山の中
夏休みも終わり、薬草師になるための授業も本格化。
今日は学校が建っている山の中に入って、指定された薬草数種類を採取してくるという課題が出された。
山に入るにあたっては、1人で行動せず、必ず2人以上で行動するようにと注意を受ける。何しろ、山道というか獣道を踏み外して捻挫をする学生が例年あとをたたないらしい。
私はお嬢と2人で山に入った。
薬草は順調に集まっている。
「リウは学校を卒業したらどうするの?」
「んー、叔父さんが薬草師の見習いを卒業できそうだから、一緒に谷に戻るよ。それで、叔父さんを師匠になってもらって見習いをするつもり」
「そうなの……」
「お嬢はどうするの?」
「私は専門課程に残って、コマツ先生の研究室にでも入ろうかと……」
専門課程に残れば、ゆくゆくは学校で教師をすることもできる。学校の創設者一族としては、学校に関われる者が一族から出るのはいいことなんだろう、きっと。
「ふーん。物好きだねぇ。選りに選ってコマツ先生……ぷっ」
コマツ先生とお嬢の掛け合いをそうぞうして、思わず吹き出してしまう。
「リウも専門課程に残ろうよ―」
「えぇー? ……やだ」
これ以上、目の色のことを気にして生活するのはちょっとしんどいのよね~。お嬢と同じ部屋になってから、四六時中気を抜けなくて大変だったんだから。
……なんて、会話に気を取られていたせいか、足を踏み外してしまった。
「わっ!」
幸い、2mくらい滑り落ちただけで済んだ。足は痛くもなんともない。けど、折れた枝で擦ってしまったのか、手首から肘にかけてザックリと傷がついてしまった。
「……つー」
「リウ、血が……!」
傷口を水筒の水で洗い、二の腕の辺りを縛って、腕を心臓より高い位置に上げる。少しでも血が流れるのを防ぐためだ。
「薬草はあと1種類だけど、早く手当したほうが……」
「うん、そうだね」
私たちは残り1種類を諦めて、学校へ戻ることにした。
帰り道は無言だった。会話に気を取られて足を滑らせたのだから仕方ない。自然と目は下に向き、足元に気をつける。
「コマツ先生、リウが怪我して……」
学校へ帰り着くと、裏山の入り口にコマツ先生がいた。お嬢が涙目になっている。
「あぁ、これは『いきなり』やったねぇ」
『いきなり』というのは『とても』とか『凄く』とか、そんな意味だ。
「この怪我は医務室に行きだな。……ところで、顔も赤くなってきてるけど、何かに『負けた』?」
『負けた』というのは『かぶれた』とか、なんかそんな意味。
どうやらウルシか何かの傍を通ったようで、私の顔が赤く腫れてきているらしかった。
医務室に行ったら怪我の処置をされ、顔の腫れたのはとりあえず洗って来るように指示され、その後冷やされた。
「ウルシに近づいただけで『負ける』なんて、弱いごど~」
「……母が弱いもので……」
医務室の先生にビックリされたけど、母ゆずりの体質は仕方ないと思う。
それより、腫れを見るために眼鏡を外すように言われたときはドキッとした。目をギュッとつぶって大人しくしてたので、目の色のことは誤魔化せたみたいでホッとした。
次に山に入るときは、ウルシとかに気をつけよう……と思った。
また顔が腫れて、眼鏡をとるように言われたら大変だもんね。




