……唖然、呆然、愕然。
「で? 本当のところはどうなの?」
テラダさんがニヤニヤ笑いながら聞いてくる。
「親戚っていうか、手のかかる弟って感じですかね~」
「なんだ、いつも一緒にいるから、いい人なんじゃないかってみんな言ってたのに」
その言葉にげんなりする私。
「ナツキは青い目のことで両親からも見放されてて、ずーっとナツキの祖父ちゃんの家にこもって過ごしてたんで、人に慣れてないんですよ。だから私が一緒にいてサポートしてるんですけどね」
「そっかそっか」
なんかテラダさんの表情、微妙に曲解してる気がする。
「リウに手を出したら、うちの兄が黙ってないんで、そういうことはないですよ」
突然、会話に割り込んできたのは叔父さんだった。
「……あぁ、まぁねぇ。ソウさんはリウちゃんがめんこくて仕方ないんだもんねぇ」
テラダさんは叔父さんの言葉で納得したようだった。
「ところで、今の薬草配合で不都合はありませんか?」
「うん、大丈夫。いい調子だよ。ほんと、この店ができて助かってるよ」
「何かあったら、いつでもおっしゃってくださいね」
「あぁ、ありがとう。また来るよ」
村のうわさ話を投下して私の心の中に嵐を呼び込んだテラダさんは、脱力した私を置いてあっさりと去っていった。
あぁ、変なうわさ、今すぐになくなってくれないかなぁ~。




